貴金属を譲渡したときの税金|金地金、純金積立、金投資口座、金ETFの違い

「有事の金」とも言われるが

世界情勢が不安定なことになると注目される金(ゴールド)。

貴金属も、その価格変動によって売り買いの損得が生じる金融商品です。

では、それらの貴金属を売買したときの所得にはどのように課税がされるのかについてみていくことにします。

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貴金属を譲渡したときの個人の課税

法人が貴金属の売買をし、損得が生じた場合、他の事業の損益と合算して法人税が課されます。

一方で、個人の場合、その貴金属がどのような形式で取引がされたのかにより、所得税などの課税のされ方が次のように変わります。

金地金

給与所得者などが持っている金地金を売却した場合の所得は、原則、「譲渡所得」(総合課税)として課税されます。

譲渡所得というと、不動産や株式の譲渡を思い出すと思いますが、あちらは「分離課税」といって、他の所得と合算されることなく、それぞれの所得に一定の税率が課されて所得税等が計算されます。

ですが、金地金を譲渡した場合の「譲渡所得」は、「総合課税」により、他の給与所得などとが合算された上で、その課税所得金額の大きさに応じた累進課税が適用されるのです。

なお、その場合の「譲渡所得」の金額については、その所有期間が「5年以内(短期)」か「5年超(長期)」により、次のように計算がされます。

(1)所有期間が5年以内

短期譲渡所得=金地金の譲渡益+他の短期譲渡所得ー50万円

(2)所有期間が5年超

長期譲渡所得=(金地金の譲渡益+他の短期譲渡所得ー50万円)☓1/2

*金地金の売却益=売却価額-(取得価額+売却費用)

(1)と(2)の両方の譲渡益がある場合には、特別控除額は両方合せて50万円が限度で、(1)の譲渡益から先に控除します。

なお、営利を目的として継続的に金地金の売買をしている場合の所得は、譲渡所得とはならず、その実態により事業所得又は雑所得として総合課税の対象になります。

金地金を売ったときの税金|タックスアンサー

消費税については、課税取引であるため、原則として金地金の代金に消費税が上乗せされた上で取引がされます。

購入者はその消費税の支払いを自身の消費税の納税額の計算上控除し、売却者は消費税の納税が必要です。

(個人の場合には、ほとんどが免税事業者であり消費税の控除も納税もされないこととなるはずです。)

ですが、証券会社を通じて金地金の取引をする場合、貴金属の所有権は証券会社に移り、購入者は証券会社に対して、積み立てた貴金属と同種同量の貴金属の返還請求権を取得することになる「消費寄託」という管理がされます。

証券会社を通じた消費寄託の場合、直接の金地金の取引ではなくなるため、消費税の課税対象とはならないことになります。

純金積立

純金積立とは、毎月一定額の金を購入し続ける投資商品であり、最近ではネット証券などでも取り扱われています。

ですが、あくまでも現物の金地金を毎月購入していることになるので、その売買差損益に対する税金は金地金と同様、総合課税の譲渡所得(または事業所得・雑所得)となるのです。

この際の所有期間は、有価証券に準じて、預り口座において先に取得したものから順次譲渡したもの(先入先出法)とし、取得費は、総平均法によるものとするとされています。

金定額購入システムで取得した金地金を譲渡した場合の課税上の取扱いについて|国税庁

なお、消費税については、原則として、純金積立も消費税の課税対象となります。

ですが、証券会社を通じた消費寄託の場合、消費税の課税対象とはならないのは金地金と一緒です。

金投資口座(金先物)

金投資口座とは、金の将来の買取価格を定めた上で買い取ったものを、一定期間後にその価格で売り渡すいわゆる「先物取引」です。

これらの金投資口座や金貯蓄口座などからの利益は、実態は金融取引に近いことから、金融類似商品の収益として一律20.315%(所得税及び復興所得税15.315%、地方税5%)の税率による源泉分離課税となります。

これらの金投資口座による先物取引の損益は、雑所得として、外国為替証拠金取引(FX)の損益との通算をすることが可能です。

また、控除しきれない損失については、翌年以後3年間繰り越し、その繰り越された年の「先物取引に係る雑所得等の金額」内での通算もできます。

外国為替証拠金取引(FX)の課税関係|タックスアンサー

なお、金の現物の取引ではないため、消費税の課税対象とはなりません。

金ETF

金ETFとは、金の相場に連動した上場投資信託のことです。

上場投資信託なので、上場株式と同様の証券取引所でリアルタイムな売買が可能です。

ETFの分配金や譲渡損益は「上場株式グループ」の一つとして、一律20.315%(所得税及び復興所得税15.315%、地方税5%)の税率による源泉分離課税となり、他の上場株式等の配当や譲渡損益と通算が可能な上、控除しきれない損失については翌年以降3年間繰り越して上場株式等の譲渡損益等と控除が可能です。

なお、金の現物の取引ではないため、消費税の課税対象とはなりません。

同じような貴金属の取引でも、どのような態様で投資をするかにより、その保管や運用コスト、税金などが異なるのでキッチリとした理解が必要でしょう。

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