なぜ社長の時給は下がり続けるのか?|無駄なコスト体質が染み付くメカニズム

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あなたの会社も「ビジネス版メタボリック」に

「売上高も従業員も増えた。でも、よく考えるとカミさんと二人で商売をやっていたときの方が儲かっていた気がするんだよ。」

中小企業の社長がよく口にする言葉です。

「会社が順調に成長し夜中まで働くようになったのに、開業当初に比べて手許に残る『稼ぎ』が年々少なくなっていく」-なぜそのようなことが起きるのでしょうか。

顧問税理士として多くの中小企業を見て、その原因をようやくつかみました。

それは、「ビジネス版メタボリック」とも言うべきある症状のためです。「なぜ社長の時給が下がり続けるのか」という疑問を解き明かすために、まずはこの症状がいかにして起きるのかを見ていくことにしましょう。

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では、お聞きします。「経費が多くかかる会社と少なくてすむ会社ではどちらが潰れにくいでしょうか?」

当然経費が少なくてすむ会社のはずです。

「なんだ、結局『社長の時給が下がった理由は経費が増えたから』と言う話か」と思われたことでしょう。

確かに「経費が増えたから社長の時給が下がった」ということは事実です。ただ、だからといって「節水や節電をしろ」とか「コピー用紙の裏を使え」というような経費削減策を推奨したいわけではありません。問題の本質はそこにはないのです。

企業経営者である皆さんは当然ご存知でしょうが、この経費は二つのグループに分けられます。一つは「変動費」、これは売上高に比例して増加する費用のことです。おおむね「商品代金」、「材料費」、「外注費」の3つと割り切って良いでしょう。

もうひとつは「固定費」、こちらは売上高に関係なく発生する費用のことです。代表例が人件費、支払家賃、支払金利の3つといえます。このほかにも消耗品費をはじめ通勤交通費なども固定費になりますが中小企業の場合、現実的な金額はそれ程大きくありません。

売上高が減れば変動費もその分減少します。しかし、固定費は売上高が減少しても減ることはありません。

そのため固定費が大きいと売上高が減った時には利益が急激に落ちたり赤字転落しやすくなります。つまり、固定費は企業業績に大きなインパクトを与えることになります。

ネット上のホテル予約サイトを見ると、宿泊当日に予約をした方が正規料金よりはるかに安い場合があります。それは、ホテルが「固定費の塊」のようなビジネスモデルであり、「空室にしても莫大な固定費はかかっている。だったら値引きをしても売上を増やした方が得だ」という判断をしているからです

さて、既に話したように中小企業の固定費の大半は、人件費、支払家賃、支払利息の3つです。

これらは一見全く異なったもののようにみえますが、実は3つの固定費はすべて人件費から派生しているといえます。そして厄介なのはこれらの「増え方」なのです。

もう少し具体的に話してみます。

まず、従業員を雇うとその従業員を収容するためにオフィスの家賃を支払う必要があります。

さらに良い従業員を採用するためには一等地のオフィスが必要で、そのためには多額の保証金を支払う必要があるのです。

すると、その保証金を支払うための借入れをするので支払利息が発生することになります。

今度は、大きくなった固定費を回収するためにより多くの売上高が必要になるはずです。

そうなるとその売上高を稼ぐためにさらに多くの従業員が必要になります。そのためその従業員を収容するためにより広いオフィスが必要になるわけです。すると今度はさらに高い保証金が必要になり・・・・

このように人件費・支払家賃・支払利息は3つが相互に関連しながらスパイラル状に増えていくのです。

さらに、これらの経費は、一度上げてしまうと自分自身の努力で引き下げることの難しいものばかりです。リストラなど簡単には出来ませんし、狭いところや家賃の安いところに引っ越すことも現実には難しいはずです。

その結果、気がついた時には「それほど高くない」と思っていた損益分岐点がいつの間にか予想をはるかに超えたものになっていて愕然としたりする人も多いわけです。

ですから、儲かったからといって「使い道を考える」かのごとく固定費を引き上げてしまうことは、中小企業にとっては痛みのないうちに悪化する生活習慣病にかかるようなものです。

どうやら、じわりじわりと社長の時給が下がり続けていく原因はこの「ビジネス版メタボリック」とも言うべき「固定費のスパイラル上昇」にあったのです。

ポイント 固定費は知らず知らずにスパイラル状に増える。気がついたときには損益分岐点が大幅に悪化していることも。

売上高の伸びよりも固定費の方が増えたわけ-季節変動

別に固定費が増えたとしても、それ以上に売上高が増えているのであれば問題はありません。ただ、現実に「社長の時給」が下がっていると言うことは、どうも相対的にみて売上高の伸び以上に固定費が増えている可能性が高いのです。

では、なぜ、相対的に見て売上高以上に固定費が増えたのでしょうか?

その原因は、「需要変動」があったからです。大きな需要変動は2つあります。一つ目は「季節変動」です。

例えば水着。これは南半球に輸出でもしない限り夏に大半が売れます。このような季節商品を作っている製造業の場合、繁忙期は設備も人員も大量に必要とします。しかし、閑散期に設備を廃棄したり全員の解雇をしたりすることは出来ません。いくらアルバイトの力を借りたとしてもどうしても閑散期の稼働率は低くなりやすいといえます。

その結果、需要の少ない閑散期には、売上高に対する固定費の割合が大きくなるため、全体を通して見ても季節変動の小さい会社よりも利益率が低くなりがちなのです。要するにこの季節変動が非効率な組織を生む大きな原因であったということです。

さて、「パーキンソンの法則」ということばをご存じでしょうか?

