なぜビットコインを使用しただけで税金がかかるのか?|仮想通貨の利益に対する国税庁の課税方針

ビットコインの使用による利益は雑所得

国税庁はタックスアンサーで「ビットコインを使用することで生じた利益については、原則として雑所得とする」という見解を明示しました。

では、なぜビットコインを決済手段として使用しただけで税金が課税されることがあるのか?

今回は所得税の仕組みに照らしながら説明をしてみようと思います。

いつ所得があったと考えるのか?

所得税は一年間に稼いだ所得がその対象となりますが、どの年の収入にするのかは次のように定められています。

所得税法第三十六条
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

ここでいう「収入すべき金額」というのは、現金で入金がされた金額と言うことではなく、「金銭等をもらえることが確定した金額」を意味します。(これを権利確定主義といいます)

ですから、個人が保有している仮想通貨の相場が上がり含み益が生じていたとしても、それだけでは課税されることはなく、仮想通貨を実際に売却した時点で利益が確定し、所得が生じることになります。

また、「収入すべき金額」は金銭だけとは限りません。金銭以外の物や何らかの金銭的な得をしたという「経済的な利益」を得たとしてもその価値相当額だけ収入があったものとされます。

例えば、会社が給与とは別に物をプレゼントしてくれたとか、家賃を負担してくれたとか。その場合でも、収入があったと考えるのです。(その上で政策上の配慮から非課税とされるものもあります)

なお、一部で「仮想通貨は円に換えたときに課税される」と流布されているようですが、そうではないと思われます。

例えば、ドルとユーロと交換したとしましょう。

この時、ドルは円には換えられてはいませんが、ドルに含み益があったのであれば、ユーロに交換した時点でその含み益分だけ所得があったとみなされます。

最終的に円に換えて為替差損益が確定したわけではないですが、ドルの含み益はドルを他の通貨に換えた時点で一旦確定したものとするということです。

イマイチピンとこないかもしれませんが、これは実際に円には換えていなくとも、ドルとユーロの交換を

一旦ドルを円に換えて、含み益は確定した利益となり所得が発生

・その円でユーロを買った

取引を分解しその間に生じた利益を確定したものとする「二段階所得認識」とも言うべき税務の強引な考え方なんだと理解していただくしかありません。

保有する外国通貨を他の外国通貨に交換した場合為替差損益の取扱い|タックスアンサー

同様に、例えばビットコインで他の仮想通貨を購入したとしても、その保有するビットコインに含み益があったのであれば、その含み益だけ所得があったものとされる(はず)。

こちらも実際には円に換えていなくとも

一旦ビットコインを円に換えたものとして、含み益は確定した利益となり所得が発生

・その円で他の仮想通貨を買った

と考え、最終的な円換算の利益は確定していなくとも、ビットコインの含み益については他の通貨に交換した時点で課税がされることになるでしょう。

ビットコインなど仮想通貨の課税関係

なぜ仮想通貨を決済手段として使用したら課税されるのか?

例えば、1ビットコインを10万円で購入したものが50万円に値上がりをしており、そのビットコインで10万円のパソコンを購入したとします。

10万円でビットコインを購入し、10万円のパソコンを購入しているのでなんら利益は出ていないようですが、実際には、0.2ビットコイン(10万円÷50万円)のみで10万円のパソコンを購入できています。

0.2ビットコインを取得するのに要したお金は2万円(10万円☓0.2)であり、2万円の負担で10万円のパソコンを買えたのであれば、8万円の得をしたという「経済的利益」を手にできたことになるでしょう。

これを上記の「二段階所得認識」で考えると

2万円で購入した0.2ビットコインを円に換えたら10万円になり8万円の利益が確定

・そのお金で10万円のパソコンを買った

となり、

この8万円の利益が雑所得となるということなのです。

当然、ビットコインの価格が取得したときよりも値下がりしていた中で、ビットコインを使用したとしても利益が生じないどころか損失が確定することになるので税金はかかりません。

なお、今回タックスアンサーでは直接的に明示されたのは、「ビットコインの使用により生じた利益」について原則雑所得とされるということですが、これは仮想通貨の利益についての基本的な所得の考え方を示したものであり、「ビットコイン以外」であっても、「使用以外の通貨間売買」であっても同様に原則雑所得とされることと思われます。

