競売された不動産に譲渡所得税は課税されるの?

借金の返済に充当されるための不動産譲渡

不動産を売却する理由の一つに借金の返済のためということがあります。

不動産を売ってもその代金のその全てが借金の返済に充てられ手許には全くお金がないのだから税金はかからないかというとそうではありません。

不動産の譲渡に対する所得は、買った時の価格から売った時の価格への値上がり益であり、借金返済に使ったというそのお金の使いみちは原則として関係がないのです。

では、担保権の行使などにより競売がされた場合、その不動産の譲渡所得に課税はされるのでしょうか?

今回は、競売時の不動産譲渡所得課税についてまとめてみることにします。

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競売であっても原則として譲渡所得税は掛かる

借金をしたものの返済が予定通りにされないため、担保権を設定した銀行などがその不動産を競売を申し立て、借金を回収することがあります。

借金の返済のために渋々売却させられその代金がすべて借金の返済に充当されるということは、売られる側からすれば、勝手にその不動産を取り上げられたようなものでしょう。

しかし、不動産の譲渡所得の計算は、値上がり益であり、その計算上、借金を控除する余地はありません。

もし、借金を返済した金額だけ譲渡所得から差し引くことができるなら、その借金をした時にお金は入ってくるのでその金額に課税をされてないとおかしいことになりますからね。

ですから、借金の返済のため競売により不動産が売却され手許には全くお金が残っていないとしても、値上がり益があれば税金の支払い義務は生じるのです。

資力を喪失している場合の非課税

そうは言っても、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合、その譲渡所得については非課税とされています。

その「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」な状態としては、

・著しい債務超過の状態である

・その債務の全部を弁済するための資金調達が近い将来に渡っても不可能

ということが満たされる必要があります。

9-12の2 法第9条第1項第10号及び令第26条《非課税とされる資力喪失による譲渡所得》に規定する「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」である場合とは、債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合をいい、これに該当するかどうかは、これらの規定に規定する資産を譲渡した時の現況により判定する。

必ずしも自己破産の申立てが必要というわけではありませんが、ほぼそれに近い状態であることが必要ということです。

自宅が競売されるということは、他に売却する資産がないというケースが多く、債務超過で資金調達が困難な場合が多いでしょう。

そのような場合には、「資力喪失状態」として、万一譲渡所得が生じても(一定の居住用不動産については3,000万円の特別控除があります)、非課税とされることが多いといえます。

仮に課税したところで、税金を徴収するのは困難で結果的に税金徴収を諦める「滞納処分の停止」となることが予想されますので。

しかし、自宅以外の不動産を競売することで、自宅だけは残すというような場合には、必ずしも「資力喪失状態」とはいえず、なんでもかんでも競売で譲渡をすれば譲渡所得税が非課税になるというわけではないので注意が必要なのです。

保証債務の履行のための譲渡も回収不能が条件

本人の借金の返済のためではなく、連帯保証人となったり担保提供していたところ、主たる債務者が返済しないため競売により不動産が売却されることがあります。

この「保証債務の履行」のために不動産が譲渡されたとしても、値上がり益があれば、不動産の譲渡所得として原則は課税されます。

連帯保証人が主たる債務者の代わりに借金を返済した場合、主たる債務者にお金を返せと請求できる「求償権」が生じることになるので、この時点ではまだ不動産の売却代金を主たる債務者から回収できる余地があるからです。

しかし、連帯保証をしたり担保提供をしたために、自分の不動産を手放さなくならなくなり手許にお金が全く残らないのに税金だけ掛かるというのはなんとも不合理な気がします。

そこで、保証債務の履行による不動産の譲渡所得については

・主たる債務者が既に債務弁済不能であった

・主たる債務者への求償権は回収不能である

ことが満たされた場合には、譲渡所得は非課税とされているのです。

ただし、この保証債務の履行の特例については、要件が複雑で認定についても非常に厳しく行われます。

裁決例をみてもこの特例の適用を認めなかったケースが多々あり、その判断は慎重に行う必要があります。

保証債務の履行・認めなかった事例|公表裁決例

必ずしも、保証債務の履行のための譲渡ならば借金返済分は譲渡所得の計算から控除されるなどというわけではないので注意が必要なのです。

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