海外在住のフリーランスに対する報酬についての源泉徴収

海外どこにいても仕事ができる時代に

クラウドなどのツールでどこでも働ける時代が来ており、日本国内のみならず海外在住者に仕事を依頼するというケースも増えてきていることでしょう。

そこで今回は、海外在住のフリーランスに対する報酬などについて源泉徴収の必要があるのかについてまとめてみることにします。

スポンサードリンク

居住者・非居住者の課税対象の違い

所得税法では、個人を「居住者」と「非居住者」に分けてそれぞれ課税対象となる所得の範囲を定めています。

「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。

なお、「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。

「居所」とは住所とまではいかない継続的な滞在場所のことで、単身赴任先や長期入院先などが該当します。

居住者については、全世界どこで稼いだ所得であっても日本の所得税の対象となる一方、非居住者については、その課税の範囲を「国内源泉所得に限る」こととされています。

居住者と非居住者の区分|タックスアンサー

非居住者が課税対象となる国内源泉所得とは

非居住者については、日本国内で稼得した「国内源泉所得」のみが課税対象とされます。

「国内源泉所得」には次のようなものがあります。

(1) 恒久的施設帰属所得、国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得、国内にある資産の譲渡により生ずる所得

(2) 組合契約等に基づいて恒久的施設を通じて行う事業から生ずる利益で、その組合契約に基づいて配分を受けるもののうち一定のもの

(3) 国内にある土地、土地の上に存する権利、建物及び建物の附属設備又は構築物の譲渡による対価

(4) 国内で行う人的役務の提供を事業とする者のその人的役務の提供に係る対価

例えば、映画俳優、音楽家等の芸能人、職業運動家、弁護士、公認会計士等の自由職業者又は科学技術、経営管理等の専門的知識や技能を持つ人の役務を提供したことによる対価がこれに当たります。

(5) 国内にある不動産や不動産の上に存する権利等の貸付けにより受け取る対価

(6) 日本の国債、地方債、内国法人の発行した社債の利子、外国法人が発行する債券の利子のうち恒久的施設を通じて行う事業に係るもの、国内の営業所に預けられた預貯金の利子等

(7) 内国法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配等

(8) 国内で業務を行う者に貸し付けた貸付金の利子で国内業務に係るもの

(9) 国内で業務を行う者から受ける工業所有権等の使用料、又はその譲渡の対価、著作権の使用料又はその譲渡の対価、機械装置等の使用料で国内業務に係るもの

(10) 給与、賞与、人的役務の提供に対する報酬のうち国内において行う勤務、人的役務の提供に基因するもの、公的年金、退職手当等のうち居住者期間に行った勤務等に基因するもの

(11) 国内で行う事業の広告宣伝のための賞金品

(12) 国内にある営業所等を通じて締結した保険契約等に基づく年金等

(13) 国内にある営業所等が受け入れた定期積金の給付補てん金等

(14) 国内において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約等に基づく利益の分配

(15) その他の国内源泉所得

例えば、国内において行う業務又は国内にある資産に関し受ける保険金、補償金又は損害賠償金に係る所得がこれに当たります。

ということになると、海外在住のフリーランスへの報酬については、その仕事が海外でなされたものであり、(4)に該当するような専門的な知識や技能に基づくプロフェッショナル「以外」については、日本の所得税の課税対象とはならないことになります。

国内源泉所得の範囲|タックスアンサー

非居住者等に対する源泉徴収

非居住者又に対して、国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収し、納付する義務があります。

(上記の国内源泉所得の例示のうち(1)(15)は源泉徴収の対象とはなりません)

所得税及び復興特別所得税の源泉徴収をする時期は、原則として現実に源泉徴収の対象となる所得を支払う時です。

ですから、これらの所得を支払うことが確定していても、現実に支払われなければ源泉徴収をする必要はありません。

源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として徴収した日の属する月の翌月10日までに「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書(納付書)」に記載の上、金融機関で納税をする必要があります。

