家賃や顧問料など請求書や領収証の発行されない取引の消費税の仕入税額控除|インボイス制度変更を乗り切るための施策

家賃などでは領収証や請求書発行はされないことが多い

家賃などの支払いをする場合、契約書を締結した後は、毎月支払いをするだけで、毎月請求書が発行されることはないでしょう。

振込による入金であれば、領収証の発行も通常されません。

そうなると、この家賃の支払いについて請求書も領収証もないことになり、消費税の仕入税額控除の要件である「請求書等の保存」がされないことになります。

では、このような家賃や顧問料などの支払いについて、口座振込で決済がされている場合には、消費税の仕入税額控除がされないのでしょうか?

そこで、今回は、口座振込でも消費税の仕入税額控除が認められるための要件についてまとめてみることにします。

振込金受取書と契約書のセットで仕入税額控除を

消費税は、受け取った消費税額から支払った消費税額を差し引き消費税の納税額を計算します。

この差引く消費税額については、その取引の「日付、金額、相手先、内容」を帳簿や請求書等で明示されていることが必要です。

しかし、家賃のような支払いについては、賃貸契約書は締結するものの、毎月の請求書の発行も通常はされず、預金への振込については、領収証の発行もしないのが一般的です。

預金通帳の記載だけでは「日付、金額、相手先、内容」のすべてを表してはいないので、これでは消費税の仕入税額控除の要件を満たしていないのではないかという疑問も生じます。

それに対して国税庁は、質疑応答で次のように回答しています。

【回答要旨】

振込金受取書を建物賃貸借契約書とともに保存することで仕入税額控除の要件を満たしているものとして取り扱います。

なお、賃料に変更があった場合には、変更契約書も併せて保存するものとします。

(理由)

振込金受取書は課税仕入れを行った事業者が内容を記載して銀行が振込みの事実を証明した書類であり、消費税法第30条第9項第2号に規定する事項のうち「課税仕入れに係る資産又は役務の内容」は記載されていないものの、建物賃貸借契約書とともに保存することで同号の記載事項が網羅されることになります。

また、当該振込金受取書は課税仕入れの相手方に確認を受けたものではありませんが、その振込みの事実について銀行が確認したものです。

以上の点から、照会のような事情にある場合には、回答要旨のとおり取り扱っても差し支えないものと認められます。

賃料を口座振込により支払う場合仕入税額控除の適用要件|タックスアンサー

つまり、振込金受取書と賃貸契約書をセットにして、その取引の「日付、金額、相手方、内容」が確認できるのであれば、仕入税額控除の要件は満たすということです。

それであれば、税理士・弁護士などの顧問料などについても、振込金受取書と顧問契約書をセットにして、その取引の「日付」=振込金受取書、「金額、相手方、内容」=顧問契約書で、確認できるのであれば、両方を保存しておくことで、消費税の仕入税額控除ができると考えてよいでしょう。

なお、口座振替や自動送金手続きなどがされていたとしても、それらの申込書や預金通帳を加えれば上記の”4点セット”については、確認が可能なはずです。

インボイス制度変更後は契約書に必要事項の記載を

しかし、2023年10月以降は注意が必要です。

というのも、消費税の仕入税額控除について、従来の「帳簿等保存方式」から「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」への変更がなされるからです。

このインボイス制度で消費税の仕入税額控除をする場合には、次の6つの事項の記載されたインボイスの保存が必要となります。

①適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号

② 課税資産の譲渡等を行った年月日

③ 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容および軽減対象資産の譲渡等である旨

④ 課税資産の譲渡等の税抜価額または税込価額を税率ごとに区分して合計した金額および適用税率

⑤ 税率ごとに区分した消費税額等

⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

太字が、改正により追加すべき記載事項です。

インボイス制度でも、消費税の仕入税額控除に必要な記載事項は、一の書類のみですべてが記載されている必要はなく、複数の書類の合わせ技で記載事項を満たせば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになります。

つまり、①③④⑤⑥について、契約書に記載がされており、振込金受取書や預金通帳で②の取引年月日が確認できれば、毎月請求書や領収証が発行されなくても、消費税の仕入税額控除は可能ということです。

ですから、インボイス制度への変更後は、一定期間ごとにまとめて必要事項を記載した領収証発行か、契約書に登録番号や税率区分ごとの金額を追加記載するなどの対応が必要になるでしょう。

なお、インボイス制度導入以前に締結された賃貸契約や継続的な役務提供の契約書について、インボイス制度への変更を機会に、登録番号を記載した契約書を作成・締結し直さなくてはいけないわけではありません。

従来の契約書と一緒に登録番号を記載した書面を保存をすることで仕入税額控除の要件を満たすことが可能になります。

口座振替・口座振込の場合のインボイスへの対応~税理士の顧問料に係る仕入税額控除にも影響!|税務研究会

ということで、当事務所は、決算報酬を含めた毎月同額の顧問料を頂いておりますので、インボイス制度導入後は登録番号を記載した契約書を締結、インボイス制度導入前に締結した顧問契約については、登録番号を契記載した書面を送付いたします。

スポット以外の毎月の顧問料についての請求書発行は今後もいたしませんのでどうぞよろしくお願いいたします。

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