名義書換料は取得費になるのか?

-贈与等によって取得した資産を譲渡した時の取得費-
●相続等で取得した場合の付随費用の取り扱い
資産を譲渡した場合の譲渡所得の金額は、譲渡収入金額-(資産の取得に要した費用+譲渡費用)という算式で計算されることは、ご存じのことでしょう。
では、ここで言う「資産の取得に要した費用」(以下取得費といいます)には、どのようなものが含まれるのでしょうか。
不動産やゴルフ会員権の本体価格が該当するのは当然として、購入する際の付随費用はどのような取り扱いになるのか、今回は、その点について、検討してみることにします。
●必要経費か取得費かでもその区分は曖昧。
そもそも、購入の際の付随費用が、期間損益計算の必要経費となるのか、資産の取得費になるのかという取り扱いについても結構曖昧なところがあります。
例えば、不動産の購入した場合には、仲介手数料、登録免許税、不動産取得税が代表的な付随費用といえるでしょう。
では、この場合、それらの費用はどのように取り扱えばよいのでしょうか。
税法の基本的な考え方は、上記の付随費用は、原則として、すべて資産の取得費に計上されることとしながら、登録免許税と不動産取得税については、必要経費として処理することも認めるとされています。
しかし、仲介手数料については、そのような取り扱いがされることが明示されていないため、多くの場合、資産の取得費に計上されることが強制されているようです。
ですが、その仲介手数料と登録免許税、不動産取得税に論理上その性質にどのような明確な違いがあるのかは不明確で、必要経費算入が拒絶される理由は曖昧であるといわざるを得ません。
●最高裁判決で取り扱いが一変!
従来、「相続や贈与によって取得した」ゴルフ会員権等の資産を売却した際には、相続等の時に支払った名義書換料については、譲渡所得税の計算上、取得費とは認められていませんでした。
しかし、H17.2.1の最高裁判決により、「贈与で取得したゴルフ会員権の名義書換手数料を譲渡所得計算上の取得費とすることが認められた」ため、ゴルフ会員権に限らず、相続・贈与で不動産を取得した際に支払った不動産登記費用などについても、取得者が譲渡した場合の取得費に含めることが出来るよう、その取り扱いが改められたのです。
では、それらの費用の取得費算入が認められるのであれば、一体、どこまで相続・贈与時に支出した費用が譲渡時の取得費に算入出来るのでしょうか。
例えば、遺産分割協議に支払った弁護士費用や裁判費用に加え代償分割金であったって「その費用がなければその資産を取得することが出来なかった費用」ということになりますからね。
しかし、実際には、最高裁判決に従い、渋々取得費算入を認めたことを考えると、「ゴルフ会員権の名義書換料と不動産登記手数料」は譲渡の際の取得費に算入出来る費用としての「例示列挙」ではなく、実質的には「限定列挙」したものと考えた方がよいでしょう。
なお、あくまでもこれらの付随費用が取得費に算入出来るのは、取得費についてきちんと「実額」によって計算している場合のみであり、収入金額の5%を概算取得費として譲渡所得を計算している場合には、付随費用は、取得費算入が出来ないことにご注意下さい。
●過年度分は、早めに更正請求・嘆願により減額更正を
H16年度以降の譲渡所得の計算上、上記のような変更が行われたのは当然のことですが、それ以前の申告についても、更正の請求や嘆願によって、所得税の還付を受けることが可能です。
本来、更正の請求は申告期限から1年以内しか認められていませんが、「嘆願」により5年以内の減額更正請求が可能ですので、該当なさる方は、是非お早めに手続きをなさることをオススメ致します。
税務署が更正を出来るのは最長7年で、こちらが申請を行う場合は1年。それを超えたら「そこをなんとか、お願い出来ないですかねえ。」という意味の「嘆願」を行わなければならないと言うのは、どうも不公正な気がしますが。
まあ、21世紀になっても、未だに江戸の世と同じと言うことでしょうかね。(^^)

9割の人が間違えている「会社のお金」無料講座公開中

「減価償却で節税しながら資産形成」
「生命保険なら積金より負担なく退職金の準備が可能」
「借金するより自己資金で投資をするほうが安全」
「人件費は売上高に関係なく発生する固定費」
「税務調査で何も指摘されないのが良い税理士」

すべて間違い。それじゃお金は残らない。
これ以上損をしたくないなら、正しい「お金の鉄則」を