なお、源泉徴収すべき税額は、その所得に応じて次のように定められています。

(1) 民法に規定する組合契約等に基づいて恒久的施設を通じて行う事業から生じる利益でその契約に基づいて配分を受けるもの|20.42%

(2) 土地等の譲渡対価|10.21%
(ただし、土地等の譲渡対価が1億円以下で、その土地等を自己又はその親族の居住の用に供するために譲り受けた個人から支払われるものについては、源泉徴収は不要です。)

(3) 人的役務の提供事業の対価|20.42%

(4) 不動産の賃貸料等|20.42%
(ただし、不動産等の賃貸料で、自己又はその親族の居住の用に供するために借り受けた個人から支払われるものについては、源泉徴収は不要です。)

(5) 利子等|15.315%

(6) 配当等

  1. イ 上場株式等の配当等|15.315%

(注1) 発行済株式又は出資の総数又は総額の3%以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する非居住者が支払を受ける上場株式等の配当等は除きます。

(注2) 上記の「上場株式等」には、公募証券投資信託(公社債投資信託及び特定株式投資信託を除きます。)の受益権及び特定投資法人の投資口も含まれます。

  1. ロ 私募公社債等運用投資信託等の収益の分配|15.315%
  2. ハ イ及びロ以外の配当等|20.42%

(7) 貸付金の利子|20.42%

(8) 使用料等|20.42%

(9) 給与等人的役務の報酬等|20.42%

(10) 公的年金等|20.42%

(支払われる年金の額から6万円(年齢が65歳以上の場合は10万円)に年金の額に係る月数を乗じた金額を控除した金額に税率を乗じます。)

(11) 事業の広告宣伝のための賞金|20.42%

(支払う金額から50万円を控除した金額に税率を乗じます。)

(12) 生命保険契約に基づく年金等|20.42%

(払い込まれた保険料又は掛金のうち、支払われる年金の額に対応する部分の金額を控除した金額に税率を乗じます。)

(13) 定期積金の給付補てん金等|15.315%

(14) 匿名組合契約等に基づく利益の分配|20.42%

海外在住のフリーランスへの報酬が国内源泉所得に該当しないのであれば、その源泉徴収の必要はありません。

ですから、海外在住のプログラマなどに対する「日本以外で作業」をした報酬の支払いについては、源泉徴収は不要ということです。

ネットを通じて日本国内の企業との打ち合わせをしたとしても、実際の作業を海外で行ったのであれば、国内源泉所得には該当しないと個人的には考えます。

非居住者等に対する源泉徴収のしくみ|タックスアンサー

【追記と訂正】

ライターやデザイナーへの報酬については、「著作権使用料」として国内源泉所得となり源泉徴収が必要とされる可能性が高いといえます。

所得税基本通達161-36で「人的役務の提供」と「著作権使用料」の区別について

・対価が原価+通常の利潤ならば「人的役務の提供」

・それ以上の対価ならば「著作権譲渡ないし使用料」

としており、人的役務の提供とするには、積極的に対価が原価+通常の利潤であることを提示する必要があるでしょうから、保守的に、ライターやデザイナーへの報酬については、国内源泉所得として源泉徴収をしておいたほうが良いでしょう。

所得税基本通達161-36(図面、人的役務等の提供の対価として支払を受けるものが使用料に該当するかどうかの判定)

国税庁の質疑応答でも「非居住者に支払う翻訳料」は買い取りの場合、著作権の対価であると回答していますので。

非居住者に支払う翻訳料|国税庁

日本国内の業務でも、WEB上の制作についての報酬が源泉徴収の対象となるかならないか、その判断は微妙です。

源泉徴収が必要な報酬、不要な報酬|Webサイト作成の報酬はどっち?

なお、海外在住者の所在地である国と日本との間で租税条約が締結されている場合、条約の適用が優先されるため、取扱が異なることがあります。

セミナー音源No.2:たかが税務調査されど税務調査

インフィードモバイル

9割の人が間違えている「会社のお金」無料講座公開中

「減価償却で節税しながら資産形成」
「生命保険なら積金より負担なく退職金の準備が可能」
「借金するより自己資金で投資をするほうが安全」
「人件費は売上高に関係なく発生する固定費」
「税務調査で何も指摘されないのが良い税理士」

すべて間違い。それじゃお金は残らない。
これ以上損をしたくないなら、正しい「お金の鉄則」を