税理士によるセミナーでウケるテーマ・ウケないテーマからみる税理士が社長から求められていること

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社長は税理士に何を求めているのか

中小企業の「全体最適による安定成長」を支援する私の場合、税務のみならず、その施策が企業経営にどんな影響を与えるのかを考えながらアドバイスをさせていただくため、税務以外のことも知識習得し、それをセミナーや書籍、そしてこのブログなどを通じてお話してきたつもりです。

当然、それらには「社長にウケるテーマとウケないテーマ」があります。

そこで今回は、それらを見ることで「税理士は社長から何を求められているのか」について考えてみようと思います。

というか、この記事自体、ウケ狙いです。

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社長にウケるテーマベスト3

今まで実施してきたセミナーや勉強会の集客状況やその後の顧問契約へのつながりなどのリアクションから社長のウケが良いなと感じるテーマは次のとおりです。

第一位:節税

「こうすれば簡単に税金が安くなる」

ブログでもこのテーマで書いたものが最もアクセスが多く、セミナーの集客も良好。セミナー後に顧問契約につながることも多いです。

要するに節税が最も社長にウケがいい。なんやかんや言って結局、社長が税理士に求めていることって「なんとか税金を安くしてくれ」ということなのでしょう。

ただ、うちの場合、若かりし頃にやってきたことの反動で「巷で言われる節税商品なんて単に税金の支払期限を遅らせるだけの効果しかないか、税制改正のリスクの高いものばっかり」なんて否定的なことを述べながらの提案なので、生命保険会社や不動産会社とのジョイント依頼は全くありません。

そりゃそうですよね。

やったほうがよい節税とやってはいけない節税を見分けるたったひとつの基準

第二位:税務調査対応

「節税」と並びほとんど同率一位と言ってもよいのが税務調査対応。これもブログのアクセスは多いし、セミナーをやった後に顧問契約につながることが最も多いテーマだといえます。

豪放磊落で鳴らした人でも、税務調査前は飯も喉を通らないなどというほど、社長は、税務調査というものに不安を抱えながら身構えています。

実際は、売上除外や架空経費の計上をしていなければ、単なるルーティンワークでそれほど恐れるものではないのですが、やはり社長は税理士に「なんとか税務調査を乗り切ってほしい」ということを求めているようです。

「税務調査に強い」というのは、同じ調査で比較されることがないので「言ったもの勝ち」な面もありますが、うちの場合は、税務調査の結果だけを見るのではなく、申告段階から税務調査までをトータルでみてどんな成果になったか、確率論や期待値までを考えた話をするようにしております。

はじめての税務調査ーこれで安心、実地調査の事前準備と当日の対応

第三位:金融機関対応

具体的な融資商品解説は実はあんまりウケない。それなのに、なぜか「銀行はどんな行動原理で動いているのか?どう付き合えば良いのか?」という話は、かなりウケます。

税務署同様、銀行に対してもどう対峙すればよいのかわからないと社長が身構えているのでしょう。

金融機関対応については、やたらと銀行を敵対視して「できるだけ融資を受けるな」という話や、やたらと銀行との円満な取引を願うよう「できるだけ気に入られよう」という話が多い中、うちは「銀行はお金の仕入先」みたいなものだから、仕入先と同じように競合と安定供給を図りながらフェアに付き合えばいいというスタンスでの話をしています。

こうすれば「金利交渉は有利になる」みたいな銀行に都合の悪い話もバンバン書いているのに、なぜか銀行自体からのオファーの多いテーマでもあります。まあ、そのときは当然、そういう話はしませんけどね。

銀行が嫌う5つの勘定科目

その他のウケの良いテーマ

これ以外でウケが良かったのは、誰も聞かないだろうと思った「コーポレート・ファイナンス」。企業価値の算出方法やオーナー社長は、経営者目線でしか見ていないが実は同時に投資家目線でみると融資と自己資金の意味も大きく変わるという話には、予想外に多くの方にご参加いただきました。

なぜ無借金経営よりも借金をしたほうが会社の価値は上がるのか?

