舛添都知事の調査報告書全文を税理士が読んでみたらこうでしたー舛添問題で学ぶ税務調査の教訓

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舛添都知事の調査報告書全文をネットからダウンロード

舛添都知事の公金の私的流用に関して「第三者の目」が作成した調査報告書の全文がネットで公開されています。

社長の私的流用については、税務調査でよく指摘されることなので、勉強のため一通り読んでみました。

税理士の目から見て「頑張って理由をつけたな」というところと「相当苦労しただろうけどこれは無理だな」というところも。

税務調査の教訓にもなりそうなのでまとめてみました。

なお、政党助成法や政治資金規正法に関してはどうせ違法性は問えないのでしょうし、専門分野でもないので、その主張の妥当性は一切検討しておりません。

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家賃は高めイッパイに頑張って理由をつけた

実質的に舛添氏が所有する自宅兼事務所の事務所部分の賃貸料が高過ぎるのではないかという指摘については、適正であると「第三者の目」は説明しています。

<概略>

・平成2年に舛添氏が購入(中古、取得価額は記載なし)、その後ファミリー企業が取得

・既に2F以上は住居、1Fはワンルームマンション、地下1Fは飲食店であった

・1Fと地下1Fを事務所部分としてファミリー企業に賃貸料が支払われている

・場所は世田谷区梅ヶ丘駅徒歩10分圏内を想定

<賃貸料合計>

・賃料本体:292,000円(合計約90㎡、1Fと地下1F)

・共益費:59,000円(セキュリティ費用・通信費按分含む)

・水道光熱費:31,500円

・駐車場代:60,000円

・合計:442,500円

高々90㎡の事務所賃料が月44万円以上とはずいぶん高いと思ったものの、こう説明されるとなんだか妥当なようにも見えます。

ただ、報道などで度々舛添氏の自宅兼事務所が映されますが、一般的なRC造りの低層住宅であり、平成2年取得時に中古であったことを考えると築年数は少なくとも25年以上であるはずです。

横浜の会計事務所が相場の事務所賃料3,500円/㎡から算出したとのことですが、元々、ワンルームマンションであったということですし、映像を見ても居住用物件を事務所用に使用していることから考えて梅ヶ丘駅周辺の築25年程度の低層のマンションと比べるべきではないかと。

そうすると、こんな感じなのかなと。

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(出典:SUUMO)

これを新党改革が1F、グローバルネットワークが地下1Fを借りていたということのようです。

かなりザックリですが一部屋11万円☓2=220,000円が相場賃料なのでしょうか。

それが292,000円ですから30%くらい高い。

事務所といえば事務所ですし、220,000円もザックリしたものなので、ギリギリ許容範囲なんでしょうかね。

ただ、共益費が賃料の約20%とはかなり高いです。物件の構造からしてせいぜい月額賃料の5-10%程度が相場だと思います。この物件も5%以下ですから。

セキュリティ費用等を入れたという注釈が”頑張っている”感じを出しています。

駐車場も一台30,000円は、駅前のものを持ってきていると思います。

実際に賃貸するより2-3割は高いと思いますがこちらもギリギリ許容範囲といったところでしょうか。

そうはいっても結局「本当にこの値段で第三者に貸して借り手が着くか」というと大いに疑問もあるし、大家としてはかなり利回りの高い不動産投資かと思われます。

なので、なんだかズルい気もしますが、うまく分解して”脇によけた”ことでなんとか金額の整合性は付いているのではないかと。

もし、この金額を社長の個人所有物件の賃料として会社からもらっていたとしたら、税務調査で税務署は疑義は持ちながらも否認するのは難しいレベルかと思います。

おそらく顧問税理士が「ストライクゾーン高め一杯一杯の金額を出してくれ」と言われて算出したものなのでしょう。

ここから学べることは、

同族間取引についてできるだけ高い金額を設定したいのであれば、一括いくらではなく、可能な限り細かく内容を分解してそれぞれ”高め一杯”の金額を積み上げていく

・相場の比較がしやすい”本体”の金額の単価を引き下げるために、”周辺費用”の金額を高めに設定したほうがよい

ということでしょう。

家族宿泊費の適否の判断基準は妥当、でも事実認定は大甘

社長が出張に事業と関係のない家族を連れて行っても、その宿泊費は損金にはならず、原則社長への賞与とされます。というかその出張自体が私的旅行とみなされかねません。

一応、「国際会議に配偶者同伴で参加しなくてはいけない場合や、配偶者が通訳で社員に他に適任者がいない場合には配偶者同伴してもその宿泊費等は損金算入可能」とされていますが、実際に見たことはないです。

ただ、政治家の場合、家族全体で式典などに参加することもあるでしょう。

ですから、出張の主目的が政治活動であり、かつ、家族がそこに関与することに必然性があるのであればその費用を政治資金から支出するのはギリギリOKでしょう。

今回の調査報告書でも疑義のある宿泊費について概ね「出張の主目的が政治活動のものは政治資金から支出するのが妥当、家族旅行が主目的で合間に会議をしたものは政治資金から支出するのは妥当ではない」としているようです。

この「出張の主目的が仕事なのか、プライベートなのか」という判断基準自体は合理性があると思いますし、税法でも「渡航全体に占める仕事の割合によってどれだけ損金になるのか」が詳細に規定されているのです。

海外渡航時に視察のついでに観光をしたらどこまで損金になるのか?

