新型コロナウイルスの影響で売上が激減したのだが役員報酬を下げてもいいの?|事前確定届出給与での対応も

役員給与の損金算入は定時同額支給が原則

法人も社長も一体であるオーナー中小企業では、役員の給与を増減することで法人の利益を調整しようと考える人も多いのではないでしょうか。

なぜか、税務署は、この「利益調整」というものを忌み嫌っていて、原則として、役員への給与については、一月以下の単位での「定時同額」に支払われたものしか損金にならないことになっています。

ただし、経営が著しく悪化したことなど、やむを得ず減額せざるを得ない事情(業績悪化改定事由)がある場合には、期中での役員報酬の減額も認められています。

しかし、この要件は、かなり厳格なもので、単に業績不振だからというだけの理由では、役員報酬の期中での減額は認められていないのです。

では、新型コロナウイルスの影響がある場合は、どうなるのでしょうか?

そこで、今回は、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」に追加された「業績悪化改定事由」の具体的事例についてみていくことにします。

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役員報酬減額には経営責任を取らざるを得ないことが必要

役員報酬が損金に算入されるためには、「会計期間開始の日から3か月を経過する日までに継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額改定」されたものであることが原則として必要です。

そこで定めた以外の金額の支払いがされた場合には、その差額については、役員賞与として損金不算入となります。

例えば、月額100万円と定めた役員報酬を期末に一月だけ80万円に減額した場合、80万円が「定時同額」の給与とされ、それ以前に支払われた100万円のうち20万円×11ヶ月は「定時同額ではない」として全額が損金不算入になるのです。

役員報酬額の改訂はいつすればいいの?|定時同額給与の意味

しかし、その役員報酬の減額が「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」(業績悪化改定事由)によるものであれば、やむを得ないものとして、減額前後の役員報酬も損金算入が例外的にされます。

では、業績悪化改定事由とはどんなものが該当するのでしょうか?

まず法人税法基本通達9-2-13で

「経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれない

と明示されています。

具体的には、業績悪化改定事由には、財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことだけではなく、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じているものが該当します。

その例示として、

株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合

取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合

③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

が挙げられています。

なお、①の株主については、株主が親族などの同族経営の場合には、ほぼ認められないと考えてください。

これを見ると、倒産回避などのため第三者へのお願いをする以上、経営責任を取らざるを得ないなどかなり切羽詰まった状況でない限り役員報酬の減額が認められないことが伺えるでしょう。

新型コロナウイルスでの影響が減額容認される事例

新型コロナウイルスの影響については、業種により大きく異なるため、業績に影響があるということだけで役員報酬の減額が容認されるわけではありません。

具体的に、減額が容認されるケースとして次のようなものが挙げられています。

各種イベントの開催を請け負う事業を行っていますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、イベント等の開催中止の要請があったことで、今後、数か月間先まで開催を予定していた全てのイベントがキャンセルとなりました。その結果、予定していた収入が無くなり、毎月の家賃や従業員の給与等の支払いも困難な状況である

 

外国からの入国制限や外出自粛要請が行われたことで、主要な売上先である観光客等が減少しています。そのため、当面の間は、これまでのような売上げが見込めないことから、営業時間の短縮や従業員の出勤調整といった事業活動を縮小する対策を講じています。また、いつになれば、観光客等が元通りに回復するのかの見通しも立っておらず、今後、売上げが更に減少する可能性もあるため、更なる経費削減等の経営改善を図る必要が生じています。

これらのケースに対して「業績悪化改定事由」に該当するとしています。

国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ|国税庁

ここから、イベント事業、飲食業、インバウンド(観光)事業などという、自粛要請により特にコロナの影響を長期間で甚大に受けているケースについては、役員報酬の減額も容認されると考えて良いでしょう。

そうではない、一ヶ月程度の休業や売上高が1-2割程度の下落見込みに対する役員給与の一時的な減額は、「定時同額ではない」と税務調査で否認されるリスクはあると個人的には考えます。

もちろん、素直に従うつもりはないですけど。

とにかく、好きなのよね。税務署は「形式を満たしていないから否認」というのはラクだから。

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