それと、これも一体誰が聞くんだろうと不安を感じながらやってみた「経済性工学」。「会計的な利益計算ではわからない意思決定的な損得計算」という、通常税理士が語ることのない個人的に好きな視点での話ですが、なぜか大きな会場が満席御礼になる大盛況でした。

まともに損得計算できずにカモにされ金をドブに捨てないために社長が学んでおきたい3つの知識

あとは、「Excelでの財務モデル作成」や「Excelパワポ活用術」「iPhoneやクラウド活用術」「マニュアル・チェックリスト化」のような具体的な生産性向上の仕事術・時間術は参加者が幅広くウケが良いテーマだと言えるでしょう。それとなぜか勉強会一発目にやってみた「話し方」は評判が良かったです。

尊敬される話し方バカにされる話し方

ただし、ここから顧問契約へのリアクションは全く期待できないですけどね。

社長にウケないテーマワースト3

逆にやってみたものの集客に苦労したり、その後の反響もないテーマは次のとおりです。

第三位:決算書の読み方

自社の業績を判断するために決算書のここだけを見れば良いというポイントや財務分析手法、意思決定に活かす管理会計などについては、あんまりウケません。

外でこのテーマで話しても「勉強になりました」と言われることはあっても、顧問契約につながることはないですね。

実際、顧問契約当初に「うちの決算書を見てドンドン問題点を指摘してくれ」などと言われて本当に毎回問題点を指摘していると大体三回目くらいから社長が来なくなって経理担当者しか会ってくれなくなりますから。

代わりに銀行や税務署がどんな視点で決算書を見ているのかという話は大いにウケます。

決算書をチェックする銀行の目と税務署の目はどこが違うのか

第二位:相続税・事業承継

相続税や事業承継については、訴求しないのではなく、実際に対象となる人が少ないということ。興味のある人にとっては、切迫感もあり、強く訴求します。

なので、うちのような顧問先限定ではなじまず、大きな商圏で集めるのに向いたテーマなのでしょう。

相続税については、相続税法改正で注目は集まっていますが、実際には適用対象者が全体の6%という特殊な人向けの話であることは変わりがありません。

無料税務相談の当番で今まで100件以上個別相談に乗ってきて、その95%が相続税の相談でしたが、実際に納税義務のあった人は一人もいませんでしたから。

一方で、遺産相続については、誰でも関心があり、このブログの中でダントツにアクセス数が多いのも、相続時の手続きについてまとめたこの記事です。

【保存版】家族が亡くなった時に遺族がやるべき手続きガイド

ちなみに、遺産相続は、雑誌などの執筆依頼も多いものの、なぜか本にすると売れないというテーマでもあります。

税理士吉澤大のよくわかる遺産相続対策コラム(オリックス銀行)

「タダなら聞きたいが、わざわざお金を払うのなら嫌」というテーマなのでしょうかね。

第一位:経営計画

数あるテーマの中でダントツにウケが悪いのがこれ。集客しても集まらず、その後の反響もない。

そのまま「経営計画」がテーマだというと参加者が集まらないので、財務モデルの作り方の勉強会の中にそっと忍ばせました。大事なことなので。

本当の目標利益達成売上高を計算する5つのステップー生きた利益計画に必要なもの

経営計画を作りたいという話を頂くことはあっても、実際に作成をしてその計画書をベンチマークにして経営に役立てるという話は極めて少ないです。

もちろん、私にそうしてもらえるような力量がないだけのことですが、経営計画が中小企業経営者に響くかと言われるとそう言う人は全体から見るとごく少数だといえます。

その他のウケないテーマ

これ以外だと「片付け」はあまりウケませんでした。それと「経費削減」は見向きもされません。特に「家計簿つけて節約」なんていうのは、やる気もないし社長には全くの論外です。そんなことをいう「ケチ税理士」なんているのでしょうか。いや、いないでしょう。

1行家計簿:天野伴

社長が税理士に求めているのは用心棒としての交渉力

こうやってウケるテーマ、ウケないテーマを見ていくと、要するに、社長が税理士に求めている役割とは、自分ひとりでは不安な相手に対峙する「用心棒」なんだなということが伺えます。

会計処理や税務申告はドンドン自動化されていくようになりますが、お客様の「不安と不満を解消する交渉力」という部分は経験値がものをいう属人的なスキルとしてより重要になっていくのでしょう。

要するに、用心棒の御用命は、信頼と実績の吉澤税務会計事務所までってことですね。

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