舛添都知事の出張でのスイート宿泊や週末の別荘通いの言い訳は税務調査でも通用するのか?

2013-03-31 19.15.03

ファーストクラスやスイートでの出張、週末の別荘通いも仕事に必要?

舛添都知事が、都市外交とやらで海外出張に行く際に、往復の飛行機はファーストクラスで宿泊はスイートなど多額の公費を使って批判がされています。

さらには、週末の別荘通いに公用車を使っているとの報道までも。

舛添都知事は当然「仕事に必要な経費」と説明しているようですが、「公私混同」についてのこのやり取りを見ると、税理士としては、どうしても税務調査を思い出してしまうのです。

そこで今回は、もし社長が舛添都知事のようなお金の使い方をして、同じような言い訳をしたら税務調査で通じるのかを考えてみようと思います。

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出張でファーストクラスやスイートルームを利用する

舛添都知事は、ニューヨークやロンドンなどの出張に際し、往復はファーストクラス、宿泊は最高198,000円のスイートルームに宿泊したとのこと。

あえてスイートルームに宿泊した理由は要約すると「すごい頻度で会議をした。会議のための部屋を取るよりも安い」「要人に会うのに一流のホテルでないと相手にされない」とのこと。

この説明で、出張時のファーストクラスやスイートの利用料は会社の損金になるのでしょうか?

結論は、損金となる可能性が高いと思います。

法人税法上、損金になるのは、益金を獲得するために直接・間接的に要した金銭的な犠牲です。

ですから、益金(売上高)を獲得するために、その出張旅費が実際に必要なものであれば、損金となることが原則です。

一方、所得税法基本通達9-3では非課税とされる旅費の範囲について次のように説明されています。

(非課税とされる旅費の範囲)

9-3 法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。(平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正)

(1)その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。

(2)その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

今回の舛添都知事の場合、周りの県知事が揃って「うちはそんなに高くない」と言っていることから、同種同規模の他の使用者等が支給している金額に照らすと相当ではないといえます。

また、本来都知事の宿泊費は40,200円とされていることから、198,000円という金額が同じ都庁の他の者と比較しても突出している可能性は高いでしょう。

ちなみに大阪府知事(市長)の米国欧州大都市の宿泊費は29,000円だそうです。

橋下徹氏が大阪府知事&市長の旅費規程をツイート東京都と比較(livedoorNEWS)

その点からすると、同じような金額の宿泊費を会社が支出した場合、税務署からはかなり厳しく「高すぎである」と指摘されるはずです。

しかし、スイート(Suite)とは「連なった部屋」のことであり、「寝室とは別の部屋で会議をしていた。その費用を鑑みるべき」「重要人物との対応には相応の施設が必要」という説明は必ずしも不合理なものでもなく、それを税務署が否認をするのは結構難しいのではないかと。

出張でファーストクラスを利用するのも贅沢であるとは思いますが、これも高額を理由に税務署が社長への給与とするのは意外と難しい。

出張で実際に掛かった経費について「じゃあ、そちらが正しいと思う金額で更正してくださいよ」と言われて税務署がその根拠を更正文できちんと示すのは、相当手間が掛かるのでできれば避けたいはずです。

稀に、納税者側があまりに強気に出て税務署員を”仕事する気”にさせてしまい、税務署側が損得顧みずに強硬姿勢でくることもあるかもしれませんが。

もちろん、個人的な趣味でNYに行ったとされれば、その旅費はすべて社長への給与とされます。

つまり、あくまでも、その出張が本当に会社の事業活動にとって必要なものかどうかのほうが問題で、実際にスイートで現地顧客とのミーティングなどがなされていれば、その費用は税務調査で高額だと指摘されるものの最終的には損金となる可能性が高いと個人的には思います。(少なくとも私ならそうなるよう全力で対峙します)

なお、出張旅費の精算については、その領収証に記載された金額で実費精算する方法と事前に旅費規程で定めた宿泊日当を渡し切りで支給する方法があります。

もし、実費精算ではなく、宿泊日当として一泊200,000円の支給をしたとすれば、まず間違いなく否認されるでしょう。

いくらまでなら良いのかという線引きは難しいのですが、実費精算をしない渡し切りの「宿泊日当」であれば、社長で一日25,000円くらいならばまず問題にならない線ではないかなと。

出張旅費を非課税でもらえるのはいくらまで?

それ以上は、相応の理由が必要になると思います。

支給をした金額を確かめない渡し切りの宿泊日当は、その金額の大小について実費精算よりも厳しい目で見られるのは当然です。

「スイートで会議をするために高額に設定している」という説明も、まあ頑張ってやってみてください。

私がその金額で税務調査を乗り切ることは無理です。もっと有能な税理士を探すか、本当に支出しているならちゃんと実費精算したほうが良いでしょう。

根拠不明の情報商材では、その線引きが定められていないことを理由に実費精算をした上で、さらに一日50,000円くらいは非課税で宿泊日当を受け取れるかのように書いてあるものもありますが、どうぞ自己責任でお好きに申告なさってくださいとしか言いようがありません。

毎週末自分の別荘に公用車で行く

都知事がほぼ毎週末自分の別荘に通うのに公用車を利用している。

警備の必要性のある都知事とは同列で語れませんが、これを社長に置き換えれば、会社所有の車で自分の別荘に通うということであり、その交通費が会社の損金になるのかという疑問が生じます。

結論は自分の別荘までの交通費を会社の損金にするのはかなり難しいのではないかと。

別荘でも仕事をするということですが、その仕事が別荘でないとできない仕事でないかぎりわざわざ移動する理由もなく、移動することに事業との関連性がありません。

もし本当に別荘でも仕事をしているにせよ、その移動が事業にとって必要性がない以上、損金になるのは「現地での仕事に費やした費用」のみとなります。

青年会議所の会議に出席するための出張費等を代表者に対する給与とした裁決例(平成27年7月28日裁決)

もちろん、単に「別荘でも作業をしている」というだけではなく「その別荘でしか会えない人」と「訪問のたびに面会をしていた」というのであれば、移動のための交通費を損金にすることは可能です。むしろ、その場合には、その別荘の使用料も会社に請求する余地もあるでしょう。

しかし、「健康を保ち頭を整理したほうが仕事がはかどる」と言うのであれば、別荘への訪問は休養を取るために行っているとみなされます。

休暇を過ごすための現地までの交通費を会社の損金とすることは難しく、会社が負担していたら社長への経済的利益の供与とされる可能性が高いでしょう。

強制的に集めた税金の無駄遣いや私的流用は許されない

会社の出張費は、自分たちが汗水たらした対価として稼いだお金からの支払いです。しかし、税金は、何ら対価性もなく人が稼いだお金を強制的に徴収したものだということを忘れてはなりません。

会社がその税金を脱税したら重いペナルティがあるのですから、強制的に集めた税金の無駄遣いやましては私的流用があればそれ以上に厳しく糾弾されるべきではないかと。

その判断は都民が次の都知事選挙で示すことになるはずです。

私には投票権ないですけどね。

*上記はあくまでも私の個人的な見解です。実際の税務申告は、ケースバイケースですので顧問税理士とご相談ください。

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