税額控除や所得拡大税制は後から適用することはできるの?|当初申告要件という税理士泣かせ

税制上の優遇措置は黙っていては受けられない

税法には、原則的な課税だけでなく、一定の要件を満たす経済取引をした場合には、税法上の特例措置が講じられています。

それらの特例措置については、勝手に適用されることはなく、自らがその適用を受ける旨の申告をすることではじめて税制上の優遇が受けられるのです。

では、当初の申告段階ではその優遇措置を受けることの申告をしていなかったものの、後から申告をすることでもその優遇措置を受けることができるのでしょうか?

今回は、税制上の優遇措置を受ける際の申告のタイミングとその適用についてまとめてみることにします。

税制上の優遇措置には本法と措置法がある

国の政策的な配慮から一定の施策を講じた事業者に対して本来の税負担よりも軽減される税制上の優遇措置については、法人税などの「本法」によるものだけでなく、特定の目的を達成するために期限を定めて講じられる「租税特別措置法」によるものがあります。

本法によるものは、改正までは恒久的な取り扱いがされるのに対し、租税特別措置法は当初からその適用期限が定められ、その期限が来るたびに廃止や改正、延長などがされます。

法人に関する税制優遇措置で「法人税法によるもの」「措置法によるもの」には、主に次のようなものがあります。

法人税法による税制優遇措置

・受取配当金の益金不算入措置

・国や公益法人に対する寄付金の損金算入措置

・受取利息等の所得税額控除

租税特別措置による税制優遇措置

・中小企業投資促進税制

・所得拡大促進税制

・少額減価償却資産の即時損金算入

修正申告などでは適用できない当初申告要件

これらの優遇措置には、最初の申告書の提出(申告期限後の提出も含む)で適用を受ける旨の申告がされていないと適用されないものがあります。

この当初の申告においてその特例の適用を受ける旨の記載がされた申告書の提出や一定の書類の添付がされることが必要であるものを「当初申告要件」といいます。

つまり、この当初申告要件の付された優遇措置については、後出しでの適用はできないということです。

実は、この当初申告要件は法人税法の優遇措置にも多く適用されていましたが、平成23年度の改正により上記の「法人税法による優遇措置」についての当初申告要件は既に廃止されています。

ですから、これらの優遇措置については、後から気がついての更正の請求や税務調査で追徴税額が生じてからの修正申告であっても適用を受けることが可能です。

しかし、平成23年度の改正後も租税特別措置法による優遇措置については、当初申告要件が付されているものがあります。(中小企業の交際費の定額控除など平成23年度改正で当初申告要件の廃止されたものもあります)

そのうち、最も金額も大きく影響が大きいであろうものが「中小企業投資促進税制」と「所得拡大促進税制」です。

中小企業投資促進税制とは、中小企業者等が一定金額以上の機械装置などの設備投資をした場合には、取得価額に一定割合を掛けた金額だけ法人税の負担を軽減するものです。

所得拡大促進税制とは、一定の要件を満たす中小企業者等が、前期の給与総額よりも当期の給与総額が増加した部分に一定割合をかけた金額だけ法人税の負担を軽減するものです。

これらの税制優遇措置については、当初申告要件が付されているため、最初の申告書提出の段階でこれらの適用を受ける旨の記載がない場合には、後から更正の請求や修正申告書の提出をしても適用を受けることができません。

ただし、税務調査などで所得が増加したことによりこれらの税額控除額の上限額が拡大した部分については、たとえ当初の申告書に記載をされていた金額より増えていたとしてもその部分についても税額控除の適用が可能になりました。

つまり、

・当初申告で税額控除を受ける意思を表していない→後出しは一切ダメ

・当初申告で税額控除を受ける意思を表している→税務調査などでその適用金額が増えた場合にはその金額にも適用が可能

ということなのです。

それだけこれらの規定は当初の申告時点で忘れずに適用する旨の申告書への記載や添付書類の提出が必要ということ。税理士としては忘れたらアウトというプレッシャーの掛かるイヤな優遇措置ですね。

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