コインチェックが円で返金したお金の課税関係|損害賠償金として非課税なのか?

コインチェックがハッキングで不正出金される

仮想通貨の取引所大手のコインチェックが、ハッキングをされて顧客から預かっていたネム(NEM)というコインが盗難にあってしまったとのこと。

その金額はその時の時価でなんと580億円にもなるとのことでしたが、コインチェック社は、26万人の対象者に対して、一定のルールで評価をした金額に基づき円で返金をするという方針を打ち出しました。

では、今回の事件により、対象となったユーザーにはどんな課税がされるのか。

早速、当事者であるお客様からご質問がありましたので、個人的に考察してみようと思います。

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円で返金された金額は損害賠償金として非課税

コインチェック社は他の取引所での直近の取引金額などから約88円/NEMとして円で返金をすることにしました。

この金額は、合計で約460億円。流出したときの総額が約580億円とされていたものが、約460億円しか返金されないのですから120億円ほど目減りしているのに、全く保障などされないだろうとあきらめムードが漂う中であったため、なぜかコインチェック社のこの方針表明について「神対応」などと好意的に評価がされているようです。

(実際にどのように返金がされるのかその時期や方法は今のところ未定です)

では、このコインチェックから支払われる約88円/NEMのお金についての課税関係はどうなるのでしょう。

結論は、弁償金であり、所得税法上は非課税であると思われます。

所得税法上の明文はありませんが、時価100円前後の預けていた資産が盗難にあい、その一部の弁償を受けるということであれば、財産が当初よりも増えたわけではないので、原状回復として受け取る弁償金は、所得税は非課税と考えられます。

旧ライブドア賠償金90億円 一転「非課税」に国税当局方針…画期的判断も、集団訴訟株主3300「影響、測りかねる」|産経新聞

つまり、今回のケースでは、コインチェック社から支払われる円貨、約88円/NEMについては、所得税は非課税であると思われるのです。

参考|資産に加えられた損害に対する損害賠償金等を巡る所得税法上の諸問題-「法と経済学」の視点から

コインの含み益には所得税が課税

仮に10円で購入をしたNEMが100円まで値上がりしていたところ、今回の盗難事件により約88円の損害賠償金を受け取ったが、「非課税で受け取るのであれば、含み益への課税が回避されてむしろラッキー」かというとそうではないと思われます。

なぜ、約88円ものお金がコインチェックから支払われるかというと、それはその時の時価で100円ほどになっていたコインが盗難にあったことの弁償だからでしょう。

ですから、その時点での時価と取得費との差額である含み益については、雑所得として課税がされるのではないかと。

離婚の際の財産分与についても、財産分与自体は受け取っても贈与税は非課税とされます。

しかし、その財産分与が不動産などでされた場合、財産分与をした側で所得税が課税されることがあります。

これは、その不動産等を時価で一旦譲渡し、その代金を持って財産分与に充当をしたと考えるからです。

そのときに、財産分与した不動産等が取得したときよりも値上がりをしていたのであれば、時価との差額について、含み益が顕在化したものとして、「財産分与をした側」に所得税が課税されるのです。

今回のコインチェックの損害賠償金についても、その弁償金自体は(原状回復の範囲内であれば)所得税は非課税のはずです。

しかし、NEMは、盗難にあって価値はなくなったものの、コインチェックへの損害賠償請求権に姿を変えているので、その時点で時価と取得費との差額については含み益が顕在化したものとして雑所得として所得税が課税されるのではないかと。

盗難にあわなければ含み益にはいずれ課税されていたものが、お金を受け取っていながら全く課税がないというのは、筋が通りませんし。

盗難の損失については雑損控除または雑所得の必要経費

では、利益確定した時の時価とはいくらなのか?

普通に考えれば、コインチェックへの損害賠償請求権である約88円であると思うのですが、その請求権が確定した時の相場金額(仮に100円)であるとも考えられます。

というか、今回はたまたま一部が弁償されましたが、全く弁償なしということもありえるので、弁償額に関係なく、「その時の時価で利益確定」のほうが理にかなっているといえるでしょう。

もし、時価で利益確定したとされるのであれば、弁償額との差額(100円ー88円)は、「盗難による損失」として「雑損控除」という所得控除の対象となる余地があります。

ただし、仮想通貨が「生活に通常必要でない資産」となると雑損控除の対象外となりますが、仮想通貨は、法的には「支払手段」とされているので、個人的には雑損控除の対象となると考えます。

災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|タックスアンサー

また、別に仮想通貨の取引で雑所得があれば、この盗難による損失はその雑所得と相殺することは可能であると思われます。

いずれにせよ、今回のようなケースについては、国税庁もまだその取扱を明らかにしていません。

仮想通貨に関する所得の計算方法等について|国税庁

あくまでも個人的な意見ですので、もし、「そうではない。こちらのほうが正しい」という考え方があれば、教えていただくとうれしいです。

<追記 2017/1/29 18:30>

・損害賠償確定時の時価算定は難しく、コインチェック社も他の取引所での取引データなどを斟酌して約88円を算出しておりますので、今回は約88円を売価として申告できるのではないかと考えます。

<追記 2017/1/31 16:20>

・損害賠償時の時価がいくらであっても、その時価ー賠償額が雑所得のマイナスとして、顕在化した含み益と通算されれば、結果的に損害賠償額を売価にするのと同じになるので、含み益算定上の売価=損害賠償額となるのではないかと考えます。

まとめると、

・受け取った損害賠償額自体は、盗難の損失の穴埋め部分であれば、非課税

・それとは別に「損害賠償額ー取得費(含み益)」については、雑所得として課税

ということだと個人的には結論づけます。

<追記 2018/4/16 20:14>

国税庁より見解が出ました。

結論は、やはり、損害賠償額で譲渡したものと同じ経済効果なので、含み益は雑所得として課税ということです。

仮想通貨交換業者から仮想通貨に代えて金銭の補償を受けた場合

一般的に、損害賠償金として支払われる金銭であっても、本来所得となるべきもの又は得べかりし利益を喪失した場合にこれが賠償されるときは、非課税にならないものとされています。
ご質問の課税関係については、顧客と仮想通貨交換業者の契約内容やその補償金の性質などを総合勘案して判断することになりますが、一般的に、顧客から預かった仮想通貨を返還できない場合に支払われる補償金は、返還できなくなった仮想通貨に代えて支払われる金銭であり、その補償金と同額で仮想通貨を売却したことにより金銭を得たのと同一の結果となることから、本来所得となるべきもの又は得られたであろう利益を喪失した部分が含まれているものと考えられます。
したがって、ご質問の補償金は、非課税となる損害賠償金には該当せず、雑所得として課税の対象となります。
なお、補償金の計算の基礎となった1単位当たりの仮想通貨の価額がもともとの取得単価よりも低額である場合には、雑所得の金額の計算上、損失が生じることになりますので、その場合には、その損失を他の雑所得の金額と通算することができます。

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