会社を休業するときの手続き|休眠届と均等割停止

会社の解散・清算にはコストがかかる

会社で行っていた事業を廃止したら、資産を換金し、負債の返済をした残りの残余財産を株主に分配する「解散・清算」という手続きをするのが原則です。

ただ、その解散等はいわば、「会社の後始末」のようなものでしょう。

この利益を生まない手続きに、手間もコストも掛かります。既に事業をほとんど営んでいなかった会社のためにそんな手間やコストを掛けるのはバカらしい。

ですが、そのままにしておくと、住民税の均等割という赤字でも黒字でも関係のなくかかる税金を毎期支払わねばなりません。

そこで、今回は、事業を営んでいない会社の住民税均等割の支払いを停止するための手続きについて考えてみることにします。

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税務署への届出

ほとんど行っていない事業であっても、会社が存在する限り、税務署は各種の申告書提出や給与支払報告などを求めてきます。

もう事業をやめるのに、そんな手続きをするのは面倒です。

そのような場合には、休眠(休業)届というものを出します。結論から言えば、これで、税務署に対する申告などの手間は以後なくなります。

ただし、本来は、休眠中の会社であっても、課税所得が0として、毎期確定申告書を提出する必要はあるのです。

ですが、もう誰もその手続をする人がいません。税理士との顧問契約も終わっているはずです。

青色申告法人が、二期連続で期限内に申告書を提出しない場合、青色申告の承認が取り消されます。

しかし、元々事業を行っていないで、その後再開の予定がないのであれば、青色申告が取り消されたところで実害はないでしょう。

では、具体的にどんな届出書を出すのか?

休眠届という書式はなく、事業年度や商号などを変更した際に使用する異動届出書を使い、「異動事項等」の欄に「休業」、異動年月日の欄に「休業した日付」を記載するだけでOKです。

異動届出書|タックスアンサー

法務局への対応

休眠会社でも、株式会社には、最長10年毎の役員変更登記の必要はあります。怠れば罰金もあります。

ただ、株式会社は最後の登記から12年間登記がなされないと、法務局が職権で「みなし解散」されたものとして取り扱うのです。

要するに勝手に会社が登記簿上抹消されてしまうということ。

ですが、自分で解散登記すべき会社が、国に解散登記をされたとしても、ああ、そうですかということでしょう。

会社法改正で役員の任期を10年に延長した会社の役員変更登記とみなし解散

都道府県・市役所への届け出

いくら事業を行っていなくても、会社が存在している限り、本来は、法人住民税の均等割という税金を毎期支払わなくてはなりません。

その均等割の支払いを停止するためには、都道府県(法人県民税)と市役所(法人市民税)に休眠(休業)届を提出します。

決算申告の時点で「もういっそのこと休眠にしたい」という場合でも、その事業年度に全く事業を行っていなかったのであれば、事業年度の期首に遡って「休眠してました」という届出を事後に提出すれば、大抵の場合、その事業年度の均等割額の支払いから停止されます。

こちらも、休眠届という書式はないため、異動届出書の「異動事項等」欄に「休眠」と「異動年月日」欄に休業した日付を記載します。

また、「休眠した会社を今後再開する予定があるのか?」という質問が自治体から来ることがあるので、適宜「再開の見込みなし」などと書き添えておくと良いでしょう。

異動届出書|東京都

なお、休眠(休業)という取り扱いは、自治体によって異なり、いくら休眠届を提出しても均等割の支払いは停止しないというところもあります。

ご丁寧にそのような手紙や納付書を送ってくるところも。

しかし、事業自体は既にやっていないので、万一問い合わせが来ても「事業所はないので均等割の納税義務はない」という対応で良いでしょう。

地方税法上の事業所の定義は次のようになっていますが、何も事業をしていないならどれも該当しないものばかりです。

事務所等の要件として,人的設備,物的設備,事業の継続性の三要件があります。

人的設備

  • 人的設備とは,正規従業員だけでなく,法人の役員,清算法人における清算人,アルバイト,パートタイマーなども含みます。
  • 人材派遣会社から派遣された者も,派遣先企業の指揮および監督に服する場合は人的設備となります。
  • 規約上,代表者または管理人の定めがあるものについては,特に事務員等がいなくても人的設備があるとみなします。

物的設備

  • 事務所等は,それが自己の所有であるか否かは問いません。
  • 物的設備とは,事業に必要な土地,建物,機械設備など,事業を行うのに必要な設備を設けているものをいいます。
  • 規約上,特に定めがなく,代表者の自宅等を連絡所としているような場合でも,そこで継続して事業が行われていると認められるかぎり,物的設備として認められます。

事業の継続性

  • 事務所等において行われる事業は,個人又は法人の本来の事業の取引に関するものであることを必要とせず,本来の事業に直接,間接に関連して行われる付随的事業であっても社会通念上そこで事業が行われていると考えられるものについては,事務所等とします。
  • 事業の継続性には,事業年度の全期間にわたり,連続して行われる場合のほか,定期的又は不定期的に,相当日数,継続して行われる場合を含みます。また,そこで事業が行われた結果,収益ないし所得が発生することは必ずしも必要としません。
  • 原則として,2,3ヵ月程度の一時的な事業の用に供される現場事務所,仮小屋などは事務所等に該当しません。

法人市民税における事業所等の要件と範囲について|総社市

まあ、仮にそれらの手紙や納付書が送られてきても、事業所がなければ届かないし、届くのは、別の会社と同じところに本店を構えていたからではないかと。

だからといって、あくまでも、別の会社のことなので、その会社に納税義務も対応する必要もないです。私ももう休業した会社の顧問でもないので電話にすら出ないです。

それらの均等割が問題となるケースは、休眠した会社を再開したとき。その時に「未納の均等割の支払いをせよ」と言われるケースも予想されます。

そういうときは、さっさと、新規に法人を設立してしまいましょう。

それ以外でも、休眠会社には、未払の税金や連帯保証など隠れた債務が残っていることがあるので、よほどその会社の業歴や認可が欲しい時以外には、他人が休眠した会社を再開する「休眠起こし」はオススメいたしません。

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