社員と本当に共有すべき数字とは?|社員に決算書を見せる前に社長が自分にすべき6つの質問

オープンブック・マネジメントには相当の覚悟が必要

社員全員に決算書を公開することで、従業員一人一人が数字に責任を持ち、経営者の感覚で仕事をするようになるーなんとも理想的なことではあります。

私は、この社員に決算書を公開する「オープンブック・マネジメント」という考え方は思ったよりもハードルが高い手法だと考えています。

少なくとも、オーナー中小企業では導入に際して相当慎重な検討が必要ではないかと。

そこで、今回は「社長が決算書を社員に公開する前に自分にすべき6つの質問」と「本当に社員と共有すべき数字とは?」という話をしていくことにします。

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決算書を見せても経営者感覚で仕事などしない

社長の中には、社員に経営者の感覚で仕事をして欲しいと願う人は多いものです。

そのための手法として、決算書を社員に公開したいと。

理念としては、良いとは思うし、その努力をしている社長を否定しようというわけではありません。

しかし、思ったとおりには行かないことの方が多いというのが実感です。

だって、考えてみてください。

社長であるあなたも、以前はどこかの従業員だったはず。

その時に、会社の決算書を見せられたからといって経営者の感覚で仕事をしていたでしょうか?

少なくとも、私には全くそういう考えはなかったです。

逆に、もし、本当に決算書の数字を共有できて「しまう」と、厄介なこともあります。

特に「利益の◯◯%を社員に還元する」というルールを定めると、社長が「将来のために新事業でチャレンジをするので、今期の利益から多額の投資をしたい」といっても、その利益をすぐに還元してほしい社員との間で利害が競合してしまうことにもなります。

社員からすれば「俺達の金で社長は何をやっているんだ」ということです。

オーナー社長と社員では「利益に対する時間軸」はかなり違うものなのです。

ですから、社長が社員に決算書を公開して一体感を得たり経営者の感覚で仕事をしてほしいのであれば、その前に次の6つの質問を自分にしてみてください。

・公私混同は全面的に禁止となるが大丈夫?

・節税や利益調整は一切行えなくなるがその覚悟は?

・厳格で迅速な経理処理を徹底する必要があるがその体制は?

・利益から各人の給与額を算出する基準をきちんと決める腹づもりはあるの?

・利益の使い道についての合理的なルールの策定とその意味を社員に丁寧に啓蒙する気持ちは?

・一度公開した決算書を非公開にすると不信感を買うがそんな心配は無い?

この6つの質問をしてみて「大丈夫、絶対にやり遂げる」と明確に言える社長はオープンブック・マネジメントを導入すればよいでしょう。

そこまでの覚悟がなく、「なんか、自分一人が頑張っているようだ。従業員にも自分と同じ感覚で仕事をして欲しい」という願望だけで、社員に決算書の数字をみせてもあまり効果はないか、上手くいっても副作用のほうが大きいのではないかなと。

決算書の数字よりもまずは社員と共有すべき数字があるのでは?

では、なぜ、社員は自分の会社の決算書を見せられてもピンと来ないのでしょうか?

一番大きな原因は、その数字を自分でコントロールができないということだろうと思います。

例えば、「粗利益率を高めろ」と言われても自分で値決めを出来るわけでもないし、「家賃や支払利息が高い」と言われても社員にはどうしようもないでしょう。

要するに、自分が努力のしようもないものを目標にされても人は努力などしない。

だから、社員が目標として把握すべき数字は、自分たちの努力が及ぶものにする必要があるのです。

会社の業績に影響を与えるもので、社員の努力が及ぶのは、大抵は売上高か生産性に関わるものでしょう。

社員と共有するのであれば、まずはそれらの数字に絞っておいたほうが良さそうです。

会社があるべき姿に近づくためには、

・まずは全社的な目標を定め、

・その目標を実現するための手段を策定し、

・その手段がどれだけ実施されどれだけ効果を上げているかを測定するための指標を設定

することが必要です。

この成果を表す指標をKGI(Key Goal Indicator)、そのために必要な行動の実施量を表す指標をKPI(Key Performance Indicator)などということもあります。

例えば、

店舗型小売店であれば

・坪効率=月商÷坪数

・一人あたり売上高=月商÷従業員数

受注型製造業であれば

・生産効率=製造数量÷製造時間

・不良発生率=不良品数÷総製造数

ホテル、飲食店であれば

・稼働率=収容実績÷収容能力

・客単価=売上高÷客数

などの数字を目標として、その達成状況を社員と共有します。

その上で、その数字を達成するために必要な行動量を計測し、その実施状況をモニタリングしたほうが、いきなり決算書をみせてグダグダと「経営者の感覚で仕事をしろ」と説教をするよりも結果的に目標には近づくのではないかと。

実際に、年商数十億円クラスの中堅企業の若手事業承継者向けにセミナーをやった時にも「決算書の数字の分析については、全く自分の事と捉えられなかったものが、これらの指標については、いつも自分たちが努力して意識しているので腑に落ちる」という評価でした。

将来、企業のトップになる若手事業承継者であっても、自社の決算書についてはそんな感覚でしかないのです。

それが、私のようなサボることばかり考えていた社員相手ならなおさらのことでは。

社員一丸となって目標達成に邁進する仕組みづくりは強い会社づくりに大切なことです。

ただ、それが単に決算書を公開することで成し遂げられるわけではありません。

その前にやるべき課題がたくさんあるのでは。

なんの体制づくりもなく、ただ決算書を公開して「経営者の感覚で仕事をせよ」なんて言ったところで、「だったら経営者と同じくらいの給与を払え」と言われるだけではないでしょうか。

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