８，ネットショップは本当に効率的なビジネスモデルなのか
上海の周さんからサンプルが出来上がってきた。
「なかなかの出来映えじゃん。
これが上代の30%でできるんだからな。
国内で作るなんてばかばかしいよ。」
周さんにOKを出し、写真を撮ってネットショップに掲載していく。
「素人が作ったにしては良い出来だ。」
拓海は一人有頂天頂点になっていた。

「ああ、サイトのデザインだけじゃ売れないからな。」
この間のネットショップセミナーでも言っていたが、
アクセス数を増やさないとどうにもならない。
そのためには、検索結果の上位に表示されるための
ＳＥＯ（検索エンジン最適化）とネット広告が必要なのだ。
「ええ、こんなに高いのか！」
予想外に高額な広告費に少し顔がゆがんだ。
しかし、ネットショップはアクセス数から
売上がある程度読み込むことが出来る。
それであればどうしてもアクセス数増加は必要であり、
そのためのコストは仕方がないであろう。
ただ、もう手持ちの資金が全くない。
広告は打つことは難しいそうだ。
シオックスと正式な取引をするまでの間は、
なんとか口コミのみでネット販売につなげるしかないな。
誰もいない部屋で、
自分を言い聞かせるように拓海はつぶやいた。
まだ実際の商品はないが、
一足先にサンプル写真をアップしてネットショップを
立ち上げたところ、夜中に一通のメールが届いた。
「ヨシダ、独立おめでとう。応援のため買って帰ります！」
大学の同級生、小嶺が最初のうちの顧客になるとは。
やったうれしい！
なんだかこの世界でやっていけるような気がした。
さささやながら発泡酒ではなく、今夜は缶ビールで祝杯だ。
カネはないが充実している。
こんなに幸せだと思わなかった。
もうサラリーマンになど戻る気がしない。
その後もブログやmixiの仲間が次々に商品を買ってくれた。
なんてありがたいことだ。
そんな時、中国から商品を納入したい
というメールが来た。
「どこへ運べばいいのか」ということだ。
全く倉庫のことを考えていなかった。
しかし時間もないし、倉庫を借りるカネもない。
送付先を自分の自宅として欲しいという
メールをやむなく周さんに送付した。
２週間後、念願の商品が届いた。
「おお、これが俺のデザインしたTシャツか。」
感動で胸が高鳴った。
きっと子供が出来たらこんな感じなのかも知れないな。
拓海は一人悦に入っていた。
しかし、どうすればいいんだよ。
こんなにTシャツばっかり。家中Tシャツだらけじゃん。
それこそトイレや脱衣所まで。
こんな状況はとてもお客さんには見せられない。
しかし、ネットからの売上は細かくて、
意外と発送の伝票書きも大変だよ。
だいたい夜中までこんなことをやっているのに、
計算してみると大した売上もないじゃないか。
それも知り合いからのオーダーばかりだ。
しかし、なんでこんな夜中まで働いてカネがないのだろう。
そうか、売上を上げるには、
今度は広告を打たないといけないのだろう。
でも、本当に売れたらこれ以上の伝票を書かないといけないのか。
それじゃ伝票を書くために起業したようなものだよ。
かといって人を雇うカネなんてあるわけもない。
誰かまとめて買ってくれるとよいのだが。
そういえば、エムズ時代に取引をしていた会社からは
何の連絡もないな。
ひょっとしたら、このままネットショップでしか売上は
上がらないかもしれない。
いくら充実しているといったってこれじゃ生活はできない。
どうしたものか。
★ポイント　直販には特に高いマーケティングコストと
オペレーションコストが必要。
何でも中抜きすれば利益率が高くなるとは限らない。
【編集後記】
「絶対そんなに売れるわけない」というくらい入れたのに、
また日曜日にamazon在庫切れです。
ありがとうございます。
出版社の話では、増刷分が3/13にまたン百冊納入されるとのこと。
表示上「4-5日」になっているけど、実際の配送はもっと早いようです。
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