中小企業オーナー社長の離婚に伴う慰謝料・財産分与の課税関係

離婚には財産の移転が伴うことも多い

巨大企業のCEOや大物芸能人の離婚で莫大な金額の財産分与がなされたとの報道がありましたが、ある程度の資産のある方が離婚をした場合、婚姻時代に創出した財産について分与をする必要があります。

では、その財産分与にはどのようなものがあり、税金は掛かるのか。

そこで、今回は、離婚に伴う財産分与の課税関係についてまとめてみようと思います。

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離婚の際に必要な財産上のやり取り

離婚をする場合には、やり取りのされるお金として「慰謝料」「養育費」「財産分与」ということばをよく聞きます。

では、それぞれどんな意味あいのものなのでしょうか?

法律では、夫婦が婚姻中に築いた財産を離婚の際に分配する制度を「財産分与」といい、「清算的財産分与」「慰謝料的財産分与」「扶養的財産分与」に分かれるようです。

ですが、一般的には、離婚に伴いやり取りのされるお金としては、不貞行為や暴力など心身へ苦痛を与えたことの損害賠償として支払われる「慰謝料」、子供を看護する側の親へ子供の生活費の分担として支払われる「養育費」、婚姻期間に築き上げた共有の財産の清算として支払われる「財産分与」と理解されていることでしょう。

慰謝料・養育費は合理的な金額であれば所得税は非課税

離婚に伴い支払われる慰謝料は、社会通念上合理的な金額であれば、所得税は非課税です。慰謝料は心身への苦痛に対する損害賠償金であり、特に得をしたというわけではないからです。

養育費についても、合理的な金額であれば所得税は非課税となります。養育費も、必要な扶養義務の履行のための分担金を受け取っただけであるからです。

ただし、慰謝料、養育費であっても、社会通念上認められないような高額な支払いがなされている場合には、贈与税の対象となることもあります。

財産分与を受けた側の課税関係

財産分与については、夫婦の収入額に関わりなく、婚姻期間中に築き上げた財産の1/2をお互いに有するものと考えます。

ですから、婚姻期間中に築き上げた金銭や有価証券、不動産、車両などの財産で、名義がどちらかになっている部分については、その差額を金銭で清算をする必要があるわけです。

この財産の清算としての「財産分与」については、贈与税は非課税です。

なお、これらの財産分与を金銭ではなく、不動産やその持ち分として支払われたとしても、原則として、受け取った側に贈与税は課されません。

これは、本来自分が所有すべき権利があるものの弁済を受けたに過ぎないからです。

ただし、次の場合には、財産分与であっても贈与税の課税対象となることがあります。

1.分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合

その多過ぎる部分

2.離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合

離婚によってもらった財産すべて

離婚して財産をもらったとき|タックスアンサー

財産分与を支払った側の課税関係

共有資産の名義が自分に偏っていたことの清算として金銭を支払った側には、何も得をしたわけではないので、課税は生じません。

しかし、財産分与を不動産や株式などでした場合は注意が必要です。

というのも、財産分与については、相手方に対する資産の譲渡であり、それを税務的に解釈する場合、一旦その不動産や株式を時価で譲渡をし、その金銭を財産分与に当てた。その上で、相手方がその金銭で再度それらの不動産や株式を取得したと考えるからです。

不動産や株式を時価で譲渡したのですから、それらの資産の時価が取得費を上回っている部分については、含み益が顕在化したものとして、財産分与をした側に譲渡所得課税がされるのです。

なお、自宅については、他の要件を満たす限り「居住用不動産の3,000万円特別控除」の適用を受けることができます。

つまり、仮に自宅ないしその持ち分の時価が、取得費(買った時の取得価額ー減価の額)を上回ったとしても、その含み益が3,000万円以下ならば譲渡所得税の課税はありません。

(ただし、この特別控除を適用するには所得が0になったとしても確定申告は必要です)

離婚して土地建物を渡したとき|タックスアンサー

一方、自社株式についてはそのような取り扱いはありません。

結婚後に事業が順調に成長して自社株の評価額が上がったのであれば、財産分与すべき金額も相当に高額となります。

amazonのジェフ・ベゾス、クラスだと、金銭での支払いは不可能なので、株式で財産分与をしたようですが、仲違いをした離婚相手が、自社の株式の相当数を保有するというのは、企業経営を不安定にします。

仮に、株式で財産分与をしたら株式の含み益相当額に譲渡所得課税がされるというのでは、泣きっ面に蜂。

渋々、金銭を工面して支払うということも多いのではないでしょうか。

成長した中小企業のオーナーほど、離婚に伴う経済的なダメージは大きいです。

かといって、離婚が成立するまでは、別居中の相手に対して自分の年収や扶養親族の数などによって計算された生活費相当額である「婚姻費用」を支払い続けなくてはなりません。

年収の高い社長だったら金額を見ると震え上がりますよ。

養育費・婚姻費用算定表|東京家庭裁判所

実は、家庭円満というのは、経済的にも極めて大きなメリットのようですね。

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