契約期間中ずっと家賃の消費税率8%で良いという特例を受けるために契約書から削っておく必要のある文言

2019年10月分の家賃から消費税が10%に

2019年10月から消費税は10%になりますが、家賃については、「契約書上いつ支払うことになっているのか」「実際にいつ支払ったか」にかかわらず「2019年10月分」の家賃から新税率が適用されることになります。

しかし、一定の要件を満たす賃貸契約であれば、その契約期間中の家賃について消費税率8%が適用される「経過措置」があるのです。

そこで、今回は、家賃についての消費税の経過措置の内容とその特例を受けるために契約書の内容をどのようにすればよいのかについてまとめておくことにします。

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賃料についての消費税経過措置の適用要件

本来、2019年10月分以降の家賃及び賃借料については消費税率10%が適用されますが、次の要件を満たす場合には、消費税率8%が適用されます。

(1)2019年3月31日までに締結された契約に基づく賃貸借であること

(2)2019年9月30日までに賃貸借が始まっていること

(3)資産の貸付期間とその期間中の対価が定められていること

加えて

(4)その「対価の額の変更を求めることができる」旨の定めが「ない」こと

または

(5)一方または双方が「いつでも解約を申し出ることができる」旨の定めが「ない」こと並びにその賃料の合計が資産の取得費+付随費用の90%以上となることが契約書で定められていること

このうち(5)はリース契約では見られますが、不動産の賃貸借では現実的ではないため、実際に経過措置が受けられるのは(1)+(2)+(3)+(4)が満たされたときということになるでしょう。

賃貸住宅標準契約書から削除が必要な文言

しかし、国土交通省が公表している「賃貸住宅標準契約書」には、(4)の「対価の変更を求めることができる」旨の記載がなされています。

3 甲及び乙は、次の各号の一に該当する場合には、協議の上、賃料を改定することができる。

一 土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった場合

二 土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合

三 近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合

賃貸住宅標準契約書|国土交通省

つまり、賃貸住宅標準契約書をそのまま使っていると、2019年3月までに締結された賃貸借契約であっても、消費税の経過措置が適用されず、2019年10月分以降の賃料については消費税率10%が適用されることに。

経過措置の適用を受けたいのであれば、この賃貸住宅標準契約書から上記引用部分の「対価の変更を求めることができる」旨を削除する必要があるのです。

削除するメリット・デメリットの慎重な比較を

「対価の変更を求めることができる旨を契約書から削除するだけで、賃貸期間中の消費税率が8%で良いのであれば、やらないほうがおかしい。」

たしかにそう思えるのですが、そもそも消費税は、事業者が負担するものではありません。

賃貸人は、消費税の納税額が8%から10%となったとしても、その分余計に賃借人からお金をもらうので、自分の懐が痛むわけではない。

賃借人は、消費税率は8%から10%になって賃料に伴い支払う消費税額が多くなったとしても、自分の消費税の納税額の計算上その分控除される金額が大きくなるので、消費税の納税義務があって原則課税を選択している限り自分の懐が痛むわけでもないのです。

あくまでも、消費税増税によるダメージがあるのは、その消費税を負担する最終消費者なのですから。

それなのに「対価の変更を求めることができる旨」の定めを削除してしまって本当によいのか、冷静な判断が必要ということでしょうね。

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