2020年度から所得税の人的控除が大きく変わります|給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除

税理士も手計算で合わせる自信がなくなるほど複雑に

2019年は消費税増税の年でしたが、2020年には、所得税について大きな改正があります。

どんな改正かをひと言で言えば、税理士も手計算で合わせるのが自信がなくなるほど「控除」が複雑になるということ。

そこで、今回は、2020年度以降の所得税に適用される「人的控除」の改正についてまとめておくことにします。

スポンサードリンク

所得税の課税標準の計算方法

所得税については、その所得の発生原因ごとに10の「所得区分」に分け、それぞれ計算された「所得金額」を合算し「合計所得金額」を算出します。

そこから、社会保険料を支払った額に応じた「社会保険料控除」や一定金額以上の医療費の支払いをした場合に適用される「医療費控除」などの「所得控除」を差し引き、所得税の課税対象となる「課税標準」が計算されるのです。

2020年度に改正がされる「控除」は次の5つです。

(1)給与所得控除の引き下げ

(2)公的年金等控除の引き下げ

(3)所得金額調整控除

(4)基礎控除の引き上げ

(5)配偶者・扶養控除等の要件見直し

このうち(1)(2)(3)は「所得金額」の計算方法の改正であり、(4)(5)は「所得控除」の改正です。

では、それぞれの改正の内容を確認してみましょう。

基礎控除

基礎控除とは、所得金額等に関わりなく一律で適用される控除のことです。

この基礎控除が従来の38万円から48万円へと10万円引き上げられます。

一方、合計所得金額2,400万円超の場合には以下のように基礎控除が縮減されるのです。

合計所得金額

基礎控除額

2,400万円以下

48万円

2,400万円超2,450万円以下

32万円

2,450万円超2,500万円以下

16万円

2,500万円超

0

 

その効果はよくわからないのですが、どうもフリーランスの税負担を軽減して、働き方改革を支援するんだそうです。

給与所得控除

給与所得控除とは、給与所得の計算上、給与収入に応じて控除されるもので、いわば「給与所得者の概算経費」ともいうべきものです。

「給与所得」は、給与収入から給与所得控除を差し引くことで計算がされます。

この給与所得控除が2020年度から一律で10万円縮減されます。

さらに、給与所得控除の上限金額が、2020年度からは給与収入850万円超で195万円となります。

結果として2020年以降の給与所得控除は以下のようになるのです。

給与収入 給与所得控除額
162.5万円以下 55万円
162.5万円超180万円以下 給与収入×40%ー10万円
180万円超360万円以下 給与収入×30%+8万円
360万円超660万円以下 給与収入×20%+44万円
660万円超850万円以下 給与収入×10%+110万円
850万円超 195万円

 

基礎控除が10万円引き上げられていることから、上限金額の影響がない給与収入850万円以下の給与所得者については、「課税標準」は変わらず、所得税額は変わらないことになります。

要するに、多額の給与をもらっている人には増税しますということですね。

公的年金等控除

公的年金等控除とは、「公的年金等雑所得」の計算上、老齢年金など公的年金の収入から差し引くことのできる金額です。

公的年金等雑所得は、公的年金等収入から公的年金等控除を差し引いて計算をします。

この公的年金等控除についても、2020年度から原則10万円縮減されることになります。

さらに、今まではなかった上限金額についても設定され、公的年金等の収入金額が1,000万円超の場合には、195.5万円が公的年金等控除の上限金額とされます。

なお、公的年金等「以外」の所得が1,000万円超の場合には公的年金等控除を10万円、公的年金等「以外」の所得が2,000万円超の場合には公的年金等控除を20万円、それぞれ引き下げられることになるのです。

基礎控除が10万円引き上げられていることから、上限金額の影響を受けない公的年金等収入金額が1,000万円以下でかつ公的年金等「以外」の所得も1,000万円以下の者については、結果的に所得税額は変わらないということになります。

要するに他の所得が多い人には、年金については増税しますよということですね。

所得金額調整控除

(1)給与収入850万円超の介護・子育て世代

給与所得控除が850万円で頭打ちとなったことの影響を緩和するため、介護や子育て世代については、給与収入から「所得金額調整控除」を差し引くことができます。

対象者は、給与収入が850万円超で、自身が特別障害者であるか、23歳未満の扶養親族がいる場合か、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる場合です。

具体的な「所得金額調整控除」は以下の通り。この金額を給与所得控除に加算をして給与収入から差し引くことができます。

所得金額調整控除=(給与収入*―850万円)×10%

*給与収入が1,000万円超は1,000万円

(2)給与所得と公的年金等の重複

基礎控除が10万円引き上げられた代わりに、給与所得控除、公的年金控除がそれぞれ10万円ずつ引き下げられましたが、給与所得も公的年金等もある場合には合わせて20万円も控除が縮減されてしまいます。

そのため、給与所得と公的年金等の両方がある(合わせて10万円超)場合、以下の金額を「所得金額調整控除」として給与収入から差し引くことができます。

所得金額調整控除=(給与所得*+公的年金等雑所得*)ー10万円

*給与所得及び公的年金等雑所得が10万円超はそれぞれ10万円

なお、(1)(2)ともに適用が受けられる場合、(1)の金額を控除後に(2)の金額を控除します。

配偶者・扶養控除等の要件見直し

基礎控除が48万円に引き上げられたことにより、配偶者控除や扶養控除などの所得要件についても以下のように変更されます。

(1) 同一生計配偶者及び扶養親族の控除対象者

  合計所得金額が48万円以下に(現行38万円以下)

(2) 源泉控除対象配偶者

  合計所得金額が95万円以下に(現行85万円以下)

(3) 配偶者特別控除の対象者

  合計所得金額が48万円超133万円以下に(現行38万円超123万円以下)

(4) 勤労学生控除の対象者

  合計所得金額が75万円以下(現行65万円以下)

(5)家内労働者等の事業所得の必要経費算入

  最低保障額を55万円に引き下げ(現行65万円)

 

こんなに複雑では、普通の人が自身の所得をきちんと計算できる気がしないです。

それでも、法律を作る頭の良い人は、「なぜこれくらいの計算ができないのかわからない」と言っているのかもしれませんね。

セミナー音源No.13:どこまでならOK?税務のさじ加減

インフィードモバイル

9割の人が間違えている「会社のお金」無料講座公開中

「減価償却で節税しながら資産形成」
「生命保険なら積金より負担なく退職金の準備が可能」
「借金するより自己資金で投資をするほうが安全」
「人件費は売上高に関係なく発生する固定費」
「税務調査で何も指摘されないのが良い税理士」

すべて間違い。それじゃお金は残らない。
これ以上損をしたくないなら、正しい「お金の鉄則」を