そのあたりは、後日明確な通達として公開されるはずです。

今回の明示は、「円に戻したら税金掛かるけど、そのまま仮想通貨で買い物しちゃえば課税されないなんてことはないぞ」という国税庁からの事前の警告だと言うことでしょう。

雑所得総合課税は最も不利な課税方式

雑所得の額は、その収入すべき金額からその収入を獲得するために犠牲となった費用(必要経費)を差し引いて計算がされます。

マイニング(採掘)などの作業を行っていればそのためのパソコン購入費や電気代が必要経費となるでしょうが、単に値上がりを期待して投機的に購入したり、決済手段として取得をした仮想通貨については、必要経費が認められる余地はほとんどありません。

つまり、仮想通貨の値上がり益ほぼ全額が雑所得となります。

この雑所得は、儲けについては、給与所得など他の所得と合算されて総合課税がされるので、多額の他の所得がある人であれば、最高で55.945%もの税金が課されます。(先物・FXを除く)

一方で、損失が生じたとしても、他の所得とは一切通算ができず切り捨てられるという最も不利な課税方式なのです。

これだけは避けたい。個人で最悪の課税とは

ただし、「事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合には雑所得とはならない」とされているため、事業用の必要経費の支払いに仮想通貨を使用した場合に生じた利益については、事業所得とされる余地もあります。(事業所得の金額によっては事業税が別途課税されることもあります)

ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係|タックスアンサー

どこまで捕捉されるのか、所得計算ができるかは不透明

上記の計算は非常にシンプルな例示で説明をしましたが、実際には、仮想通貨を異なる単価で何度も取得していれば、その都度「平均取得単価」は異動します。

ですから、決済手段として利用する度にそのときの平均取得単価に基づいたその利益や損失を把握しておかなければなりません。

それを簡単に把握できるアプリが開発されれば良いですが、そうでなければ、仮想通貨を使用したことによる利益をきちんと把握するのはかなり難しいことになります。

税務署もその所得を捕捉するのは現時点では簡単ではないでしょう。

今回のタックスアンサーでの明示は、仮想通貨の投機取引が加熱する中、「いつになったら仮想通貨の利益について課税関係を明らかにするのだ」という突き上げに渋々答える形で「じゃあ、外貨預金と同じようなもんだから雑所得ね」と、とりあえず基本的な課税の方針を示したものだと思われます。

ですから、これを機会に税務署が少額の仮想通貨の所得について手間を掛けて厳密な捕捉をするという姿勢の表れなのかと言われると疑問が残ります。

通常決済手段として想定される範囲のビットコインの使用による利益については、「年末調整をした給与所得者は20万円以下の雑所得等については申告不要」ということでお茶を濁すのではないかと。

ただし、これはあくまでも「一定の要件に合致する人は20万円以下の雑所得等について所得税の確定申告をしなくてもよい」ということであり、決して20万円以下の雑所得等は非課税というわけではありません。

申告すべき所得がある人や年末調整をした給与所得者であってもあえて確定申告をするときには、いくら少額であってもこの雑所得を所得に含めて所得税の申告が必要です。

また、この「申告不要ルール」は所得税のみに適用されるルールであり、年末調整をした給与所得者であっても仮想通貨の利益について住民税の申告を別途する必要はあるのです。

それをどこまで捕捉するかはわからんですが。

「雑所得なら20万円までは非課税」という勘違い

いずれにせよ、当初の「まともに申告するやつなど誰もいないだろ」という状況から取引データの把握が進んだ頃にガッツリ脱税で摘発されたFXと仮想通貨は同じような道を辿りそうなので、仮想通貨取引で多額の利益が出た人は、きちんと所得を把握し申告しておきたいものです。

いつ見せしめで厳罰がくだされるかわかりませんから。

どこまでならOK?税務のさじ加減

本には書けないけど大事なこと|シークレットセミナー音源

・税務調査・節税・金融機関対応・ファイナンス理論
・経済性工学・財務モデル・遺産相続・話し方など

本には絶対かけない顧問先限定のクローズドセミナーならではのホンネをあなたに