弥生のタイムスタンプを使ってみましたー領収証を廃棄するために必要なスキャナ保存要件の改正

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スキャナで保存をすれば領収証等の廃棄も可能に

領収証や請求書などは、主に税務調査に備えて一定期間保存をしておかなくてはなりません。

税法のルールでは、帳簿書類は確定申告の申告期限から7年間も保存することになっています。

過去の事業年度の帳簿書類を見返すということは税務調査以外ではほとんどなく、単に税務調査のためだけに多くの書類を保管しておかなくてならないというのはどうなのかと。

一方で、電子データは簡単にあとから改ざんができてしまうため、安易に写真やPDFなど電子データでの保管を認めてしまうと悪用される危険性もはらんでいます。

そこで、一定の改ざん防止策を講じた電子データの保管方法を採ることで、原本となる領収証等の廃棄をしてもよいというルールが「電子帳簿保存法」に加えられたのです。

今回は、弥生が提供するタイムスタンプの使用感と平成28年9月30日以後の承認申請分より要件が緩和された内容、さらに中小企業での「スキャナ保存」の実行可能性について考えてみようと思います。

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今回緩和されたスキャナ保存要件

平成28年9月30日以後の承認申請分からは、領収証等の原本を廃棄し、電子データでの保管でもよいとされる要件について、下記のように緩和されます。

・スキャンする装置は固定台と一体のものでなくスマホでも可に

・経理担当者が原本ではなくスキャンされたデータを確認すればOKに

・小規模企業者は三人必要だったチェック体制が税理士のチェックにより社内は一名でOKに

以前は、領収証を受け取った人は会社に戻って経費精算し、経理担当者は領収証の原本を確認した上で固定式のスキャナを使ってスキャンすることが必要でした。

さらに、そのデータをチェックするための仕組みとして最低三人(申請者、経理担当者、事後検査担当者)が必要であり、少人数の中小企業では導入のハードルが高かったのです。

それが、スマホでどこからでもスキャンができるようになり、小規模企業者(概ね従業員が20人以下、商業・サービス業では5人以下)であれば顧問税理士と社内に一人の体制でもOKになりました。

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(経済産業省:平成28年度経済産業関係税制改正について)

未だにタイムスタンプがネックに

スマホでのスキャンでも可能になったことにより、経費精算の申請とスキャンをどこからでも社員一人ひとりができるようになります。これは、どちらかというと大手企業での利便性を高めるものでしょう。

一方、チェック体制が三人から顧問税理士+一人となったことは、人員の少ない中小企業や一人法人での導入のハードルを大きく下げることになるはずです。

しかし、改ざんを防止するためにスキャンしたデータに「タイムスタンプ」を押すということは改正後も変わらず求められます。

これが、かなりお金がかかるのです。

例えば、こちらの会社のタイムスタンプを利用すると

・初期導入費用:TSA認証登録費用 5,000円

・ランニング費用:年間96,000円(12,000スタンプまで)

(いずれも税抜価格)

SEIKOタイムスタンプサービス価格表

の費用が必要です。

中小企業にとって、タイムスタンプを押すだけで毎年最低10万円程度の支出を覚悟しなくてはならないというのはなかなかの負担ですね。

弥生会計のユーザーであればタイムスタンプが無料に

中小企業や一人法人であれば、いくら領収証などの保管が大変だといっても、それを回避するために年間で10万円の支払いが必要だとなると導入に二の足を踏むこともあるでしょう。

しかし、弥生会計のユーザーであれば、上記のSEIKOのタイムスタンプが無料で利用できるのです。

(弥生のサポート契約と自分以外の弥生IDを持つ人を「承認者」として登録する必要があります)

さらに、スキャンした領収証はその内容から仕訳にしてくれ、そのまま弥生会計に取り込むことも可能になります。

これならば、コスト面でスキャナ保存に躊躇していた人も導入したくなるのではないかと。

スキャンデータ取込設定(弥生)

スキャナ保存制度オプション有効中のタイムスタンプの確認方法(弥生)

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まだ効率アップに寄与する段階ではないが意気込みは買いたい

ただ、実際にやってみると、この作業自体は思いの外いろいろな工程を経なくてはなりませんし、正しくスキャンされているのか、正しい勘定科目となっているのかのチェックも必要です。

経理がわかって入力の早い人だと、ちまちまスキャンして、チェックして、データとして取り込むくらいなら、パパっと手入力したほうが圧倒的に早いはずです。

つまり、現時点で弥生のタイムスタンプサービスは、どうしても紙の資料を一切残したくない方が、紙で保存する以上の作業工程が必要なことを覚悟するのであれば、一度試してみる価値はあるということかと。

スキャナ本体を無償貸与したり、ネックとなるタイムスタンプを他社に先駆け自腹を切って無償で提供するなどという弥生の意気込みは賞賛したいところです。

もう少し作業工程が改善され仕訳の学習機能の精度が高まればお客様にもオススメしてみます。

(弥生スマートコネクトでの預金データの自動仕訳も作業工程が複雑でエラーも多く仕訳学習の精度もイマイチ。MFクラウド会計程度にスムーズになるよう他社サービス経由ではなく自社で一気通貫できるような開発をすることを望みます)

電子データ化の本当のメリットは検索スピードアップだが

ですから、私自身の分は、今までどおり領収証を月別に束ねてそのまま保存するつもりです。

うちはオフィス内の紙データはすべてPDF化して保存しペーパーレスを実現していますが、それはそうして検索により探しだすほうが、紙の資料をめくりながら探すよりもずっとスピードが早いからです。

でも、わざわざちっさい領収証を一枚ずつ手間をかけてスキャンしたところで、私が領収証をあとで検索することなどまず無いですから。

税務調査で税務署員が助かるくらいじゃないでしょうか。

税務署員の仕事をしやすくするために、無駄な手間を掛ける気にはならないです。

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