新規開業した場合の消費税課税事業者選択届出書の提出期限|課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日とは?

新規事業開始2期間は原則消費税の納税義務がないのだが

消費税の納税義務の有無は、「基準期間」=前前課税期間の課税売上高で判定をするため、基準期間のない法人設立ないし個人での事業開始から2期間については、消費税の納税義務が「原則」ありません。

しかし、その事業開始に伴い多額の設備投資などをしたときには、納税義務がないと売上に伴い預かった消費税額よりも消費税の支払い額のほうが多くても消費税の還付がされません。

そんなときには、「課税事業者選択届出書」を提出し、あえて消費税の課税事業者となることで、消費税の還付を受けることが可能になるのです。

この課税事業者選択届出書は「原則」として、その適用を受ける課税事業年度開始の日の前日までに提出しておく必要があります。

しかし、これから法人を設立したり、事業を開始するのにその前に届出書を出せというのは無理があるもの。

では、新規に事業を開始するときの課税事業者選択届出書の提出期限はいつなのか。そのルールと見落としがちな注意点についてまとめておくことにします。

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原則的な消費税課税事業者選択届出書等の提出期限

消費税の「課税事業者選択届出書」もそれの取りやめを行う「課税事業者選択不適用届出書」もその提出期限の原則は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までとなっています。

たとえば、免税事業者である個人事業主が今年から消費税の課税事業者になりたいという場合には、昨年の12/31までに消費税の課税事業者選択届出書を提出しなくてはなりません。

同様に、本来であれば免税事業者であるものの課税事業者選択届出書を提出していた個人事業主が、今年から免税事業者に戻りたいという場合には、昨年の12/31までに消費税の課税事業者選択不適用届出書を提出しておかなくてはならないということです。

消費税の課税の特例については、その申請書の提出期限が、大抵この適用を受けようとする課税期間開始の初日の前日までとなっているので慎重な対応が必要なのです。

なお、課税事業者選択届出書を提出した場合、課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書を提出することはできません。

たとえば、2019年12月に課税事業者選択届出書を提出し、2020年度よりあえて課税事業者になった個人事業主については、2020年1月1日から2年を経過する2021年12月31日の属する課税期間の初日=2021年1月1日以降にしか「消費税課税事業者選択不適用届出書」は提出できないので、2021年中に提出をしても、免税事業者に戻れるのは、2022年度からとなります。

つまり、課税事業者選択届出書を提出したら、最低でも「2年間」は消費税の納税義務者を続けなくてはいけないということです。(法人であってもこれは同じ。途中で事業年度を変更して短くしても「2年間」は提出ができません)

この他にも一定金額以上の「高額特定資産」を取得した場合であえて課税事業者を選択した場合には、「高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間」は免税事業者に戻れないので注意が必要です。

1000万円以上の設備投資をしたらしばらく簡易課税は選択できないこともー高額特定資産取得の消費税の特例

新規に事業を開始した場合の課税事業者選択届出書提出期限

では、新規に事業を開始したときにはどうでしょう。

まだ、設立もされていないような法人や事業を始めていない個人事業主が、その前日までに消費税課税事業者選択届出書を提出することなどできません。

そこで、適用を受けようとする課税期間が「事業を開始した日」の属する課税期間である場合には、その課税期間中に消費税の課税事業者選択届出書を提出することで、その課税事業年度から消費税の課税事業者になることができます。

つまり、その課税期間の末日が消費税課税事業者選択届書の提出期限となります。

なお、課税事業者選択届出書を提出した場合、課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書を提出することはできませんから、新規事業開始に伴い課税事業者を選択した場合、消費税の納税義務は初年度に加えてその後2年間は消費税の納税義務が生じることになります。

つまり、あえて、新規事業開始に伴い消費税の課税事業者選択届出書を出すかは、その事業年度の還付だけでなく、その先2年間の消費税の納税額と比べてその損得を検討しなくてはいけないということです。

さて、ここでいう「事業を開始した日」とは何を言うのでしょうか?

政令では「事業者が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日」となっております。(消費税施行令第20条)

「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を得て行う資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」のことです。

では、「課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日」とはいつをいうのでしょう。

これは、「事業を遂行するために必要な準備行為を行った日」とされています。

具体的に言うと、裁決例(平成29年6月16日裁決)でも、「請負契約を締結してその契約金を支払うなどしており、これらの行為は本件事業を行うために必要な準備行為」とされていて、「課税売上高が生じた日」でも「資産を取得した日」でもなく、「契約を締結するなどその事業のための準備を開始した日」とされているので注意が必要です。

つまり、個人事業主が新たに事業を開始するときなど、その準備開始の日が設備投資をした課税期間開始の日よりも前のときには、この特例は適用できない。

その結果、新規事業開始に伴い取得した資産の消費税についてあえて課税事業者を選択することで還付を受けようとしても還付は認められないどころか、本来であれば納税義務の生じなかったはずの翌年以降についても消費税の納税義務が生じてしまうことになるのです。

消費税非課税の行為をしていた場合はどうなるのか?

では、元々、居住用の建物の貸付などをしていた場合の消費税課税事業者選択届出書等の提出期限はどうなるのでしょうか?

政令では「事業を開始した日」を「”課税”資産の譲渡等に係る事業を開始した日」としています。

居住用の建物の貸付は、消費税は非課税の取引であり、「資産の譲渡等」には該当するものの「課税資産の譲渡等」には該当しないことになります。

そうなれば、「まだ事業を開始してはいないことになるので、新たに事業用の建物の貸付などの準備を開始した日で判断をする」と読めることになります。

このあたりは、明文規定はありませんので、私の個人的な解釈であり、なんとも言えません。

ホント消費税は怖いです。届出一枚、そしてその提出期限の判断一つで税負担が大きく異なる上に、それを取り戻すことができない。

税理士泣かせというか、リスクばかりでこれじゃ税理士志願者が減るのも当然ですね。

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