経営セーフティ共済信者が絶対に言おうとしない本当の効果

取引先が倒産しても連鎖倒産を防ぐための保険が必要

得意先が倒産をした場合、自社の資金繰りには大きな影響を与えます。

あてにしていた売掛金の入金がなく手形が現金にならない上に、既に裏書や割引の依頼をしていた手形について買い戻しを求められ、さらに、今後その得意先からの売上もなくなってしまいます。

そのため、資金繰りは急激に厳しくになり、手持ちの資金だけでピンチを乗り切るのはむずかしく、最悪の場合には連鎖倒産ということにもなりかねません。そうならないよう、銀行に不足資金の融資を申し込むのですが、銀行としても連鎖倒産のリスクのある会社に対して、積極的に融資をしようとはまず思いません。

そのような状況を救う目的で中小企業基盤機構が運営をしている「経営セーフティ共済」というものがあります。

本来は連鎖倒産防止の為のこの制度が「節税になる」と紹介されることがあります。

今回は、巷で言われるこの経営セーフティ共済の節税効果とやらをじっくり考えてみたいと思います。

そもそも経営セーフティ共済ってどんなものなの?

経営セーフティ共済は月額最高20万円、合計で800万円まで掛けられます。

この共済に加入していると無担保で掛金合計額の10倍(上限は8000万円)まで借入ができます。

返済は融資金額により5-7年間の均等返済、無利息ですが、借入を利用すると融資金額の1/10の金額が積み立てた掛金から控除されてしまいます。

一定期間以上掛金を積んでいれば掛金以上のお金が戻ってくるはずなのにその戻ってくる金額が減額されるのですから、積み立てたお金から利息を支払っているのと同じです。

要するに、実際に得意先が倒産をして融資を受けた際に支払うべき利息をまだ借り入れもしていないのに利息を先払いしているようなものなのです。

この共済の本来の目的は、取引先が倒産した時にスピーディな融資を行うことで連鎖倒産を防ぐというこのです。

しかし、実際には意外と融資までの時間が掛かることが多いのです。

そのため、この共済による融資がされるまでの間、この経営セーフティ共済からの融資で返済することを条件に民間金融機関からつなぎ融資を受けることも多いのです。

連鎖倒産のリスクがあり、銀行が融資に躊躇するからという理由で出来た制度なのですが、そこはお役所仕事。

これでは、本末転倒のような気もしますが、連鎖倒産の危機にある会社でも無担保・無保証で銀行から融資の道が開けるのですから良しとしましょう。

セーフティ共済の節税効果は幻想である

この経営セーフティ共済の掛金は全額損金となります。

一方で、40ヶ月以上掛金を積んでから解約をしても掛金以上の解約手当金を受け取れます。

その点では、この共済での資金運用は利息のつかない定期積金のようでもあります。

しかし、定期積金と違い、その掛金は支払時に損金となります。

定期積金のようにお金を積みながら損金になるので、この「経営セーフティ共済は節税になる」という話になるわけです。

ですが、税務の鉄則として、「支出時に損金になったものは、入金時に益金になり、支出時に損金にならなかったものは、入金時には益金にはならない」というものがあります。

前者と後者はトータルの利益は一緒であり、税負担も変わりありません。なので、「支出時に損金になる」という部分だけをつまみ食いして、税負担が軽減されると思うのは誤りであるということです。

実際に、このセーフティ共済も、支払い時に損金になるということは、解約してお金が戻ってきた時には益金となり、利益に加算されて税金がかかります。

つまり、税金の支払い時期が現在から未来にズレるだけのことです。

ですから、税金額を軽減するという意味での「節税」効果はなく、あるのは、税金の支払期限を延期する「延べ税」効果だと言えます。

仮にこのセーフティ共済で税負担が軽減されるとすれば、支出時には、支出時には法人税の税率が高く、解約による入金時に税率が低いときだけです。

本来、法人税は実効税率約30%の一律課税ですが、中小企業者については、課税所得が800万円までの部分は実効税率が約20%と10-12%程度税率が低くなっています。

ですから、支出時には課税所得が800万円以上の利益をコンスタントに上げながら、解約するタイミングだけその解約返戻金を加えても課税所得が800万円以下であれば、法人税の節税効果は生じます。

ただし、セーフティ共済は部分解約ができないため、解約をした時点で解約返戻金全額が益金になるので、よほど本業で赤字が出ないと法人税の節税効果は生じません。

まあ、うまく言っても最大でも100万円なので、仮にそのようなことがタイミングよく発生したとしても、掛けたコストに見合うかというと大いに疑問があるのです。

節税の目的はいつでも自由に使えるお金を残すため

多くの経営者は「今期はなんとか利益が出たが来期以降はどうなるか全くわからない。」「だからこそ、将来の不測の事態に備えてできるだけ手許にお金を残しておきたい」と考えています。

そうであれば、節税は税金の額を減らすことが目的ではなく、将来のピンチやチャンスに備えてできるだけお金を残すという目的のためのひとつの手段であると言うことです。

それなのに40ヶ月以内で中途解約した場合には、解約返戻金が掛金を下回る元本割れのリスクを背負うことになります。

ですから、連鎖倒産リスクがないのであれば、セーフティ共済に加入するというのは、手許の資金を減らし資金を凍結させるだけで全く意味のないものになるということです。

いや4年後に予定されている大規模修繕のための資金を蓄えるのにこのセーフティ共済を活用しているという人もいます。

しかし、それも4年後に支払えば良いお金をあえて先払いするだけのことでありそれほど意味のあるものとは言えません。

生命保険での退職金準備と同じで、税引後の利益で積むのは大変という理屈も修繕費の税負担軽減分だけ積立金額を減らせば資金繰り上は定期積金で準備をしても同じです。

いつお金が必要になるのかわからない事業者は、ピンチにもチャンスにも即座に対応できるよう、無駄に資金を凍結して解約リスクを背負うことはよほど合理的な理由がない限り避けるべきです。

そう言うと4年後に経費が減るからいいのだとかいう特殊なケースを持ち出してきて正当化する人もいますが、だったら好きにすればいいとしか言いようがないです。

その上、累進課税が適用される個人事業主はもちろん、法人も課税所得が800万円以下には軽減税率が適用されるため、薄く必要経費になった掛金が解約したときには、まとめて収入になるので、節税どころか加入によって税金が増えてしまうこともあります。

税金が安くなるならまだしも、税金の支払期限を延期するだけのために、40ヶ月もの間、資金を拘束して元本割れのリスクを負うというのはやる価値あるのかなと。

「同じ金額が将来返ってくるなら損はしない。掛金が損金になるのはお得」というとではなく、節税対策は将来のピンチやチャンスに備えて手許の資金を厚くするために行うというのであれば、無意味に資金を固定化して使えなくすることは決して良い節税対策とは言えないのです。

どうしても、税金を払いたくないという気持ちが強く、とにかく目の前の税金を払わなくて済むならそれでいいと思いがちですが、冷静に節税の目的に立ち返る必要があるのです。

ただ、一方で、お金があると思うとあるだけ使っちゃう社長にとっては、将来必要なお金を確実に準備するのには、むしろ解約できないということに価値もあるでしょう。

まあ、それは節税効果でもなんでもないんですけどね。

なお、セーフティ共済については、解約手付金の範囲内での借り入れが可能です。要するに、利息さえ支払えば、資金の固定化リスクは回避できるということ。

1年更新の借入を毎年継続していけば、解約しない限り、入金時の課税をずーっと回避できるというものすごくスケールの小さいイーロン・マスクみたいな節税対策はできるといえばできますけどね。

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