奥様を役員にする税務上のメリット・デメリット

社長の奥様を役員にする?しない?

小規模の会社であれば、経理・総務などのバックオフィス業務を社長の奥様が担当しているケースが多いもの。

会社によっては、奥様が役員に就任をしているケースも多々あります。

では、業務を担当している社長の奥様は、役員に就任したほうが良いのか?それとも就任しないほうが良いのでしょうか。

今回は、社長の奥様を役員にする税務上のメリット・デメリットについてまとめてみることにします。

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奥様を役員にするメリット

所得税はその所得額が大きくなるに連れて課税される税率の高くなる累進課税が適用されます。

ということは、一人がすべての役員報酬を受け取るよりも、夫婦ふたりで受け取ったほうが一人ひとりの課税所得は小さくなり、適用される税率は低くなる。

結果的に、所得を夫婦で分散することで、夫婦トータルの所得税の合計額を小さくすることになります。

つまり、多くのケースでは、できるだけ奥様の報酬額を増やし、社長の報酬に近づけることが、税負担の軽減につながるということなのです。

役員が報酬を受け取れる根拠は、「取締役としての業務の委任の対価」ということであり、その業務に掛かった時間に必ずしも比例するものでもありません。

役員報酬の金額の妥当性は、「その委任された業務の対価として、社会通念上妥当であるか」が判断基準となります。

具体的には、常勤、非常勤の区分に従い、同じような業務に従事する同業他社の役員報酬に照らして過大でなければ、損金性を否認されることはまずないでしょう。

一般的には、組織上、役員は従業員の上位の役職であるため、その報酬額も従業員よりも高額なことが多いものです。

つまり、奥様を役員にするメリットは、従業員よりも高い報酬を支払う根拠となりうるということでしょう。

なお、実際には業務への関与度合いが少ない、あるいは全くない場合には、「過大役員報酬」として法人の損金不算入とされることもあるので、ちゃんと業務に従事していた証拠となる成果物を整備しておくことが必要です。

奥様を役員にするデメリット

役員報酬については、「一月以下の単位の決まった時期に決まった金額」の支払いがされたものしか、法人の損金となりません。

それでも、もらった役員個人は、所得税の課税がされるのですから、なんとも理不尽なのですが、そのようなルールなので仕方がないです。

これは、役員報酬額を増減させることで法人の利益を調整することを税務署が封じたいからだといえます。

仮に、変更をした場合には、変更の前後のうち低い方の金額を「正しい金額」とし、実際の支給額との差額については、法人では全額が損金不算入となってしまいます。

つまり、奥様を役員にした場合、業績が変動したとしても、一度決定した役員報酬については、次の役員報酬改定時期まで(通常は、役員報酬を改定してから12ヶ月間)は変更が出来ないということ。

そのため、奥様を役員にすると、その役員報酬の金額も固定化するので、業績が低迷したときに業績の”重し”となることがあります。

これが、奥様が役員ではなく、従業員としての雇用契約であれば、業績が「上ブレ」したときには他の従業員とのバランスに問題がない範囲で賞与の支給をしたり、業績が「下ブレ」したときには、その従事する時間を調整して給与額を減らすなど「柔軟な給与支給の余地」があるのです。

特に役員から従業員へ変更した場合は、みなし役員の取り扱いに注意

ただし、身分上役員ではない従業員であったとしても、特定の要件に該当する場合には、税務上役員として取り扱う「みなし役員」という制度があるので注意が必要です。

これは、同族会社で親族を役員とするとその報酬額が固定化されるを嫌い、あえて従業員にすることでの利益調整を封じ込めるものです。

この制度の要件は複雑ですが、ものすごくザックリといえば、同族会社のオーナーの親族で「その会社の経営に従事しているもの」については、身分上は役員ではなくとも税務上は役員とされ、その報酬の定時同額以外の部分については損金不算入とされるということ。

役員の範囲|タックスアンサー

特に、以前は役員であった奥様が役員を退任し、従業員となった場合には、税務調査で「奥様は、実際には経営に従事しているので、みなし役員ではないか」という指摘がされがちです。

それを「はい、そうですね」という税理士はまずいないと思うのですが、そう指摘されることを前提に、価格設定、資金調達、人事などは社長の専権事項で奥様は関与しておらず「経営に従事している事実はない」旨をきちんと説明できるようにしておきましょう。

間違っても、税務署員に、社長が「銀行取引などお金のことはすべて女房に任せてある」だの、従業員であるはずの奥様が「この会社はあたしで持っているようなものだ」などと言い出さないことを心よりお祈り申し上げます。

 

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