20年後も生き残るために”交渉術”だけでなく”交渉学”を学ぶ理由

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20年後も職業会計人が生き残るためのスキルは交渉力?

「20年後に無くなる職業」として、その筆頭グループの一つによく職業会計人が挙げられます。

確かに、単純な経理作業等は人工知能などによりドンドン自動化されていくことでしょう。

その中で生き残るには、自動化されない「交渉力」が不可欠になると言われています。

その交渉スキルを高めようと「交渉術」の本を読み漁る中で、本家ハーバード流の「交渉学」を謳うものが目に止まりました。

本を開いてみるといきなり「Win-Winを目指せ」だと。

「ああ、ハイハイ。また建前論ですか。」「日々税務署や金融機関とゴリゴリの交渉をしている者には関係ないな」とも思ったのですが、相手の弱点を突いたり心理操作による交渉術を駆使して相手を論破したり屈服させるやり方一辺倒が果たして正しい交渉なのかという疑問を感じていたのも事実です。

そこで今回は、20年後も生き残る交渉力を身につけるための「交渉術の限界」と「原則的な交渉のスタンス」について考えてみたいと思います。

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交渉は勝ち負けではない

交渉力が強いというとタフな交渉を通じて相手を論破し、こちらの条件を強引にでも相手に飲ませることをイメージすると思います。

確かに、相手の言いなりになるようであれば、それを「交渉力が強い」と言わないことだけは間違いありません。

しかし、なぜ交渉をするのかといえば、多くの場合、相互で合意形成をし、”協働行為”をするためでしょう。

例えば、仕入先や金融機関などに対して、「交渉=勝ち負け」と捉え、自分が持てるカードをフル活用して極限まで自分の利益を多く確保するという姿勢で、心理操作や力関係を利用し、こちらの要望を全部押し通したとしましょう。

しかし、それは表面的な合意に過ぎず、とてもお互いが論理的にも感情的にも納得した”協働関係”が築きあげられたとはいえないので、実行段階でつまづくことが多いはずです。

では、税務署のような利害の完全に対立する相手との交渉ではどうでしょう。

別に信頼関係など築く必要もないので、相手の弱みを突いて徹底的に論破すればいい。

本当に一度限りの交渉であればそれでも良いかもしれません。

ただ、事業を継続していれば、いずれまた別の税務調査で対峙することもあります。

徹底的に論破し自説を押し通して”勝利の美酒”に酔っていたら、思わぬところで「江戸の敵を長崎で取られる」とも限らないのです。

また、従業員などとの交渉では、優越的な地位を振りかざすことで、こちらの要望を押し通すことはできるかもしれません。

しかし、その”パワーゲーム”で押し切った故の悲惨な末路の典型例ともいえるのが、ブラック企業のレッテルを貼られて想像以上の顧客の離反をもたらし赤字転落をした「ワタミの凋落」だともいえます。

ワタミの創業者は、目の前の従業員との交渉には圧勝していたようで、実は、世間の評判の悪化という「レピュテーションリスク」に見えないところで侵食されていたのかもしれません。

まさに、交渉学でいう「賢明な合意」とは、「売り手よし、買い手よし、世間よしという三方よし」な合意であるとされるのです。

なんともキレイ事のようでありますが、仮に徹底的に論破できるにしても相手に”逃げ道”を残すなど、相手の立場を配慮し、こちらの利益を確保しながらもどれだけ相手の利益にも寄り添えるのかを考慮したほうが、最終的により良い結果を生むことの方が多いことは、実際に多数の交渉経験のある人であれば肌感覚で理解していることでしょう。

「交渉術という”武器”をどう使うか」という体系的理解が交渉学

交渉相手の特質や弱点を理解し攻め立てたり、人間の心理に乗じた交渉術と言うのは確かに大きな効果はあります。

例えばこの本に書いてある、相手の断りっぱなしでは申し訳ないから別の形で報いてあげたいという「返報性」に乗じて、最初に絶対拒否されるような大きな要求をして断られたのちに本当の小さい要求を出すことで、最初から小さな要求をするよりも承認されやすくするといった「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」や、逆に自分の主張に「一貫性」を保ちたいという心理に乗じて、絶対にOKする小さな要求から承認をさせていくことを繰り返して本来の大きな要求を承認させる「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」など実際に試してみると本当に効果はありました。

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ですから、交渉術は交渉上の”武器”であり、その武器をより多く持つことは交渉力を高めることにはなると思います。

しかし、その武器の取り扱いには細心の注意とその利用により負のレピュテーション(評判)が蓄積されていくかも知れないという覚悟も必要です。

武器ですから取り扱いを誤れば自らも周りの人も傷つけることになる。

事実、若手顧問税理士がどこかで学んだ税務調査対応の交渉術を振りかざしたが故に、税務署員を感情的にさせ、通常重加算税をとられるような事案でもないのに強硬に修正を求められてしまったという、明らかにその武器の使い方を誤ったと思うようなご相談を受けることもあるのです。

つまり、武器を揃えることも大切ですが、もっと大切なのは「その武器をどう使って、どんな結果を目指すべきかという体系的な理解」であるということを今回再認識した次第です。

具体的な「原則立脚型交渉」の処方箋は、「やっぱりキレイ事じゃないのか?」というモヤモヤ感を振り払いながら下記の本で確かめてみてください。

<参考>

交渉学とは(一般社団法人交渉学協会

 

ハーバード流交渉術 (知的生きかた文庫)
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戦略的交渉入門 (日経文庫)
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