なぜチェックリストは誰も使わなくなるのか?|生きたチェックリスト、死んだチェックリスト

生きたチェックリスト、死んだチェックリスト

さて、低成長にも関わらず、少子化により相対的な人件費が上がっていく中で安定的に利益を確保するには、労働生産性(1時間あたりの利益)を上げていくしかないと思います。

そのためには

・一人ひとりが自分にしか出来ないことに従事をする適材適所の実現

・いつでも誰にでも取って変われるように仕事の再現性を確保

という一見、二律背反するような2つの条件を満たさないといけません。

これを実現するために最低限必要なことは、仕事を見える化すること。

誰が何をすべきなのかを明確にするということです。

具体的な手法としては、マニュアル・チェックリストの整備が挙げられます。

今回は、そのチェックリストの効能と限界から「生きたチェックリスト」「死んだチェックリスト」の違いを見ていくことにします。

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チェックリスト3つの効能

チェックリストには3つの効能があります。

(1)熟練者のポカよけ

どんなに熟練をした人でも、うっかりミスはつきもの。そのミスを出来るだけ減らす効果を発揮します。

(2)新人の行動指針

チェックリストに最低限行って欲しいことを明示することで、新人に会社が何を期待しているのかという役割を明らかにできます。

(3)無罪放免の基準

どこまでやれば、仕事が終わったのかという基準を明示することで、仕事を依頼した人と依頼された人のストレスと不信感を軽減します。

こんなチェックリストを作ってはいけない

こんな効果のあるチェックリストですが、「これじゃダメ、むしろ害にしかならない」というものもあります。

さて、熟練者と新人の仕事のスピードの違いはどこから生まれるのでしょうか?

作業そのものに慣れているということもありますが、もっと大きいのは、熟練者は「合理的な手抜き」ができることだと思います。

つまり、熟練者は、仕事を「絶対に合わせなくてはいけない幹」の部分と「そうでもない枝」の部分に的確に分け、幹の部分に注力をした仕事をする。

一方で、新人は、その区別ができず、すべてのことを均一に全力で取り組むので、スピードも上がらないし疲れるということなのです。

では、どんな目的のためにチェックリストを作れば良いのか?

「新人が熟練者の判断基準の真似をできるようにする」ことを目指して作れば良いのです。

ここは意見が別れるところだとは思いますが、そのためにも私は、最も仕事が出来る人がチェックリストを作るべきだと思っています。

ここから、逆に作っても害になるチェックリストというものがわかるでしょう。

それは、「無駄にチェック項目の多いチェックリスト」です。

確かに、チェック項目が多いのは、チェックリストとしては美しいものでしょう。

しかし、それでは、逆に合理的な手抜きの出来る熟練者にまで新人の手順を押し付けることになり、かえって生産性は低くなってします。

結果的に、熟練者は、そのチェックリストを無視したり、やみくもにチェックを入れるだけになります。

それを見ていた新人も結果的にそのチェックリストを軽視し、そのチェックリストは死んだチェックリストになるのです。

なので、チェックリストを人に見せたり、チェックリストについて語ること自体、「どうだ俺はこんなに細かいチェックリストを作っているんだぜ」と言いたくなる心理が働く、無駄なチェック項目を増やす温床になるのです。

求められる精度に合わせる

これらの考え方の諸悪の根源は「チェック項目の多さ=クオリティの高さ」という前提です。

いつでも実務で機能を発揮する生きたチェックリストにするために最も大切なのは、「求められる精度に合わせる」ということなのです。

例えば、医療機器の製造などでは、極めて高い精度が求められますが、ファイリングなどバックオフィス業務ではそこまでの精度を求められてはいません。

「ファイリング業務であってもうちは極めて高い精度を保持するようにしています」と言ったところで、お客様がそれを求めていないのであれば、その作業は、顧客満足ではなく単なる自己満足のためのものなのです。

一方で、コストダウンや時間短縮を求めながら、チェックリストで過剰品質、過剰工程を必要とするようなことをすれば、結果的に現場がそのチェックリストを無視するようになるのは当然でしょう。

やっかいなことに、チェックリストのチェック項目には「不可逆性」が伴います。

「どんなミスであっても一度起きたことは同じミスをしないようにチェック項目に加えよう」と誰もがそういいます。

「ミスをしたのは、その人のせいではない、そのミスをさせたチェックリストのせいだ」という耳障りの良いことも言われます。

結果として、「怒られるくらいなら、どんどんチェックリストに書き込んでしまえ」ということになります。

一方で、その一度挙げたチェック項目を外すというのは非常に大変です。

万一、それが原因でミスが発生する事になれば、

「一体誰がそんなことをしたんだ」とその指示をした人の責任問題になるでしょう。

そのため、チェックリストは知らず知らずに肥大化し、いつしか誰もまともに使わない死んだチェックリストになっていくのです。

では、どうすれば、いつまでも生きたチェックリストとして機能をさせられるのでしょうか。

それには、無駄な業務を発見するのと同様、定期的にチェックリストの項目について「誰のために行っているのか?」「何のために行っているのか?」という質問をすることで、見直しをしていかなくてはいけません。

どうしてもチェック項目を削除するのは怖い?

それであれば、スキルレベルごとに必要なチェック項目を記載したチェックリストを別々に作るしかありません。

しかし、それでは、追加修正をする際に、いくつものチェックリストに追加修正をする必要ができてしまい、結果的にその作業をしなくなってしまうこともあります。

ならば、スキルレベルごとに要求されるチェック項目を区分けし、対象者ごとに表示されるチェック項目を変えてみてはどうでしょうか?

チェックリストをExcleやGoogleスプレッドシートで作成し、チェック項目にレベルに応じて、誰でもチェックな必要な項目に●を、新人のみに追加チェックが必要な項目には空欄のような符号をつけておけば、オートフィルタ機能でスキルレベルごとに必要なチェックリストに簡単に切り替えることができます。

それほど大きな追加作業でもなく、効果絶大ですので、一度お試しください。

なお、ガチの「仕組み化オタク」による、知らず知らずのうちに定着した無駄な作業を省き、「普通の人の戦力化」ができるマニュアル・チェックリストの作成及び運用法のエッセンスを知りたい方はこちらをどうぞ。

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