これは、「仕事の量は、完成のために与えられた時間の限界まで膨張する」という法則です。

ちょうど、いくら大きめの倉庫を借りても気がつくとなぜか倉庫が在庫で一杯になっているの似ています。

特に官僚組織や間接部門でよく見られることですが「人は時間に余裕があるとその時間数にあった業務処理スタイルに変えてしまう」のです。

実際、新規に顧問契約をした先の経理処理方法を見せて頂くと、どう考えても「遠回りな処理」が行われていることをよく見ます。本人達には全く悪気もないのに、与えられた時間に合わせた非効率な処理方法を当然のものとしてしまったのです。

仮にこの「パーキンソンの法則」が働いたとしても、閑散期に非効率な作業が行われるだけで済む気がします。しかし、現実には、その非効率なスタイルが固定化されたまま繁忙期に突入するはずです。

すると「その人員では繁忙期の作業量をこなすことが出来ず、さらに増員の必要性が生まれる」という悪循環を繰り返し、気がついた時にはものすごく効率の悪い組織が出来上がるのです。

その結果、社長の時給は毎年のようにじわじわと下落することになるのです。

ポイント 季節変動の大きいビジネスは、「繁忙期に合わせた設備・人員」になるため全体の効率が悪くなる。さらに「パーキンソンの法則」により与えられた時間一杯まで仕事が増えるので時間効率は悪くなりがち。

売上の伸びよりも固定費の方が増えた訳-ブームと急成長

問題です。

「一つ一つは最大荷重20キロまで耐えられるが、中に一つだけ8キロまでしか耐えられない輪でできたチェーンには、何キロのおもりを乗せることができるでしょうか?」

当然8キロまでです。それ以上の重さを乗せると他がどんなに強い輪でできていても一番弱い輪が切れてしまいます。

このように最も弱い所を「ボトルネック」といいます。

大手製造業の場合、処理能力を上げるためであっても、すべての設備の性能を上げてしまうような投資をすることはまずありません。

なぜなら、いくら最新鋭の機械を並べても結果的に一番効率の悪いところで作りかけの製品がたまってしまうことをよく知っているからです。通常は、そのボトルネックを解消するような補強をすることで全体の作業効率を上げているのです。

この「ボトルネックを解消する」、つまり「どこが弱点かを把握し補強する」ということは、なにも製造現場だけに必要なことではありません。他の業種であっても全社的なボトルネックを意識することは必要です。

事実、サービス業である私も発生頻度の低い特殊案件や大型事案など自分一人で対応することが困難な案件のために人員を確保しておくようなことはしません。同じ理念で運営をしている税理士・会計士で形成されたLLP(有限責任事業組合)のメンバー間で、お互いの弱点を補完するような対応をしています。

京セラの稲森和夫会長もおっしゃっているように、実は一見パッチワーク的な対応の方が結果的には組織効率を向上させることも多いわけです。

さて、派手なマーケティング手法で顧客をドンドン集めたものの、実は満足なサービス提供体制が整っていない会社があるとします。その場合のボトルネックは「サービス提供部門」です。

チェック体制を整えることなく場当たり的な作業したのでは、たくさんの顧客を集めたとしても満足なサービスを提供することはできません。その結果「残ったのはクレームの嵐と非効率な組織だけ」という例は決してめずらしいものではないのです。

そのようなひどい例でなくても、非効率な組織となっている会社は、「ブーム」あるいは「急成長」の時期を経た会社が多いのです。つまり、もう一つの非効率を生む大きな需要変動は「ブーム」なのです。

社会現象にまでなった前回の「たまごっち」ブーム。あれほどの売上があったのに、実は「事業全体としてみると大量の不良在庫を抱えたため大赤字で終わった」と言われています。発売元でもそのような状況です。部品製造に携わった中小企業ではその煽りは遙かに大きなものだったのです。

ブームの中では、「ボトルネックがどこにあるのか」などと言う分析をしている暇はありません。「とりあえず手を動かせ!」の号令の元で、まずは目の前の作業処理が最優先されます。

そのため、作業効率を見直す以前に人員や設備の増強が行われた結果、全体として時間効率の悪い組織が出来上がってしまいがちです。

むしろ、受注量をセーブしてでも作業工程の弱点を見つけたり、あえて時間を取って人員の教育をすることで作業能力を上げること目指した方が、最終的には時間効率の良い会社になる傾向が強いといえます。

私のお客様を見ても、需要変動の極めて大きい半導体関連の事業では、ひどい時には売上高が決算期ごとに2倍になったり半分になったりする例もあります。

そのため機械部品の加工業などではオーバーフローを起こした場合には、同業者に外注をすることで、できるだけ組織拡大をしない場合が多いのです。これも、需要変動という荒波を何度も乗り越えて築き上げた知恵なのです。

ブームは非常にコントロールが難しく、それに翻弄された結果、社長の時給はその度にじわじわと下がることになるのです。

ポイント 需要増に合わせてすぐに人員増をしていると極めて時間効率の悪い組織が出来上がる。社長の時給を上げたければまずボトルネックを解消する方法を考える。

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という本を書いたのがもう10年前ですが、この後すぐにリーマン・ショックが来たんです。

ここのところ、オリンピック前の景気拡大と金融緩和の影響で資金の余裕のある会社が多いでしょう。

その反面、需要拡大期には、知らず知らずのうちに、無駄なコスト体質が染み付いている恐れもあるのでご注意を。

コスト構造の問題って、順風満帆で”潮が満ちている”ときには見えないものが、”潮が引いたら”一気に顔を出すものなんですよね。

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