【基礎】給料を支給した時のカンタンでミスの少ない経理処理|社会保険料・源泉所得税・住民税・通勤交通費

経理処理で悩む人が多い給与支給と社会保険料等の支払い

預金取引や経費精算などは、会計ソフトの「自動仕訳機能」が実用レベルになったおかげで、その手間は大きく減りました。

ただ、給与を支給したときの経理処理については、給与以外に通勤交通費が上乗せされた上、社会保険料や源泉所得税が差し引かれるなどするため、預金の引落額とはズレが生じます。そのため、そのまま自動で仕訳がされるという訳にはいかないことが多いもの。

そこで、今回は、経理担当者のために、給与支給をしたときと社会保険料等の納付をしたときの経理処理方法についてまとめておくことにします。

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給与を支給したときの経理処理

給与を支払う際には、まずは役員報酬と従業員の給与は分けて仕訳をする必要があります。

さて、基本給に残業手当などの各種の手当を含めた給与総額(いわゆる額面金額)に通勤交通費を上乗せし、そこから社会保険料、源泉所得税、住民税、雇用保険料などを差し引き、現金または預金で支給がされることでしょう。

では、このようなケースではどのように会計ソフトへの入力をすればよいのでしょうか?

会計ソフトへの入力は、大きく分けると「振替伝票」形式と「帳簿」形式に分かれます。

そのうち、振替伝票形式とは、一つの取引をまとめて、いわゆる「借方」「貸方」に分けて会計入力をする方式です。

結論から言うと私は「振替伝票」形式での入力には否定的で、できるだけ「帳簿」形式で入力をすることをオススメしています。

というのも、振替伝票で入力をすると、あとで総勘定元帳を見返した時に相手勘定が複数あると「諸口」と表示され、その内容を把握することが難しくなるからです。

では、給与を支払ったときには、どんな経理処理を行えばよいのでしょうか。

たとえば「弥生会計」であれば、「仕訳日記帳」というところで入力をします。

具体例

役員報酬|500,000

従業員給与総額|1,000,000

通勤交通費|120,000

厚生年金|200,000

健康保険料|100,000

雇用保険料|50,000

源泉所得税|150,000

住民税|80,000

振込金額 540,000

仕訳日記帳への記帳

借方

勘定科目

金額 貸方

勘定科目

金額 摘要
役員報酬 500,000 普通預金 500,000
給与手当 1,000,000 普通預金 1,000,000
旅費交通費 120,000 普通預金 120,000 通勤交通費
普通預金 200,000 社保預り金 200,000 厚生年金
普通預金 100,000 社保預り金 100,000 健康保険
普通預金 50,000 法定福利費 50,000 雇用保険
普通預金 150,000 源泉預り金 150,000 源泉所得税
普通預金 80,000 住民税預り金 80,000 住民税

*消費税については、旅費交通費は「課税対象」、それ以外はすべて「対象外」としてください。

イメージとしては、源泉徴収などをする前の全額を従業員に支払ったのち、社会保険料や源泉所得税などをすぐに預金口座に振り込んでもらい預かったということです。

このような仕訳を登録すると、預金の総勘定元帳上、きちんと540,000円の振込金額だけ預金が減少します。

なぜ、わざわざこんな処理をするかというと、源泉所得税などを差し引いたいわゆる「手取額」を預金から支払ったという仕訳だけですと、預かり処理が抜けていても間違いに気が付かないのですが、一旦給与総額を支払ったことにすることで、預かり処理に間違いがあると、総勘定元帳の預金残高と預金通帳の残高に誤差が生じるので間違いが発見しやすくなるからです。

簿記検定では、これだと正解とはなりませんが、実務上最も合理的だと思うので、この方法で経理処理をお願いします。

なお、預金データから自動仕訳がされる場合、預金から引き落とされる時に相手勘定を「短期借入金」などとして”逃して”おき、上記の取引について別途、普通預金の部分をすべて「短期借入金」とした仕訳を登録するほうが合理的でしょう。

