年払いで前金でもらった報酬はいつ収益に計上するのか?

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役務提供がされるまでは前受金であるべき

某脱毛大手サロンで多額の簿外債務が発覚した上、
資金繰りが悪化して経営が行き詰まっているようです。

ミュゼプラチナム、資金繰り悪化で私的整理 多額簿外負債が発覚、前受金を売上計上

顧客から前金で入金させた施術料は、その施術が完了するまでは
前受金として処理をすべきなのに、入金時点で売上高として計上していたとのこと。

要するに仕事もしていないのに売上高だけ先に計上していたということですね。

さて、今回は、継続的に役務提供をする取引はいつ収益に計上するのか
について話をしてみようと思います。

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会計的には実現主義

会計のルールでは、「実現主義」と言って
「役務提供が完了した時点」で収益を計上するのが原則です。

もし、ソフトウエアなどのメンテナンス報酬を前金でもらったとしても、
その前金をもらった時点で全額を収益に計上するのではなく、
実際の役務提供が行われた時点で収益に計上します。

なお、「一定の契約に従い継続的に役務提供がされる」ものについては、
「時の経過」に応じて収益に計上するものとされています。

そのため、具体的には、

・入金時には前受収益として計上しておき、
月割で時の経過に応じて毎月売上高に振り替える

・入金時には売上高に計上するものの、
決算時に未経過の期間に応じた部分については前受収益に振り替える

のどちらかがされることが多いでしょう。

税務上は権利確定主義

税務上も、役務の提供については
「その役務提供が完了した時点」で収益(益金)に計上するのが原則です。

しかし、一方で、「権利確定主義」という考え方もあります。

もし、役務提供が部分的に完了した時点で
その都度報酬の支払いを受けている事実があるのであれば、
その時点でお金をもらう権利が確定しているので、
すべての役務提供が完了していなくても、
前受金ではなくその時点で収益に計上すべきとされているのです。

ですから、継続的な役務提供の報酬が契約により
年払いで一括して前払いでされ、中途で解約がされた場合であっても
「いかなる理由をもっても返金をしない」というのであれば、
報酬を受領した時点でお金をもらえる権利が確定しているので、
全額を売上高とすべきであるということになります。

事実、賃貸契約に伴う敷金等について、
契約書に中途解約しても返金しないとして定められた部分については、
その「返還しないことが確定した時点」で収益に計上することが求められています。

しかし、役務提供の契約書の文言では、ほとんどの場合
「自社の責めに帰すべき事由以外は返金しない」などと
「依頼先の都合による解約については返金をしない」という趣旨で
記載がされているはずです。

そうなると、自社の責めに帰すべき事由が発生した時には返金する余地があるので、
お金をもらえる権利が100%確定したわけではありません。

「依頼先の都合で解約はするが、返金は求められない」
ことが確定した部分についてのみ、
その時点で収益計上をすべきということです。

実際には、わざわざそのような解約の申し出などはせず、
そのまま契約を継続するでしょう。

万一必要になれば、役務提供を受けられるのですから。

当然、こちらもひょっとしたら役務提供をしなくては
ならないという義務が残ることになります。

ですから、

・継続的な役務提供の報酬で
・契約書に年払いで一括で前払いで受領するとされていても
・「自社の責めに帰すべき事由以外は返金しない」と定められている

場合については、時の経過に応じて収益に計上する。

つまり、

決算時に未経過の部分については、
当期の売上高とせず、翌期以降の売上高とすることができる

ということになります。

<参考資料>

役務提供取引に係る収益計上時期について(国税速報第6113号)

前受金なら資金繰りは楽なはずだが

本来商材を販売する場合、
売上債権+在庫ー仕入債務だけ資金の立替を行わなくてはなりません。

この金額を「運転資金」といいます。

しかし、前受金でもらえば、売上債権はマイナスになるので、
運転資金は小さいかむしろマイナスとなることにもなります。

そのため、資金の立替は要らないので、手許の資金繰りは楽な場合が多く、
ビジネスモデルとしては有利なものだと言えます。

しかし、業績不振の際には、やめようにも顧客からの
前受金を返すお金がないのでやめられない。

良心的に規模を縮小し前受金を徐々に減らしていこうとしても、
そんなことが表面化すれば一気に信用不安が起きてしまう
非常にコントロールの難しい事業形態でもあります。

そのため、多くの場合は、業績不振になると、
前受金狙いのために派手に新規募集をして、
顧客数をふくらませた上で破綻をするので、
債権者が多くなり社会問題化しやすくなるのです。

まあ、実際に問題になった例のほとんどが、
破綻の原因は、社長の私的流用による放漫経営なんですけどね。

どうも、今回の脱毛大手サロンもそのようです。

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