役員や従業員の研修費用を会社が負担した時は給与として課税されるのか

 

研修費用を会社が負担するケースは多いが

知識習得や人材育成のために役員や従業員をセミナーや研修に参加させるということがあるでしょう。

それらの費用は、会社がその全部や一部を負担するケースが多いと思われますが、これらの費用は、研修を受講した人への給与となるのでしょうか?

確かに、本来であれば自分で負担をしなくてならない受講料を会社が負担してくれているのであれば、その分受講者は得をしていることになります。

一方で、受講者からすれば、会社の命令で渋々参加したのに給与課税までされたらたまらんということにもなるわけです。

そこで、今回は、研修費用を会社が負担した場合の課税関係についてまとめてみます。

研修費用は一定の要件を満たせば給与課税なし

役員や従業員が参加した研修費が給与課税がされるのかについては、所得税基本通達で次のように記されています。

所得税基本通達36-29の2 

使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限り、課税しなくて差し支えない。(平28課法10-1、課個2-6、課審5-7追加)

具体的に言うと、役員や使用人に、仕事に関係のある技術や知識を習得させるための費用や学校の授業料などの学資金を支給する場合には、次の要件を満たしていれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。

1 技術や知識の習得費用

技術や知識の習得費用は、次の三つのいずれかの要件を満たしており、その費用が適正な金額であれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。

(1)会社などの仕事に直接必要な技術や知識を役員や使用人に習得させるための費用であること。

(2)会社などの仕事に直接必要な免許や資格を役員や使用人に取得させるための研修会や講習会などの出席費用であること。

(3)会社などの仕事に直接必要な分野の講義を役員や使用人に大学などで受けさせるための費用であること。

つまり、役員でも従業員でも、「仕事に直接必要」なものであれば、給与として課税は不要ですが、「仕事に直接必要のない」自己啓発的な知識習得やモチベーションアップのための費用を会社が負担すると給与として課税がされるということです。

2 学資金

学資金を支給する場合には、役員と使用人ではその取扱いが違います。

役員や使用人に学資金を支給する場合には、原則としてすべて課税されます。

しかし、

(1)使用人本人が通学している高校までの学資金を支給する場合で、

(2)その修学のための費用として適正なものは、

給与課税しなくてもよいことになっています。

ただし、役員又は使用者である個人の親族のみをその対象とする場合は給与として課税がされます。

また、大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校の学資金を支給する場合には、給与として課税されます。

ですが、上記1の「仕事に直接必要」なものに該当するものについては給与として課税がされません。

運転免許取得費用は運転手であれば給与課税なし

では、運転免許取得のために教習所に通う費用を会社が負担した場合はどうでしょう。

運転免許というのは、個人に帰属する資格でありますが、その人が運転手であるなど「仕事に直接必要」なのであれば、給与課税はしなくてもよいのではないかと。

一方、運転手以外の従業員への運転免許取得費用の支給については、「仕事に直接必要」とはいえず、給与課税の可能性が高いと言えます。

税理士資格取得費用などは給与課税の可能性が高い

税理士や弁護士など一身専属の資格で、その資格によって「独立が可能」な資格取得の費用を会社が負担すると、給与課税の可能性が高いと言えます。

税理士事務所ならば、税理士資格はどう考えたって「仕事に直接必要」なわけですが、それでも給与課税がされそう。

おそらく、「経理担当者が簿記検定」とかならいけそうな気もするので、明確な線引は曖昧なのですが、「常識的に考えてそれは自分で負担するだろう」というような独立可能な一身専属な資格取得費用を会社が負担すると給与課税されるケースもあると思っておいたほうが良さそうです。

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