稼いだはずの会社のお金はどこに消えたのか?ー手許のお金を増やす3つの視点

つぶれない会社に変わる! 社長のお金の残し方

利益を上げた割にお金が残らない

「決算書ではこんなに利益が出てるが、一体どこにそんな金があるのだ」

中小企業の社長さんからよく聞かれる言葉です。

「なぜ利益が上がっているのに手許のお金がそれほど増えないのか」という答えは、「利益がキャッシュになるには時間的なズレがあり、一時的に姿形を変えている」ということだと思います。

つまり、手許のお金をできるだけ増やしたいのであれば、収入を増やし支出を減らすとともに、できるだけ一時的に姿形を変えているキャッシュの金額を減らし、その時間を短くすれば良いことになります。

このことをまとめたのが、この本。

私が書いた本の中で、お読みいただいた方からの顧問契約をいただくことが多い本の一つです。

そこで、今回はこの本の導入部分を転載してみようと思います。

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なぜあなたの会社の金庫には金がないのか?

「吉澤様、こちらへどうぞ。既にお客様はお部屋でお待ちでございます。」

税理士である私は、顧問先の社長から呼び出され、ミシュランで星を獲得したという銀座の日本料理店の奥座敷に通された。

「ずいぶんと高級そうなお店ですね、社長」

「いや、忙しいところすみませんね。たまには、こういうところ旨い飯でも食わないと仕事なんてやってられないですよ。」

私の到着を待ちきれなかったのか、社長は早くもビールを片手に上機嫌である。

「実は先生に教えて欲しいことがありましてね」

「ええ、なんでしょう」

「会社も大きくなったし、売上も増えた。決算書を見ても利益が出ていて税金も支払っている。なのにカミさんと二人で商売をやっていた時のほうがずっと金はあった気がするんですよ。」

「『金運が上がる』って言われてサイフも金色の財布や長財布に変えたんだけど、ちっとも金なんか残らない。一体、私が稼いだ金はどこに行っちゃったんでしょうかね?」

「それは、毎回訪問した際に説明していると思うんですけどねえ。まあ、もう一回じっくりと説明してみましょうか」

「ええ、お願いしますよ」

「まずは、お金の流れというものを理解していただきましょうか。」

私はカバンから取り出したレポート用紙に大きな四角形の箱をいくつか書いてから、社長にも見えるようにテーブルの中央に置いた。

「この図をみてください。これは、会社の業績を表す貸借対照表と損益計算書をくっつけて図にしたものです。いつも『試算表』として報告していますよね」

「ああ、あの数字がいっぱい書いてあるやつね。あんまり良くわからず、利益のところしか見ちゃいませんでしたよ」

確かに試算表の数字をこちらが説明しようとしても「結局、今月はいくら儲かったんですか?」と社長が毎回いうことを私は思い出した。

「この図は、会社のお金の流れを理解する上ではすごく良い図なんですよ。社長に『簿記を覚えて』とまでとは言いませんがこの図の仕組みを理解すると、一気にお金を残すにはどうしたら良いかがわかるんです」

「ほう、そうですか」

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「まず、図の右側を見てください。」

「こちらには仕入債務、借入金、純資産、収益という項目が並んでいます。仕入債務とは買掛金のように仕入先に後日支払わなければならない金額のこと、借入金は銀行からの融資などです。純資産とは最初に社長が拠出した資本金と過去の利益の蓄積のことです。収益とは、平たく言えば売上ですね。」

「これらには共通点があります。それは、会社にどうやってお金が入ってきたかを表しているということなんです」

「へえ。そうすると売上と借金は同じものということですか?」

「会社にお金が入ってくるという意味では同じですね。もちろん、売上は原則として返す必要はないけど、借金は返す必要があることに大きな違いはありますが」

「では、左側はどうか。ここには現金預金、売上債権、棚卸資産、設備投資、そして費用が並んでいます」

「これらの共通点は、すべて会社がどうお金を使ったかを表しているということなんです」

「あれ?現金預金って、金は使ってないでしょ?」

「ええ、そうですね。では、言い方をかえましょう。これは集めたお金をどんな状態にして持っているかということなんです。ですから現金預金というのはそのままの状態にしているということです」

「なるほどねえ」

「残りの売上債権とは売掛金のように後日得意先からもらえるお金のこと、棚卸資産とは商品や原材料の在庫、設備投資とは機械や工場など、そして費用は売上を獲得するための原価や活動経費のことです」

「実は、この図は『お金の成長の流れ』でつながっているんです

「まずは、この図の右上を見てください。仕入債務、借入金、純資産。ここまでを一つのグループにしましょう。これらは集められたお金であり、お金の成長のスタートです。こうして集められたお金が旅をしてより大きくなって帰ってくるのが会社の経営ということなんです」

「そういうもんですかね」

「この右上で集められたお金を会社は一生懸命もっと増やそうとします。その成果が売上となってお金が入ってくるわけです。」

「このように図の右側では、会社にどうやってお金が入ってきたかを表しているのです」

「次に図の左側を見てください。こちらは会社がどうやってお金を使ったのかを表します」

「売上を上げるためには仕入や経費、税金などの費用という犠牲を支払うがあるでしょ」

「当然でしょうね。売上全部が金が残れば商売も楽なのに」

「本来であれば、その売上高と費用の差額である利益分だけ左上の現金預金として残るはずなんです」

「そうなるはずですよね。ところが実際には今ひとつ金が増えていかないんだよな」

前菜の「うにと伊勢エビのジュレ」をつつきながら社長は手酌でビールを注ぎはじめた。

「実は、現金預金の一部が一時的に姿を変えて『寝ている』のです。それがこの左側に書かれた売上債権、棚卸資産、そして設備投資なんですよ。」

「本来は現金預金であるものが姿を変えてしまうのですから、これらが多いということはその分手許の金がなくなるわけです。なので、私はこの売上債権、在庫、設備投資のことを会社に住む『三匹の金食い虫』だっていているんです」

「う〜ん、こいつらのせいで、金がなかったのか。」

「こういう過程を経て左上の現金預金になる。それをもっと大きくしようとまた旅に出すということを繰り返しているのが事業ということなんです。」

「なんとなく、川で生まれた鮭の稚魚が海に渡って大きくなりながらもまた生まれた川に戻ってくるのに似てますよね。大きくなる過程でたくさんの犠牲を払ったり、大きくなって帰ってくるまでの間は川には鮭がいなくなったりするところなんて」

「言われてみたらそうかもしれんな」

「社長たちは、お金をより大きくしようとはよく考えるけど、実は、それと同じくらいお金を早く回収するにはどうしたらよいかを考えないと手許の金は増えないんですよ」

「なるほどねえ、じゃあ、結局お金を残すにはどうしたらいいんです?」

「それもこの図からわかりますよ。大きくわければ三つの視点で見ることができます。一つ目は『収入を増やすこと』、二つ目は『支出を減らすこと』そこまでは家計と一緒なのですぐわかると思います。」

社長も手書きの図を見ながら頷いている。

「これに三つ目として、三匹の金食い虫のような『寝ている資金を減らすこと』も必要なのです。」

「そりゃ、寝ている金が多くちゃ手許の金はなくなるからな」

「さらにこの図に描かれた項目をそれぞれ中身を細かく見ていけば、手許のお金を増やす作戦が立てられるわけですね」

「なるほどやっとあの数字ばかりの資料に興味が湧いてきたな。先生、もっと具体的にお金を残す方法を教えて下さいよ」

「では、それはあとでゆっくり説明していきましょう」

つぶれない会社に変わる! 社長のお金の残し方
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