投資信託の運用成績のブレ幅を予測するー平均リターンと標準偏差
リスクは失敗する可能性の高さではなく不確かさ
一般的に「リスクが高い」というと主に「失敗する可能性が高い」という意味で用いられます。
しかし、ファイナンスでいう「リスク」は危険度ではなく「結果の不確かさ」のことなのです。
つまり、結果が予想できないものほど「リスクが高い」ということになります。
この結果の「ブレ幅」が大きいほど、結果を予測し投資をする人にとってみれば厄介なものであり、どこまで損失が生じるのかがわからないということでは、なかなか投資をする気にはならないでしょう。
ただ、投資信託あれば、投資をした時に最悪どのくらいまでの損失を見込めば良いのかはある程度予測できるようになっています。
そこで、今回は、投資信託の投資結果のブレ幅はどのようにすれば予測できるのかを見ることにします。
標準偏差とは結果のブレ幅のこと
5人の生徒の成績が「10点、20点、30点、40点、50点」のときと「5人とも30点」のときでは、平均点は同じ30点です。
前者と後者では、前者のほうが得点のバラツキが大きいです。このデータのバラツキの大きさを表すものを「標準偏差」といいます。
つまり、バラツキの大きいものほど標準偏差は大きくなり、その結果の予測は不確かなものになるわけです。
多くの事象は、平均付近の出現率が一番高く、その平均から離れるに連れて徐々に出現確率が「左右対称」に低くなり、出現した数をグラフで表すと左右対称の「釣鐘型」になります。
このような普遍的なデータのバラツキを「正規分布」といいます。
この正規分布の標準偏差は、まずは出現したデータの平均値を求め、そこからそれぞれのデータと平均値との差(偏差)を求めます。さらに、この偏差をそれぞれ2乗して合計した値をデータの数で割った平方根で表すのです。
標準偏差=(偏差^2の合計/データ数)の平方根
ただ、なぜそうなるのかはとりあえず置いておきましょう。
ポイントは、正規分布では
・平均からプラスマイナス標準偏差の間に結果が収まる確率は約68%
・平均からプラスマイナス標準偏差の2倍の間に結果が収まる確率は約95%
・平均からプラスマイナス標準偏差の3倍の間に結果が収まる確率は約99.7%
となるということです。
投資信託の平均リターンと標準偏差
つまり、平均と標準偏差がわかれば、概ね68%の確率で生じる結果のブレ幅と概ね95%の確率で生じる結果のブレ幅は予測がつきます。
例えば、年ごとの運用成績について、過去の平均リターンが5%で、標準偏差が15%であった投資信託があったとしましょう。
過去の実績から未来の成果を予測するならば
・+20%(5%+15%)〜−10%(5%-15%)の幅に収まる確率が約68%
・+35%(5%+15%☓2)〜-25%(5%-15%☓2)の幅に収まる確率が約95%
になるだろうということ。
これを見て「まあ悪くても元本の10%割れで、最悪でも元本の25%割れ、それ以上損失が膨らむのは35%以上儲かることと合わせても5%くらいの確率で、その不確かさを受け入れれば5%のリターンは見込める」などということがある程度予測ができるでしょう。
投資信託の標準偏差を知るには?
では、投資信託の標準偏差や平均リターンはどこに書いてあるのでしょうか?
一つは、投資信託の格付け評価や経済情報を発信している「モーニングスター」というところで主要な投資信託について過去のリターンや標準偏差を公開しています。
同じような平均リターンであっても、標準偏差が小さいほうが運用成績のブレ幅は小さく、標準偏差が大きい方が運用成績のブレ幅は大きいということ。
一般的には、株式投資信託よりも公社債投資信託のほうが標準偏差は小さく、同じ国内対象の株式投資信託でも大型株中心のものより小型株中心のものほうが、標準偏差は大きくなりがちです。
このデータを見れば、「最悪どのくらいまでの元本割れを覚悟すれば、どのくらいのリターンが期待できるのか」という目安を知ることができ、自分のリスク許容度と照らし合わせながら投資する金融商品を選択することができるようになるでしょう。
もちろん、あくまでも過去の実績からの未来の予測ですし、そもそも投資の成果が正規分布のとおりだというのも仮説に過ぎず、それ以上のブレ幅になることもないわけではありません。
ただ、どのくらいの確率でどのくらいのブレ幅の結果で収まるかを知っておくことは、過度にリスクを恐れたり逆に過信することなく、リスクを正しく意識する上で有意義なことなのです。
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