創業融資freeeで日本政策金融公庫の新創業融資の申請書を作成してみたらかなりよく出来てました
日本政策金融公庫の新創業融資制度の申請書作成
民間金融機関による無担保無保証人での新規創業者向け融資には極めて高いハードルがあります。
そのため、日本政策金融公庫は、「新創業融資制度」という新規開業やそれに準じた人への融資を実行しており、特にどうやっても新規開業で多額の設備投資を必要とする飲食業・美容業を中心に多くの方に利用されています。
その「新創業融資」の申請書は、本体については1ページしかなく、税理士からすれば「こんなものでいいのか」と思わなくもないですが、それでも、今まで「数字で事業を考えたことのない方」の中には、その申請書作成で手こずるという人もいるでしょう。
そんな中、クラウド会計freeeが「創業融資freee」という「新創業融資の申請書作成を支援する」アプリをfreeeユーザー以外にも一般公開しました。
そこで、今回は、「創業融資freee」を実際に試してみた使用感について話をしてみようと思います。
創業融資freeeへの入力手順
結論から言えば、この創業融資freeeは、ガイダンスに従い入力をするだけで、カンタンに新創業融資の申請書は作成できます。
さすがfreee。ユーザーインターフェイスの作りはとても良く出来ています。
具体的な入力項目は、まさに新創業融資の申請書のフォームに従ったものです。
さらに、便利なのは業種ごとにサンプルとなる記述がテンプレートとして用意されています。これなら文章を書くのが苦手な人でも大丈夫。
ただし、サンプル通りだと弾かれますよ。当たり前です、自分の言葉で書きましょう。
じゃあ、どれくらいサンプルを参考に修正を加えたら良いのか試してみました。
とりあえず勤続年数を10年から5年に直してみましょう。
バカにしてるのかと、さすがにこんなのでは弾くでしょう。
って、おい!これだけで通っちゃうのかよ。
まあ、いいです。志望動機ですから。
主な取扱商品やセールスのポイントについて見てみましょう。
これも業種ごとのサンプルがついていてわかりやすいです。
やっぱり、サンプル通りじゃ弾いてくれます。
大事な取扱商品やセールスポイントのところですからね。
これは、まずどう直そうかな。
とりあえず、語尾を「できます」に変えてみます。
ふざけてますね。
さすがにこれじゃ弾くでしょ。
おーい、それでいいのかーい。
ディープラーニングとやらで、すんごい判定しているのかと思ったら、単なる「ワープロ」なんですね。
そっか、一文字でも変えればいいんだ。
まあいい。あとは、取引先や従業員と既存の借入金の状況も入れると。
ここでやっと、売上高や経費、必要資金など資金計画部分に入ります。
ちゃんとどの時点で売上高を計上するかもわかりやすく解説されています。
会計処理とは異なりますが、創業当初の資金繰りを考える上では、この考え方は重要です。
そして、月別の売上高を入力していきます。一括で入力できるボタンがあるのがfreeeっぽいです。今回は、面倒なので、「まとめて入力」します。
申請書にもある計算根拠についてもサンプルがありますが、こちらもそのままでは弾く。でも一文字でも直せばOKモードです。
いいのかね、これで。
立ち上げに必要な資金や必要経費の計算については、それぞれの項目について、まずは必要かそうでないか◯×で回答した上で、必要ならば具体的な金額を入れていきます。
これはいいです。何にお金がかかるのかすらわからないという人が多い中、融資の相談員のサポートを受けているような手順です。
で、次が、いくら融資を受けたらいいのかという項目。
実は、これがわからないと言う人が多いのではないでしょうか。
だって、設備投資や家賃などの諸経費支払いの足りない金額がいくらなのかは、融資を受けた場合、その返済分も含め上で必要な融資額を判断しなくちゃいけません。
なので、この時点では計算できずひとまずペンディングが正解です。
と、ここまで入れたところで、計画通りの売上高と必要な立ち上げ費用や諸経費であった場合、資金繰りはどうなるのかが明示されます。
このときの赤字の部分は資金が足りない金額であり、最低でもこの金額の資金の準備が必要になるわけです。
なんか飽きちゃって、テキトーな数字を入れたのでこんなグラフになりましたが、実際には、もう少し出っ張り引っ込みがあり、途中で資金が足りなくなる場面も出てくるでしょう。
そして、これが重要。「一体いくら最低でも融資を受けるべきか」が判定されます。
要するに資金の赤字部分がどこにもない状態にするにはいくら融資を受ければいいのかということです。
このロジックは、融資になれた税理士であれば誰でもわかることですが、これから創業しようとする人にはなかなか理解できないところ。すごくわかりやすく説明されています。
次に、では、その資金を「どうやって調達するのか」を記載していきます。クラウドファウンディングなんてのもあるのが時代を反映しているのか、freeeがどんなユーザーに受けるのかがうっすらわかります。
新創業融資の自己資金の要件は「必要資金の1/10以上」ですが、「せめてこれくらいは」ということか、自己資金を100万円未満にすると弾いてくれます。
きちんと入力をすると、ちゃんと新創業融資の返済額も加味した資金繰りの状況を提示し直してくれます。
ところがこれじゃダメなんです。テキトーに数字を入れたので「調達する資金」の額と「必要となる資金」の額が合ってません。
融資というのは、「儲かってちゃんと返せればいくら借りたっていいじゃん」ということではないんです。
というのも、金融機関は、融資をする際には、「何で借金を返すのか」という「返済財源」と同じくらい「何に使うのか」という「資金使途」にも注視をします。
なぜなら、それが結果的に返済の可能性に大きな影響を与えるからです。
計画書に記載された事業のために使うお金であれば、返済可能性について正しい判断はできるものの、無駄使いや聞いていないリスクの高い投資に迂回して使うのであれば、返済可能性は低くなるからです。
銀行がどんな視点であなたの融資申込みを分析しているのか。融資を受ける上で絶対に知っておくべきロジックです。
売上高、支出のところに戻って設備投資に必要な金額を修正した後、もう一度入力内容を反映させたところ、資金収支のグラフも修正されていました。
これで完成です。
税理士のサポートも依頼できます。融資が実行された際には、融資額の3%の成功報酬が必要とのこと。もちろん、必須のものではなく、ご自身で申請をすれば無料です。
結果的にこんな申請書が作成されます。
システムとしては非常によく出来ているがそれでいいのかな?
というわけで、創業融資freeeを試してみましたが、とても便利で良く出来ています。
計画書を作成するのが苦手という人でも、スムーズに計画書はできることでしょう。
ただ、これで本当にいいのかなとは思います。
というのも、「誰に何をどうやって売るのか」という事業コンセプトを設計する重要な機会なのに、何も考えずに作成された申請書が、果たして事業を軌道に乗せることに役立つのかと。
「最初は苦労すべき」という根性論ではなく、やはり、人生をかけた起業なのですから、少しでも事業が軌道に乗りやすくする努力は惜しまないほうがいい。
便利なシステムをドンドン使っていただくのは良いですが、一度立ち止まって、せめて、この申請書の記載項目が何のために並べられているのか、その意味を理解する努力はしていただきたいものです。
まあ、「申請書類作成を税理士に丸投げ」するつもりだったら、おんなじですけどね。
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