仕組み預金の利率が高いワケと隠れたリスク

低金利の中では高めの金利の商品ではあるが

普通預金はもとより定期預金であってもほぼ利息は0といってもよいくらいの低金利の中、特定の条件がつく代わりに通常よりも高めの金利の預金があります。

それらは「仕組み預金」や「新型定期預金」などと言われることが多いですが、預金と言っても実際には、一般的な定期預金とはかなりその特性が違います。

高いリターンを得るためには、高いリスクを負うことが、金融商品の基本。

そこで、今回は、仕組み預金が抱えるリスクとはどんなものなのか、考えてみることにします。

主な仕組み預金の種類

仕組み預金とは、通常の預金に「デリバティブ」(金融派生商品)が加わったものです。

デリバティブとは、ザックリと言うと「価格の乱高下リスクを回避するための将来一定金額で売買できる約束」なのですが、将来の価格を先に決めることで、実際にその価格よりも相場が高くなっても定めた金額で購入できる一方、低い相場になっていても割高な価格で買うことになるので、つきつめると将来の相場を読んでどちらかに賭ける”丁半博打”なのです。

つまり、仕組み預金は、将来の金利相場や為替相場などにより損をしたり得をしたりするリスクのある金融商品だということです。

その仕組み預金には、主に次のようなものがあります。

満期特約型定期預金(マルチコーラブル定期預金)

普通預金は、いつでも解約が可能であり、解約により元本割れをすることはありません。

一方、固定金利の定期預金については、満期が定められており、満期日まで当初定めた金利が適用されます。

そのため、当初約束をした金利よりも相場が上がれば、銀行は安い金利で調達できたことになり、銀行の”勝ち”となります。

一方、預金者は、別の預金に預ければもっともらえたであろう利息をもらえる機会を失うため、預金者の”負け”となります。

そして、逆に金利相場が約束したものよりも下がれば、その勝敗は逆になるということです。

要するに、定期預金を組むと言うのは、今よりも金利が上がるか金利が下がるのかという”丁半博打”で「金利は今よりも上がらない」方に賭けるということです。

ですから、定期預金であっても、金利相場による損得は生じます。

ですが、一般的な定期預金であれば、満期日にお金を手にすることができ、それ以前に中途解約をするにしても、約束された金利よりも低い金利が適用されるだけで、元本割れをするようなことはまずないでしょう。

それに対して、満期特約型定期預金は、この預入の満期を金融機関が自由に変更できるのです。

そして、原則として中途解約はできず、万一中途解約をするとそれまで受け取った利息以上のペナルティが課されます。つまり、中途解約をすると元本割れをするということです。

本来、相場は誰にもわからず、その丁半博打は五分五分のはず。それが、銀行にだけ満期の選択権(オプション)があると言うのは、不利な条件を押し付けられているということ。

その分、余計に利息をもらうとはいえ、オプションの金銭的な価値と比べると、設定する銀行に有利になっています。

そもそも、満期より前で中途解約をしたら元本割れをすることもあるのに、その満期を銀行の都合でいくらでも変えられてしまうというのであれば、「主催者の都合で身内が勝つまでゴール位置を変えられるマラソンレースに参加する」ようなものです。

預ける側にとって、相場によっては、想定よりも長期間、不利な金利を我慢しなくてはならないというリスクを抱える上に、「流動性」に大きな制約があることになります。

中小企業オーナーは、いつ投資のチャンスが来たり、アクシデントでお金が必要になるかわからないので、この流動性については、ないがしろにしてはいけません。

仕組預金「プレーオフ」|住信SBIネット銀行

為替参照型定期預金(デュアルカレンシー定期預金)

この為替参照型定期預金は、預入時に定められた「基準為替レート」を満期時点で下回っていた場合には、円で預け入れたお金が外貨で戻されるという特約の付いた定期預金です。

どれだけ円高になったら外貨になるのかという「基準為替レート」は、銀行が定めるものだけでなく、預金者が決めるものもあります。

その際は、円高になっても大丈夫な”のりしろ”が厚くなるほど受け取る金利が少なくなるようになります。

こちらも、大抵は、原則中途解約不可、中途解約をすれば元本割れと言った制約があります。

満期時に円高が進み、外貨の価値が下がっているところで、「はい、外貨で戻しますよ」と言われては、円に換算すると多少余計に利息をもらったとしても、全くの元本割れということもあるでしょう。

為替については、相場の予測は不能であり、五分五分の勝負がされているので、仮に為替リスクがあったとしてもそれは致し方ないもの。

いくら円高になったら外貨で戻すかという「基準為替レート」も預金者自身が定めたものです。

ですが、実際には、この為替参照型定期預金への預入は、「満期時に基準為替レートで円を買う”義務”を銀行や銀行を通じて誰かに売る取引」をしているのと同じです。

この取引は、円安になった時には、約束した利息という”天井”のあるリターンを受け取る代わりに、円高になった時には”底”のない為替リスクを背負わされており、偏ったものです。

それも、その取引を通じて、銀行に多額の手数料を差し引かれた分だけ、割の悪い丁半博打を挑まされていることになるのです。

そんなに、為替相場の読みに自信があるのであれば、しょっぱい利息などで我慢することなく、手数料のほとんどかからないFX(外国為替証拠金取引)をやったほうがよいのではないでしょうか。

仕組預金「コイントス」|住信SBIネット銀行

仕組み預金はそのしくみをよく理解してから

仕組み預金に預入をする人のほとんどは、「少しでも多くの利息は欲しいが、リスクはあまり取りたくない」という人のはずです。

仕組み預金は、その高い金利に目が行きがちですが、「高いリターンを受け取るには、高いリスクを受け入れる必要がある」というファイナンスの原則に立ち返り、どんなリスクが上乗せされているのか、そのリスクが期待できるリターンと割の合うものなのかを見極めて取引をするようにしてください。

見えない形で負担させられたリスクやコストに気が付かないなら、カモがネギ背負って鍋の中で寝ているようなもんでしょう。

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