社会保険料を支払ったときの経理処理

健康保険や厚生年金などは、給与に応じて定めされた金額を従業員と会社で折半(1/2ずつ)して負担することになります。

通常は、給与から社会保険料(健康保険・厚生年金)を預かった「翌月」10日までに、会社負担分を合わせて、会社が社会保険料の総額を納付する必要があります。

つまり、給与から社会保険料を預かった月末では、総勘定元帳の「社保預り金」残高が従業員からの預かり金額となり、翌月10日に納付がされた時点で、その「社保預り金」の残高は0になるはずです。

ただ、事業主が負担する「子ども・子育て拠出金」というものもあるため、納付する金額の1/2が自動的に会社負担となるわけではありません。

ですから、納付すべき全体の社会保険料全額から従業員からの預り金を差し引いた金額を会社負担の社会保険料(法定福利費)とし、その時点で「社保預り金」の残高が0になるようにしたほうが合理的です。

具体例

預かり厚生年金|200,000

預かり健康保険料|100,000

納付すべき社会保険料|650,000

仕訳日記帳への記帳

借方

勘定科目

金額 貸方

勘定科目

金額 摘要
社保預り金 650,000 普通預金 650,000
法定福利費 350,000 社保預り金 350,000 納付額ー預り金額

 

翌月10日の時点で、「社保預り金」の残高が0になっていることのチェックを忘れないようにしましょう。

源泉所得税を支払ったときの経理処理

源泉所得税については、原則として源泉徴収をした翌月10日までに納税をします。

ただし、常時給与を支給する人数が10人未満である時は、「納期の特例」の申請をすることで、1-6月徴収分については7/10に、7月-12月徴収分については翌年1/20までにまとめて納付をしても良いことになります。

具体例

預かり源泉所得税|150,000

借方

勘定科目

金額 貸方

勘定科目

金額 摘要
源泉預り金 150,000 普通預金 150,000

 

住民税を支払ったときの経理処理

住民税については、会社が徴収すべき「特別徴収」分については、自治体から通知されてきた金額を6月から来年5月までの給与から毎月徴収をし、原則としてその翌月10日までに各自治体に納付をします。

ただし、常時給与を支給する人数が10人未満である時は、「納期の特例」の申請をすることで、6-11月徴収分については12/10に、12-5月徴収分については6/10までにまとめて納付をしても良いことになります。

具体例

預かり住民税額|80,000

借方

勘定科目

金額 貸方

勘定科目

金額 摘要
住民税預り金 80,000 普通預金 80,000

 

労働保険料を支払ったときの経理処理

労働保険とは、業務上のケガなどを補償する「労災保険」と失業した場合の補償をする「雇用保険」を合わせたもので、労災保険は全額が事業者の負担、雇用保険については、事業ごとに定められた料率だけ、事業主と従業員がそれぞれ負担をします。

なお、労働保険料の金額は、4月から3月までの「給与支給実績」に基づいて計算がされます。

ただ、4月から3月までの給与支給の実績を待っていられないので、6月1日から7月10日までに、前年の給与をベースにして「概算保険料」による申告をします。

その上で、原則7/10までに「概算保険料」を一括して納付をした後、4月から3月までの給与を集計して算出された「確定保険料」を算出し、概算保険料と確定保険料の差額の精算を翌年の労働保険料の申告に合わせてすることになります。

社会保険は、先に従業員から預かったものに会社負担を上乗せして支払いますが、労働保険は、先に概算保険料を支払った上で後から従業員等負担分を預かるという違いがあります。

まずは、労働保険料の支払総額を「法定福利費」としておき、従業員等から雇用保険の自己負担分を預かった時点で「法定福利費」をマイナスすることで、差し引きが、会社負担分の法定福利費となるわけです。

正しくは、概算保険料のうち、従業員等が負担すべき部分は「立替金」等とし、その他の部分の概算保険料は申告書を提出した日(決定された金額については、決定のあった日)又はこれを納付した日の属する事業年度の損金の額に算入するのですが、このブログで経理処理を確認するような小規模な会社であれば、この方法でも、実務上問題になることはまずありません。

具体例

労働保険料納付額|240,000

借方

勘定科目

金額 貸方

勘定科目

金額 摘要
法定福利費 240,000 普通預金 240,000

 

上記の処理について、給与計算の集計表に蛍光ペンなどで色分けしてどの数字を持ってくるのかをわかるようにしたテンプレートを作っておくと、より間違いは少なくなることでしょう。

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