相続税の税務調査では何がチェックされるのか?|名義預金と贈与の否定

相続税の調査は一生に何度も経験するものでもないので

相続税の基礎控除額が6割に縮減されたため、相続税の納税義務者は2倍に増えました。

ただ2倍と言っても、亡くなった人の4%から8%になるだけなので、92%の人には何ら関係がありません。

相続税の申告自体、ほとんどの人は一生に一度か二度しか経験しないものですし、遺産が最低でも2億円以上なければ、税務調査に来る確率は相当低いといえます。

ですが、相続税の税務調査は、法人税や所得税の調査とはかなり違うので、相続税の税務調査ではどんなことがチェックされるのかを見ていくことにしましょう。

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”評価”ではあまり揉めない、見られるのは”漏れ”

相続税の対象となる人が保有していた資産のうち最も多くの金額を占めるのは、大抵は不動産です。

なので、相続税の税務調査では、その不動産の評価についてもっとも多くの時間を割いてチェックがされる・・・

と思うのですが、実際に不動産の評価方法について、税務調査で指摘を受けるという例はあまりない気がします。

こちらもきちんと申告していますし、問題があれば机上で事前にチェックしているのでしょうが、それでも、結構”勢い良く”不整形地などの評価減をしていても、意外とクレームが付くことは少ないのではないかと。(もちろん程度問題ですが)

むしろ、相続税の税務調査で時間を掛けて見られるのは、申告がされたもの以外に金融資産がないかということです。

「印鑑」の保管状況で家族名義の預金をチェック

例えば、家族名義になっていた預金についても、実質的に被相続人が所有していたと認められるものについては、相続税の対象となります。

そのために、税務調査では、預金の印鑑の保管・利用状況が確認されます。

それらから、たとえ家族名義の預金であっても、印鑑が被相続人の預金通帳の印鑑と同じであり、その保管も被相続人によって行われていたとなると、実質的に被相続人の預金であるという指摘がされるわけです。

ですから、家族名義の預金については、印鑑を被相続人の通帳のものとは別にして、預金通帳と印鑑を名義人本人が管理をするようにしましょう。

なお、家の中にある三文判を含めた印鑑は、すべて提出を求められ、その印鑑を誰がどのように保管していたか、さらにその利用実績としていつ頃最後に押されたものかを実際に印鑑を紙に押してチェックします。

これは、最近に不動産の売買や新たな預金口座開設など重要な取引をしたことがないか、それらがきちんと相続税の申告に反映されているのかを見るためです。

「金庫」はよく見られるので整理しておく

当日の税務調査では、金庫がよく見られます。やはり、金庫には大切なものが置かれていることが多く、それがきちんと相続税の申告に反映されているかを見るのです。

また、預金通帳の動きを確認し、貸し金庫の利用実績が明らかになれば、その貸し金庫の中もよく見られます。

最近は、貸し金庫にタンス預金をする人もいるようですが、税務調査で貸し金庫に現金や地金などが発見されるとそれが被相続人のものではないかと疑われることになります。

税務調査はいきなり来ることはまずなく、事前に双方の都合のよい日時を設定するのですから、それまでに金庫や貸し金庫はきちんと整理をしておきたいものです。

預金は残高よりも「資金の移動」の方が要チェック

相続税の対象となるのは、あくまでも亡くなった日現在で被相続人が保有していた財産。

そのため、預金については、その日現在での残高に注意が集まります。

もちろん、その金額がベースになるのですが、実際の税務調査で、預金についてチェックがされるのは、残高よりも「資金移動」の方です。

まず、生前に大きな金額の引き出しがあれば、その資金がどのように使われたのかが確認されます。

特に多額の不動産の譲渡などがあれば、その事実をすでに税務署は申告により掴んでいるので、その資金がどのように使われたのかは、まず質問されると思ったほうが良いでしょう。

「何らかの金融資産の購入に使われたのではないか。身内の借金の返済に使われたのではないかー。」

それらが被相続人の財産としてきちんと申告がされているのかがチェックされるのです。

亡くなる前概ね5年程度は預金の動きがチェックされますので、申告段階で通帳を確認し、大きな資金の移動がないか、あれば何に使われたのかをよく見ておく必要があります。

また、亡くなると預金が凍結されてしまうので、葬式費用などを家族が生前に引き出すことがあります。これらは、死亡時現在の「現金」として相続財産に計上する必要があります。

意外とこの申告が抜けており、税務調査で指摘を受けることがあるので、注意が必要です。

加えて、死亡後に預金への入金があり、そこから申告されていない生命保険の解約返戻金などがあったことが発見されることがあります。

なので、預金については、亡くなった日の残高を把握するのは当然のこととして、その前後の資金の動きをきちんとチェックしておきましょう。

金銭贈与契約書は必ず作成保存、名義預金に時効はない

上記のような被相続人からの預金の引き出しを辿ってみたところ、それが相続人のものとなっていたり、被相続人が子供の借金返済をしていたなどと言う事実がある場合、「ハイハイ、じゃあ、それは贈与ということですね。でも、もう時効でしょう。ニヤッ」ということにはなりません。

税務署としては、その贈与の事実そのものが成立していないと主張します。金銭の贈与は、納税者側がその事実の証明が必要で、できなければ贈与自体がないものとされるのです。

贈与が成立していないのですから、これらのような名義は異なっているが実質的に被相続人の預金とされる「名義預金」については、贈与の時効は適用されません。

ですから、生前の金銭の贈与契約についても、税務調査ではよく見られます。

その金銭の贈与が法的に成立していない場合、その預金は実質的に被相続人のものと認定されるのです。

ですから、金銭での贈与がきちんと成立していたことを明らかにするために、「贈与契約書を作成する」「資金授受はできるだけ預金で足跡を残す」ということが重要になります。

なお、金銭贈与が成立することをアピールするために110万円の非課税枠を超えた111万円の贈与をして贈与税の申告をすればよいと考えている人も多いようですが、それは誤解です。

贈与税の申告があったから金銭贈与が成立したとされるのではなく、そこに贈与契約書が添付されているから贈与が成立していたと主張できるのです。

実際に、判例を見ても、贈与税の申告書は提出されているものの贈与契約書が作成されていない年の贈与について、その贈与は成立していないとして、相続税の追徴課税がされたケースもあります。(東京高裁平成21年4月16日判決Z259-11182)

ですから、贈与税の申告の有無に関わらず、金銭の贈与では必ず贈与契約書を作成保存してください。

なお、そのときに、あとから日付をさかのぼって贈与契約書を作成したと思われないためには、申告義務があれば贈与税の申告書に贈与契約書を添付すること、申告義務がなければ公証役場で確定日付をもらうということが考えられます。

公証役場にわざわざ出向くのが面倒ならば、贈与契約書に切手を貼って郵便局で消印をもらうという方法もあります。

契約書の日付をバックデートしてないと証明するお手軽な裏ワザ

相続税の税務調査で最も狙われるのは、まさにこの名義預金の認定+贈与の否定であると言っても良いでしょう。

なにせ10年以上も前に「給与よりも預金が増えている」という事実や無職の相続人の消費者金融が返済されている事実をみつけてきて、それらは名義預金だと言ってきますからね。

情報収集能力に違いがありすぎて、税理士としては「そんなの知るかよ」といいたくなるものも。

相続税の税務調査は8割が追徴課税されるというのはこういうことなんです。

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