ただ、福岡に野球を見に行くのに家族を連れて行ったのを「政治家にとって支援者と家族ぐるみの交流をすることは意味がある」というのは、家族が参加する必然性としては弱すぎでしょう。

今回の調査報告書で政治資金から支出するのは不適切と是正を求めたものは、「中立で厳しい第三者の目」を持ってしても、「実態は家族旅行が主目的とせざるを得なかった」ものであり、少しでも理由が付きさえすれば政治活動とする事実認定はかなりの大甘だったと予想されます。

この件から改めて学ぶことは

・家族旅行を損金で落とすとカッコ悪い言い訳をすることになる

・本当に出張でも家族を同伴すると色眼鏡で見られるので家族分は切り分けておく

ということかなと思います。

趣味的な支出についての説明は無理筋

一方で、「資料代」とされたものに「クレヨンしんちゃん」や「ひっかけクイズ」といった子ども向けの本が含まれていたのを舛添都知事は「児童の保護者から、子供が悪い言葉遣いをまねたり、テレビのクイズ番組などを見て勉強しないので困るので、政治の力でなんとかなりませんかとの陳情を受けたことから、実際にコミック等でどのような表現がなされているのか、また、クイズ番組が教育に役立たないものなのかを確認するために購入」と説明したとのこと。

さすがにこれには「第三者の目」も「家族のために購入したものとみられてもやむを得ないことなどを考慮すれば政治資金を用いてこれらの図書を購入したことが適切であったとは言い難い」と言っています。

「ピザづくり」や「そば打ち」の本について、舛添都知事は「ピザ釜でピザを焼いて支援者らに振る舞いながら支援者らから政治課題などについて意見を聞いたこともあるし、政治家のそば打ち仲間とそばを打ちながら政治談義などをしたこともあり、これらは実際に政治活動に役立っている」と説明しています。

これをなぜか「第三者の目」は「政治資金を用いてこれらの本を購入したことが不適切とまでは言えないものの、このような本の購入に政治資金を支出することは避けるべきであったと言わざるを得ない。」とまるで渋々「これは無理ですね」と言っているかのよう。

罰則のある政治資金収支報告書の虚偽記載が疑われている「ホテル三日月」という”本丸”を守るために、「たいして痛くもないのでこれは認めておきましょう」というまさに税務調査での顧問税理士の対応のようです。

極めつけは、中国のおみやげ店でシルクの男性用中国服2着を購入したのを「第三者の目」が「舛添氏の書は政治活動に役立っている」と先に断じた上で、舛添氏の「書道の際に着用すると筆をスムーズに滑らせることができるためである」という説明に「第三者の目」が「その説明は具体的で説得力のあるものであった。」とお茶を吹き出しそうなことを言っています。

税務調査でこんな屁理屈をこねる社長に税理士も「そうだ、そうだ」と同調すれば、おそらく、調査官の正義感に火をつけてしまい、より厳しい調査がされると思います。

そもそも、今回の舛添氏の問題の発端は、「海外出張でのファーストクラスやスイートルーム利用はいかがなものか」という批判に対して、「何を言ってるんだ。私はトップリーダーだから高すぎるわけがない。これからも改めるつもりなどない」と報道陣に居丈高に言い切ったことでしょう。

結果的に、マスコミが「仕事をする気になってしまい」、本来見過ごされてきていた過去の政治資金の使い方などを改めて精査することで次々と問題が発覚していったのです。

正直、今回の私的流用は、中小企業の社長さんであれば、よく見るレベルの公私混同の話ではあります。

新党改革が”舛添商店”という「中小企業」だったのでしょう。

もちろん、汗をかいてもらった役務提供の対価と何ら対価もないのに強制的に徴収された税金の使いみちでは意味が全く違うと思いますが、ここまで問題になったのは、他者からの指摘に対する最初の踏み出しを大きく間違えたのではないかと。

実際に税務調査でも血気盛んな若手税理士が同じようなミスを犯すことも少なくありません。

つまりここから学べることは、

・税務調査を闘争のように捉えて、いきなり相手に居丈高な振る舞いをしない

・公私混同について発覚したら、相手の正義感を刺激するような噓や言い訳は慎む

ということ。

淡々粛々と仕事をこなしたい公務員にわざわざ仕事をする気にさせることはないのです。

<参考>舛添都知事の調査報告書全文を公開します(おときた駿)

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