連帯保証は相続されるの?相続税の債務控除の対象となるの?

連帯保証するのは自分が借金するのと同じこと

保証人と連帯保証人は異なります。

保証人は、借金をした主たる債務者がその借金を返せない時に代わって借金を返済する義務を負います。

一方、連帯保証人には、保証人には認められている「まずは本人に請求してよ」という権利(催告の抗弁権)と「まずは本人の財産から払わせろ」という権利(検索の抗弁権)がありません。

そのため、主たる債務者の財政状況に関わりなく、債権者から借金を返せと請求をされることになります。

つまり、連帯保証をするということは、実質的に自分が借金をするのと同じことなのです。

では、この連帯保証は、遺産相続により遺族に相続されるものなのでしょうか?

あるいは、債務として相続税の計算上、遺産の総額から差し引くことができるものなのでしょうか?

今回は、連帯保証の遺産相続及び相続税法の取り扱いについてまとめてみようと思います。

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連帯保証も遺族に相続される

結論から申し上げますと、連帯保証は「法定相続分」で遺族に相続されることになります

中小企業のオーナー社長は、金融機関からの会社の借り入れについて、ほとんどの場合、連帯保証をしているはずです。

そのままですと、その連帯保証は遺族にそれぞれの法定相続分に従い相続されてしまいます。

その会社を承継する人は連帯保証を背負うことに納得はしていても、事業を相続しない他の相続人はリスクだけを背負わされるので納得しづらいもの。

ですから、遺産相続時には、金融機関に申し出て、連帯保証人を後継者に差し替えたり、一旦融資を返済した上で新たに後継者を連帯保証人とする融資を受けるなどという手続きをするのです。

第三者の連帯保証は遺族にとって見えない”不発弾”に

自分が経営する会社に関する銀行からの借入についての連帯保証であればわかりやすいのですが、厄介なのは第三者の借金の連帯保証人となっている場合です。

これらは、連帯保証をしたという資料が全く手許にないこともあり、遺族にとってはある日突然に借金を負わされるかもしれないという”不発弾”を抱え込むようなことになるのです。

では、そのような見えない連帯保証のリスクを遺族が回避するにはどうしたら良いのでしょうか?

遺産相続には、すべての財産と債務を相続する「単純承認」とプラスの財産の範囲内で債務を相続する「限定承認」、全く財産も債務も相続しない「相続放棄」があり、相続開始を知った日から3ヶ月以内に自ら選択をすることができます。

ですから、見えない連帯保証のリスクが懸念される場合には、相続放棄をするということでそのリスクを回避できるのです。

もちろん、相続放棄をしたら、プラスの財産も相続できません。一度した相続放棄を取り消すこともできません。

ですから「とりあえず相続放棄をしておき、何も問題がなければやっぱり相続をする」ということはできないのです。

また、遺産相続について注意しなくてはならないことがあります。

それは、相続開始を知った時から3ヶ月経過しても何もしなかったり、亡くなった人(被相続人)の財産を相続人が1円でも使ってしまうと、その時点で単純承認をしたものとして、すべての財産と債務を相続することになるということです。

これを「法定単純承認」といいます。

ほとんどあったことのない身寄りの無い親戚が死んで、降って湧いたかのように遺産を相続し、調子に乗ってそのお金を使ってみたら、もらった遺産の数倍の連帯保証を負わされたなどということも起こりえるので、決していいことばかりではないということを覚えておきましょう。

連帯保証しただけでは債務控除の対象にならない

相続税の対象となる課税遺産総額はプラスの財産の額からマイナスの債務の額を差し引いたものですが、差し引くことのできる債務は相続の時点で確実なものでなくてはなりません。

連帯保証人はいつでも債権者から返済を求められる実質的に主たる債務者と同じ立場なのですが、あくまでも連帯保証人にとって確実な債務ではありません。

つまり、連帯保証については、相続税の計算上、債務として控除ができないということです。

では、もし、主たる債務者が資力を喪失し破産状態になり、連帯保証人が生前に債務者から返済を求められていたらどうでしょう?

法律上、仮に債権者から返済を求められ代わりに返済をしたとしても、その金額を「あなたのために立替えて支払ったのだから」と主たる債務者に請求できる権利(求償権といいます)があります。

そのために連帯保証は、連帯保証人にとって確実な債務とはならないのです。

しかし、主たる債務者が破産状態であれば、回収することはまず無理です。

そんな状態でも、連帯保証は債務控除できないというのはあまりにも酷です。

そのため、主たる債務者が被相続人の相続発生前に既に資力を喪失しており、連帯保証人が代わりに返済せざるを得ない状況であれば、主たる債務者が弁済不能であると見込まれる金額について、連帯保証人の相続税の計算上、債務として控除ができるのです。

保証債務の債務控除(タックスアンサー)

ただし、相続発生後に主たる債務者が資力を喪失したとしても、遡って連帯保証人の相続税の計算上、その弁済すべき金額を債務として控除することはできません。

つまり、遺族は、相続税を支払った上で、忘れた頃に多額の連帯保証分の返済を迫られるという、まさに「泣きっ面に蜂」となることもあるわけです。

オーナー経営者は、自分の会社の借入について連帯保証をすることはやむを得ないとは思います。

しかし、他人の借入の連帯保証をするということは、自分だけの問題では済まず自分が死んでから遺族に多大な負担を強いることもあるということを理解しなくてはならないのです。

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