弥生会計がインボイス対応になったのでどれくらい事務負担が増えるのか検証してみた

インボイス制度になるとどれくらい事務負担が増えるのか

2023年10月より消費税にはインボイス制度が導入をされます。

これは消費税の納税額の計算上、売上に伴い受け取った消費税額から控除する仕入れに伴い支払った消費税額(仕入税額控除)は登録した適格請求書発行事業者が発行したインボイスによるものとするものです。

これまでは、仕入税額控除の可否を検討する際には、支払う相手が誰なのかの判定は不要でしたが、インボイス制度になると支払う相手が適格請求書発行事業者(適格事業者)なのかそうではないのかの判定が必要となります。

その分、会計処理の事務負担が増えることが予想されるのですが、会計ソフトを導入している場合、どの程度、入力の手間が増えるのかを知っておく必要があります。

そこで、すでにインボイス対応をした弥生会計の入力画面を見ながらどの程度入力の手間が増えるのかを検討してみることにします。

弥生会計23R2の機能

弥生会計23のうち、インボイス制度に対応したバージョンは「23R2」というもの。

そちらを開くと以下のような表示が示されます。

こちらは「今後表示させない」をクリックすると次からは表示されません。

インボイス制度が仕入税額控除に関しての改正ですから、具体的に変わるのは「課税仕入取引」の部分です。

売上については何も変わりはありませんし、仕入税額控除の額を概算でも良いとする簡易課税を選択していれば会計ソフトへの入力についてインボイス制度の影響はありません。

増える入力項目は適格と区分記載の判定

では、現実に仕訳の入力箇所について、どの部分が変更されているのでしょうか?

仕訳日記帳をみると今までの摘要欄の後ろに「請求書区分」と「仕入税額控除」という入力欄が追加されています。

この「請求書区分」のところで、適格事業者であれば「適格」をそうでなければ「区分記載」を選択します。

その判定は、請求書や領収証にT+13桁の登録番号があるかないかを見て、あれば「適格」、なければ「区分記載」を選択してください。

■適格事業者の場合

■適格事業者でない場合

「仕入税額控除」の欄は、自動で判定がされるようです。

この入力をするとちゃんと仕入れについての控除対象の消費税額が、総額55,000円で適格事業者の場合には、5,000円(55,000円/1.1×0.1)、そうでない場合には4,000円(55,000/1.1×0.1×0.8)と計算されます。

なお、この「80%控除」は消費税導入から3年間の経過措置であり、その次の3年間は「50%控除」、その後は「0%控除」となりますが、そちらは入力した日付で判断をするのでしょう。

ちなみにマネーフォワードでは、インボイスという入力欄に適格というチェックボックスをオン・オフで切り替えます。

■マネーフォワード

freeeもインボイスには当然対応するのでしょうが、入力画面を見てもどこで適格事業者か否かを登録するのかまだわかりませんでした。

継続的な取引は経費に補助科目を

仕入れや経費の取引について、いちいちこの判定と入力が必要になるということですと、確かに面倒くさいです。

ですが、仕入れや経費の勘定科目について、相手先ごとの補助科目を設定し、その相手先が「適格」なのか「区分記載」なのかを登録してしまえば、あとはそれがデフォルトとして入力がされるので、継続的な取引先については、一度補助科目を登録することでこれらの手間は省けることになるでしょう。

クレジットカードやネットバンキングからの自動仕訳機能についても、自動仕訳のルールを相手先ごとに定めることでその判定や入力の手間も省けるはずです。

■適格事業者の場合

■適格事業者でない場合

インボイス制度導入を機会に補助科目の大掃除を

確かに、補助科目で相手先が適格か否かを登録しておけば継続的な取引ついての判定と入力は不要となります。

しかし、買掛金の残高には、相手先ごとの補助科目をつけることは多いものの、仕入れや経費について相手先ごとの補助科目をつけることはあまりないのではないかと。

これまでなかった補助科目をつければ、当然そのための入力の手間は結局増えてしまいます。それでも一々判定をしなくても良くなるのはありがたいですが。

なお、補助科目は、例えば借入金や地代家賃などのように決算時に科目内訳書に明細を記載するなどあえて数字を集計する必要があるものについてつけるべきものです。

補助科目は思いつきでなんとなく設定してしまうとグチャグチャになりがちですが、そこに経費について相手先ごとの補助科目を乗せてしまうとカオス状態になることが容易に予想できます。

インボイス制度導入に合わせて、意味不明な補助科目は一旦削除した上で、集計や入力の手間を省くにはどんな補助科目を設定すればよいのか大掃除をしてみると良いでしょう。

会計ソフトを利用していればそれほど事務負担は増えない

ということで、インボイス制度になるとどれだけ事務負担が増えるのかというと、売り手として請求書を発行するのに、これまで販売管理ソフトを利用していた場合や、Excelで作成していたとしても、消費税額、消費税率も記載していたのであれば、登録番号を一度設定するだけです。

買い手としての会計処理についても、会計ソフトを利用してれば、中小企業だったら一手間増えるくらいのことですよ。

理論上は、仕入や経費の支払いのたびに登録番号が正しいのか、公表サイトで確認が必要になりますが、税務署もそこまで目くじらを立てることはなさそう。インボイスについては、登録番号の真贋をチェックするのが筋ですが、実務上は登録番号の有無をチェックすれば良いのではないかと。

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まあ、現実には、細かい疑問点は多々出てきますけどね。それでも巷でいうほど「膨大な事務負担ガー」なんてことにはならないでしょう。

ましてや、これまで免税事業者であった小規模零細事業者は簡易課税を選択すれば、買い手としてのインボイス制度の事務負担なんかないんですから。

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