【まとめ】要するに借金とは企業経営にとっての”加速装置”である

ケチな社長はなぜお金を残せないのか?
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借金はしたほうがいい?しないほうがいい?

企業経営にとっての借金の意義については何度かこのブログでも言及してきました。

今回改めて、借金をするというと言うのはこういうことなんだなと新刊を書くにあたって考えたことをまとめてみようと思います。

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借金のリスクと投資のリスク

まず、申し上げたいのは、どうも借金をするリスクと投資をするリスクが混同されているのではないかということ。

簿記を正しく理解すればわかることですが、

・投資をするという資金の運用と

・借金をするという資金の調達は

全く別の物です。

例えば、多額の不動産投資を借金で行い、バブル崩壊などにより思うように投資が回収できなかったとします。

その時に「やっぱり借金をして投資をするのは怖い」という言い方をされますが、怖いのは借金をしたことではなくて、投資が失敗したことでしょう。

本来、投資が失敗するという「資金運用上のリスク」は自己資金で調達したか、借金で調達したかという「資金調達上の問題」とは関係ありません。

自己資金で投資をしても、借金で投資をしてもその投資の成功確率は同じです。

リスクが高まるのは、借金をするからではなく、投資額が拡大するから。

投資額が拡大することで期待されるリターンの額が大きくなる反面リスクも大きくなるという当たり前の関係です。

この際の借金をすることのリスクは、その金利水準が上昇することであり、コストは、お金のレンタル料である支払利息ということになるわけです。

簿記のロジックでみる借金の本当の効能とリスクー左側の問題と右側の問題

借金は悪なのか、手段なのか

多くの日本人が、子供の頃から、「自分の収入の範囲内での暮らしをすべきであり、借金があるというのはもってのほかだ」と教育されているでしょう。

たしかに、浪費を重ねて、借金をしているというのであれば、決して褒められた暮らし向きではありません。

ただ、企業経営上の借金は別の理由でなされることもあります。

例えば、商品を販売する際に、一番リスクが小さくて済むのは先に注文を取ってお金をもらってから、商品を仕入れるということです。

しかし、もっと多く販売をしようと思うのであれば、あえてリスクを取って、先に商品を仕入れて在庫を持ち、お客様に販売した際にも、掛けでの入金を認めるでしょう。

その際には、在庫と売上債権(▲仕入債務)分だけ資金の立替をしなくてはなりません。

もし、手許に十分な資金がなくてその立替ができないのであれば、せっかくの売上と利益を伸ばすチャンスを失ったことになります。

つまり、儲け損ねである「機会損失」が生じていることになります。機会損失は目に見えないので、気がつきにくいのですが、借金は悪だと「いかに借金を減らすか」を優先し、無借金経営を「目標」にすることで、実は、多額の取りこぼしをしており、ライバルとの競争に打ち勝てずかえって無借金経営から遠のいてしまうこともあるでしょう。

むしろ、借金は「手段」として有効活用をすることで、ライバルとの競争に打ち勝つことができれば、その「結果」として無借金経営が実現することもあるのです。

無借金経営は目指すべき姿なのか?愚の骨頂なのか?

語るべきは借金の額ではなくて手許資金の額

借金をすると返済が大変であるということが言われます。

しかし、借金をしたからと言ってすぐに返済が大変になるわけではありません。

例えば、1億円の借り入れをして毎月500万円の返済をしなくてはならないといえば、その返済は大変だということに思えますが、そのまま預金に1億円を残していれば、その500万円の返済はそんなに大変ではありません。

見るべきものは、借金の額や返済額ではなく、手許のお金の額です。

会社は、赤字になったから倒産するわけでもなく、多額の借金をしたから倒産するわけでもありません。

一瞬でもお金が底をついた時点で倒産をするのですから、経営者が最も注視すべきなのは、手許のお金の額だと言えます。

例えば、借金が10億円で手許資金が1億円の会社と、借金が10万円で手許資金が1万円しかない会社であれば、どちらがすぐ倒産しやすいかと言えば、当然後者になるわけです。

では、手許のお金が底をつきそうになってから融資を受ければ無駄な利息を支払わなくて済むかというとそうとも言い切れません。

そのようなタイムリーな資金調達が可能な会社は当然そうすればよいでしょう。

ただ、現実には金融機関の融資に対する姿勢は流動的で、中小企業が必要なときに必要なだけ借りられるという保障はどこにもありません。

むしろ、今まで融資を受けていなかったのに、ピンチだからすぐにお金を貸してほしいと言って貸してくれる金融機関は少ないはず。必ずしも、借金が少なくしておくことが、いつでも借金が出来るというにつながるわけではありません。

そのためには、多少のコスト負担をしてでも、手許資金に余裕を持たせる必要があるのです。

その手許の資金の余裕は、事業の行う上での「選択肢の幅」をももたらします。

逆に手許資金がなければ、取るべき選択肢が取れずにジリ貧になることもあるでしょう。

そのため、もし、例えば「2ヶ月間売上0でも資金ショートしないだけの手許資金残高」という一定金額のお金が確保できていないのであれば、借金は悪だと決め付けることなく「融資を受けてでも手許資金を確保すべき」ということなのです。

なにも、やみくもに借金を増やせと言っているのではありません。

ただ、「借金抑制派」がいう手許の資金の余裕が「無駄使いの温床」になるということは一理あるでしょう。

そうならないためには、きちんとコントロールをする。

日々経費削減に努め、可能な限り早期な資金回収策を講じるべきのは、借金をするしないにかかわらず当然のことです。

しかし、根性論的な経費削減策や早期の資金回収策だけでは乗り切れないような危機を乗り切りチャンスを活かすためには、過度に借金に躊躇してはならないでしょう。

企業にとって借金とは加速装置である

要するに競争上必要な設備投資をするための自己資金を貯めるまでの時間を買い、自己資金だけではできない規模の投資を可能にするなど借金とは会社の成長スピードを上げる加速装置だといえます。

加速するのですから、自己資金だけで経営をするよりもコントロールは難しくなるでしょう。

しかし、ならば「借金は怖いからしない」というのは、「自動車は危ないから運転しない」というのと同じことです。

「自動車に乗らなくても勝てる」レースであればそれでも良いですが、もし、ライバルが加速装置を駆使する中で、「自分一人が歩いて行く」ということが企業経営というレースで打ち勝つ方法なのでしょうか。

もちろん、感情論や信条として「借金をしない」というのは自由です。

ただ、その手前で、借金をすることのリスクとコスト、その損得を正しく理解することが必要でしょう。

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