タワーマンション購入での節税には規制がかかるのか?

タワーマンションで相続税を節税?

都心湾岸地区のタワーマンションは一時ほどではないものの未だ販売好調のようで。

「タワーマンションで相続税を節税」という富裕層がその一翼を担っているのかもしれません。

タワーマンションを購入することで、大きな相続税の節税効果を生み出すことがあるのも事実です。

しかし、もう節税目的でのタワーマンション購入は慎重に行うべきかと。

今回はタワーマンション節税の仕組みと現状についてまとめてみようと思います。

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不動産の時価と相続税評価の乖離を利用する

よく、「相続税の対象となる遺産の評価額を引き下げるために借金で不動産を購入する」ということが言われます。

相続税の対象となる金額は、原則として時価で評価すべきなのですが、時価の算出は非常に難しく人によってブレも生じてしまいます。

そこで、評価方法の基準とも言える「財産評価基本通達」が定められているのです。

この財産評価基本通達では、不動産は流動性が乏しく価格も変動するリスクがあるため、現預金よりは評価額が低く押さえられています。

一般的には、土地は時価の70-80%、家屋は時価の40-60%程度。

そのため、現金でそのまま保有しているよりも、同額の不動産を購入することで、相続税の評価額を低くすることができます。

別に借金で購入しなくても良いのですが、できるだけ相続税の圧縮額を大きくしようとすれば手持ち資金では足りないので、結果的に「借金で不動産を購入すれば相続税の節税になる」と言われるわけです。

しかし、なぜ不動産の評価が軽減されているかというと、現金よりも流動性が低く価格変動もするというリスクを鑑みて評価を引き下げているので、それを節税効果と言って良いのかは疑問の残るところではあります。

確かに財産評価基本通達に落ち度もある

確かに、マンションの評価方法が時価と乖離している部分もあります。

マンションの場合、土地はその区分所有権の価値としてみます。

具体的には、敷地全体を一つの更地として評価した金額に自分の持分を掛けることで、マンションの土地部分の評価額とするのです。

タワーマンションであれば、部屋数が多くなるので、その持分は小さくなり、時価よりも評価額が小さくなりがちだと言われています。

さらに、財産評価基本通達では、部屋の階層について土地部分の評価の差異をつけていません。

しかし、現実には、タワーマンションでは同じ間取りでも1階フロアが上がることに販売価格は50万円から100万円も値段が上がっていきます。

そのため、高層階の部屋については、その価値が反映されず、土地部分について時価よりも割安な評価がされるということです。

結果として、タワーマンションは、時価の数分の一というような評価がされることもあり、多額の相続税に悩まされる富裕層にとってタワーマンション節税は、魔法のような節税対策なのでしょう。

もうすでに規制強化は始まっている?

しかし、このような「法の盲点」をいつまでも国税が放っておくわけはありません。

すでに個別案件では、このような時価と評価額に大きな乖離のあるタワーマンションについて、財産評価基本通達での評価が認められず、その取得価額とされた裁決例も出てきています。

(国税不服審判所平成23年7月1日裁決)

この事例は、亡くなる1月前に2億9300万円で購入し、約5800万円で相続時の評価とされながら、死亡後1年後には2億8500万円で売却するというかなり極端なものでしたので、必ずしもすべてのタワーマンションについて、取得価額で評価することが強制されるものではありません。

そんな中、ついに平成27年11月には「タワーマンション節税についての監視強化をせよ」という指針が国税庁から全国の税務署に出されました。

これは、特段の法律や通達の改正ではなく、従来から存在する財産評価基本通達6項「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」というなんともテキトーな一文によって実施されるのです。

これが節税対策の怖いところ。

後出しジャンケンで「ああ、それズルいからなしね」と簡単に否認がされてしまうということなんです。

すべてのタワーマンションについて財産評価基本通達での評価が認められないというわけではないものの、極端に時価と相続税評価額に乖離のある物件で、その所有期間が短い場合などについては、今までスルーされていたような事案も厳しく評価されることもあるということを想定する必要はありそうです。

今回の監視強化の指針が、加熱する「タワマン節税への脅し」であればよいのですが、多額の投資をする以上、万一その節税が否認された時でもその不動産投資は採算に合うものかを考えてタワーマンションを購入すべきではないでしょうか。

経済誌で特集が組まれたらもうヤバイ

タワーマンション節税自体は、さして新しいものではありません。

それこそバブル期からあったものです。その頃に実施されたものは、相続税の申告も無事クリアしていることでしょう。

しかし、その後、バブルが崩壊してしまい、相続税評価額が時価よりも低いどころか、相続税評価額が時価よりも高くなってしまい不動産の「物納」が大流行したという”不動産暗黒の時代”がつい最近まで続いていたことは忘れてはいけません。

それが、近年の金融緩和や中国人富裕層による積極的な不動産購入によりタワーマンションに注目が集まる中で、「タワーマンションで節税」と経済誌などにも取り上げられるようになったわけです。

どうやら過去の節税対策の終焉同様、税務専門誌ではない「一般経済誌に取り上げらてた頃には、もうその節税対策はヤバイ」という法則は今回も生きそう。

それこそ映画でチョイ役が「この戦争が終わったら帰って彼女と結婚するんだ」と言っているくらい先が見えています。

さすがに私も”人柱”になって試してみるという気にはなれません。

それにしても、この記事みたいなことを調子に乗って言わなければいいのにな。

「その6億円、税金ゼロで息子さんに…」節税ブーム(朝日新聞デジタル2015.9.12)

こういう記事を書くから、国税庁も課税強化の方針を打ち出しちゃうんですよ。

節税対策はそっとやりましょう。

「キジも鳴かずば撃たれまい」っていうじゃないですか。

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