事業開始初年度から多額の課税売上が上がるけどできるだけ免税期間を長くしたいのなら

事業開始から第二期までは消費税の納税義務がないのが原則だけど

消費税の納税義務の有無は、課税事業年度ではなく、課税事業年度の二期間前である「基準期間」の課税売上高で判断をすることになります。

そのため、法人を設立したり個人事業を開始したりしてから二期間は基準期間がないので消費税の納税義務がないのが原則です。

しかし、事業開始初年度に多額の売上高がある場合には、その翌期から消費税の納税義務が生じることがあります。

そこで今回は、事業開始当初から多額の売上高があっても、可能な限り消費税の免税期間を伸ばすにはどうしたら良いのかについて検討してみようと思います。

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基準期間がない法人の納税義務免除の特例

基準期間(二期間前)の課税売上高が1000万円以下であれば、その課税期間の消費税の納税義務はありません。

しかし、平成25年1月1日以後に開始する年又は事業年度については、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても「特定期間」における課税売上高が1,000万円を超えた場合、その翌期から課税事業者となります。

この特定期間とは、個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。

つまり、事業年度開始から前半6ヶ月の課税売上高が1000万円を越えるような場合には、もう翌期から消費税の納税義務が生じるのです。

ただし、この「課税売上高が1000万円を越える」という基準ですが、課税売上高の代わりに「給与等支払額の合計額」により判定をすることも「できます」。

要するに、特定期間(前半6ヶ月間)の「課税売上高」「給与等支払額の合計額」がともに1000万円を超えた場合には、その翌期から強制的に消費税の納税義務が生じるということです。

基準期間がない法人の納税義務の免除の特例(タックスアンサー)

特定期間の給与等支払額を調整する

可能な限り消費税の免税期間を長くしたいのに、第二期から消費税の納税義務が生じてしまうことは出来れば避けたい。

そんなときはどうすればよいのでしょうか?

まずは「特定期間の給与等支払額の合計額を調整する」ことを検討します。

相手があることなので、課税売上高を調整するようなことはできません。

しかし、給与支給額のうち自身の役員報酬についてはある程度調整ができるでしょう。

その一つ目の調整方法は「役員報酬の支払時開始時期を遅らせる」ということです。

役員報酬を法人の損金とするためには、毎月定時同額とし、事業年度開始の日から3ヶ月以内にその金額を定めなくてはならないことになっています。

それであれば、役員報酬決定時期をギリギリ事業開始の日から3ヶ月以内とし、最初の役員報酬の支給を遅らせることで、特定期間の給与等支払額の合計額が1000万円以下になるようにすることを考えます

なお、「給与等支払額の合計額」には、給与や賞与のほか、役員報酬も含まれますが、所得税が非課税とされる通勤手当や旅費等は含まれません。

ただし、事業開始初年度から多額の課税売上高の計上が見込まれているとなると、利益も相当な額になるため、ある程度役員報酬を早期から損金として計上しないと法人・個人を通じた税負担が大きくなることも予想されます。

その場合には、二つ目の調整方法として、「役員報酬額を早期から損金算入するものの支払時期を遅らせる」ということを考えます。

というのも、給与等支払額は「支払った給与、賞与等」ですから、未払の給与や賞与は含まれません。給与等が未払の場合には、実際に払った時の給与等支払額に含まれます。

つまり、役員報酬額を特定期間内は未払いとしておくことで給与等支払額の合計額を1000万円以下することができる

このように、仮に事業開始初年度の特定期間の課税売上高が1000万円を超えてしまうにしても、自分ひとりしかいないような会社であれば、役員報酬額の支給開始時期や支給日を調整することで、第二期の消費税の納税義務を生じないようにする余地はあるということです。

その上で、設立日の属する月から12ヶ月後を決算期とすれば、ほぼ丸2年間消費税の納税義務が免除されることになるでしょう。

設立事業年度の期間を7ヶ月にする

給与が自分の役員報酬だけであれば、特定期間内は未払いとすることで、特定期間内の給与等支払額の合計額を抑えることは可能です。

しかし、従業員の給与だけで特定期間の給与等支払額の合計額が1000万円を超えてしまうのであれば、調整は難しいでしょう。

その場合には、事業開始最初の事業年度を7ヶ月とします。

というのは、事業年度が7ヶ月以下の場合には、当初の6ヶ月は特定期間に該当しないというルールがあるからです。

つまり、第一期の事業年度が7ヶ月以下の場合、特定期間の課税売上高による判定の必要はなくなり、第二期は免税事業者となります。

ですから、従業員の給与だけで特定期間の給与等支払額の合計額が1000万円を超えてしまう場合には、第一期を「7ヶ月ちょうど」にすることで、最大1年7ヶ月間消費税を免税とすることができるのです。

なお、7ヶ月を数日でも超えてしまうと特定期間の判定が必要となるので注意しましょう。

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