弁護士や税理士が立て替えた実費弁償分の消費税と源泉徴収

士業は顧客が支払うべき費用を立て替えて支払うことが多いが

弁護士や税理士、司法書士などの士業は、本来顧客が負担すべき金銭を手続きの都合上立て替え払いをしておき、報酬と一緒にまとめて請求をするというケースが多いもの。

では、この立て替え払いをした金銭は、消費税の課税対象となるのでしょうか?

法人税、所得税については、それらが売上高に含まれたとしても、立替分が費用となるので、結果的に課税所得は、売上高に含まれたときも立替金とされたときも何ら変わりはありません。

ただ、消費税については、その金銭が立替金として消費税の課税対象外となるか、売上高の一部として消費税の課税対象となるかによって免税事業者制度や簡易課税制度の適否や簡易課税制度の納税額そのものにも影響が出てきます。

そこで今回は、士業などが支払った実費弁償分についての消費税とあわせて源泉徴収対象金額の取扱についてまとめてみることにします。

交通費・宿泊費などの実費弁償分

弁護士などの業務に関する報酬又は料金は、「弁護士がその業務の遂行に関連して依頼者から支払を受ける一切の金銭をいうもの」と解されています。

ですから、実費弁償たる宿泊費及び交通費であっても、ホテルや交通機関等への支払が実質的に依頼者による「直接払」と認められるものでない限り、弁護士の報酬又は料金に含まれ課税の対象となります。

登録免許税など依頼人が負担すべきもの

ただし、依頼者が本来納付すべきものとされている登録免許税や手数料等に充てるものとして受け取った金銭については、それを報酬又は料金と明確に区分経理している場合は、消費税の課税対象となりません。

まとめると、

・旅費交通費・宿泊費などの実費弁償は、どんな請求方法でも消費税の課税対象

・依頼人が本来納付すべき登録免許税や手数料等は報酬とまとめて請求すれば消費税の課税対象

・依頼人が本来納付すべき登録免許税や手数料等は報酬と区分して請求すれば消費税の課税対象外

ということになるわけです。

司法書士など、報酬よりも顧客の代わりに立て替え払いをした登録免許税のほうがずっと金額が大きいということも多いはずですから、請求書の記載方法次第で課税売上高の金額に大きな影響が出そうです。

実費弁償分の源泉徴収義務

では、これら旅費交通費等の実費弁償分や登録免許税等の立て替え払い分については、源泉徴収をすべき対象となるのでしょうか?

源泉徴収の対象となる報酬・料金は、弁護士や税理士などの業務に対するものですが、謝金、調査費、日当、旅費などの名目で支払われるものも源泉徴収の対象となる報酬・料金に含まれます。

ただし、次のイ又はロに該当する場合は源泉徴収の対象となる報酬・料金に含めなくてもよいことになっています。

イ 弁護士等に支払う金銭等であっても、支払者が国等に対し登記、申請をするため本来納付すべきものとされる登録免許税、手数料等に充てるものとして支払われたことが明らかな場合

ロ 通常必要な範囲内の交通費、宿泊費等を支払者が直接、交通機関やホテル等に支払う場合

交通費や宿泊費を依頼人が直接支払うということはまずないでしょうから、これらの実費弁償分も源泉徴収の対象となるということです。

結構、旅費や宿泊費、日当などには源泉徴収されていないケースも多いのではないかと。

ここが税務調査で問題になることはさほど多くはないですが、税理士の請求書で源泉徴収漏れというのはお客様にも迷惑がかかるので注意したいところです。

なお、報酬・料金の額の中に消費税及び地方消費税の額(以下、「消費税等の額」といいます。)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額を源泉徴収の対象としますが、請求書等において、報酬・料金の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。

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