工事の請負やソフトウエアの開発で完成前に受け取ったお金は売上なの?前受金なの?|請負の計上基準

長期間に渡る工事や開発では引き渡し前に金銭の授受も

大型の工事やソフトウエア開発業務を請け負った際には、その完成までに長い時間を要し、多額の外注費等の立替が必要になります。

そのため、完成前であっても、途中でその出来高などに応じて金銭が支払われることもあるでしょう。

では、この請負業務が完了する前に受け取ったお金は、その時点で売上になるのでしょうか?

そこで、今回は、請負工事について、税法上の計上基準についてまとめておくことにします。

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完成基準と進行基準

請負工事について、その益金、損金の算入時期には、その対象物の引き渡しの日にすべて計上をする「完成基準」とその進捗状況に応じて計上をする「進行基準」があります。

この「完成基準」と「進捗基準」のどちらが適用されるかについては、次のように定められています。

長期大規模工事 進行基準が強制される
長期大規模工事以外 原則|完成基準

例外|進行基準を適用することも可(一定条件あり)

 

ここでいう「長期大規模工事」というのは、次の3つの要件をすべて満たすものです

・工事期間(着手から引き渡しまで)が1年以上

・請負代金が10億円以上

・請負代金の1/2以上が目的物の引き渡しの日から1年を経過する日後に支払われることが定められていない

ですから、請負代金が10億円未満の工事やソフトウエア開発を請け負った場合、原則として、その完成物を引き渡した日に売上高という益金とその原価である損金を計上することになります。

つまり、引き渡しまでに受け取った中間金はすべて「未成工事受入金(前受金)」であり、引き渡し前に支払った原価は「未成工事支出金(在庫)」となるわけです。

しかし、これだとどれくらい利益が上がっているのか、請負完了時点までわからないので、中小企業では、期中においては、受領した中間金については売上高とし、支払った外注費等を売上原価としているケースも多いでしょう。

その場合には、決算調整で、期末時点ではまだ引き渡しの終わっていない工事について受領した中間金については「未成工事受入金(前受金)」、期末までに売上原価とした金額については「未成工事支出金(在庫)」に振り替える必要があるのです。

部分完成基準と未成工事受入金

なお、完成物を引き渡し前であっても、特定のものについては、「部分完成基準」が強制的に適用されることもあります。

法人が請け負った建設工事等(建設、造船その他これらに類する工事をいう。以下2-1-21 の8までにおいて同じ。)について次に掲げるような事実がある場合(法第64条第1項《長期大規模工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度》の規定の適用がある場合及び同条第2項《長期大規模工事以外の工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度》の規定の適用を受ける場合を除く。)には、その建設工事等の全部が完成しないときにおいても、2-1-1にかかわらず、その事業年度において引き渡した建設工事等の量又は完成した部分に区分した単位ごとにその収益の額を計上する。

⑴ 一の契約により同種の建設工事等を多量に請け負ったような場合で、その引渡量に従い工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合

1個の建設工事等であっても、その建設工事等の一部が完成し、その完成した部分を引き渡した都度その割合に応じて工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合

これだけを読むと、上記の引き渡し前に受領した中間金についても、「部分完成基準」により、その時点で売上計上すべきかのようにも見えます。

しかし、この通達で、これらの例示として

⑴は、例えば、100 戸の建売住宅の建設を請け負った際に、1戸を引き渡す都度工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合である。

⑵は、例えば 1,000メートルの護岸工事を請け負った際に、そのうち100メートルごとに完成した都度引渡しを行い、その割合に応じて工事代金を収入する特約又は慣習がある場合である。

が掲げられています。

つまり、部分完成基準が適用されるのは、同一の工事について部分的な完成をもって引き渡されるようなケースを想定しており、工事の途中で成果物の引き渡しもないのに、その出来高に応じて中間金を受け取るようなケースでは部分完成基準は適用されることはないということです。

通常、万一、工事が完成前に中止になった場合には、前者であれば、受け取った代金の返還を求められることはないものの、後者であれば、受け取った代金の返還を求められるはずです。(違約金はあるかも)

その点からしても、原則として工事等の請負については、法人税、消費税ともに、その引き渡し(検収)が完了した時点をもってその益金・損金の算入がされるのです。

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