合同会社の事前確定届出給与|「職務執行開始日」を巡る落とし穴と対処法

目次

株式会社と合同会社で取り扱いが異なることもある

役員への給与を損金に算入するためには、一定期間以内の「定期同額」であることが原則です。

どうしても賞与の支払いをしたい場合、「事前確定届出給与」といって、あらかじめ税務署に届け出た金額・時期どおりに支給することが必要になります。

この事前確定届出給与は、役員であっても、住宅ローンなどの都合でどうしても賞与支給をしたいという場合、「だったら利益調整に使わないよう先に金額を税務署に届けておけ」という制度です。

しかし、現実には、社会保険料の削減という税法が予定をしていない方法で利用されることも多いものです。

その中には、国民健康保険の負担を免れるために設立をしたような合同会社という小さな会社も含まれます。

通常、法人税では、株式会社と合同会社は同じ普通法人とされ、その取扱に違いはありませんが、この事前確定届出給与については、合同会社ならではの注意点があるのです。

そこで今回は、令和7年2月、東京国税局から公表された「合同会社の社員に対して事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取扱いについて」という文書回答事例を踏まえて、合同会社で事前確定届出給与を活用する場合の注意点についてまとめてみようと思います。

事前確定届出給与で定める「職務執行開始日」がない

事前確定届出給与に関する届出書の届出期限について以下のように定められています。

株主総会等の決議により、役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定めをした場合におけるその決議をした日(同日がその職務の執行の開始の日後である場合には、その開始の日)から1月を経過する日とし、

その1月を経過する日がその開始の日の属する会計期間開始の日から4月を経過する日後等である場合には、その4月を経過する日等とする旨規定されています。

要するに、会計期間開始の日から4ヶ月以内と株主総会などの日から1ヶ月以内のいずれか早い日までに提出することが必要だということです。

事前確定届出給与の届出書には、その給与支給の対象期間である「職務執行期間の開始日」を記載する必要があります。

株式会社であれば、定時株主総会の開催日がその起点となるのが一般的です。

では合同会社ではどうでしょうか。

実は、合同会社に社員総会の設置は義務づけられていません。

ほとんどの合同会社は社員総会を設けていないのが実態です。

つまり、社員総会の定めのない多くの合同会社では、事前確定届出給与に記載すべき「職務執行期間の開始日」がわからないことになります。

合同会社で損金算入のために何をすべきか

届出書の提出期限内の任意の日付を「職務執行期間の開始日」として記載していることも多いはず。

ですが、合同会社でも確実に事前確定届出給与を損金に算入するためには、以下のように定款の見直しを行いましょう。

(1)社員総会の規定がなければ追加をする

(2)業務執行社員の任期の定めを追加する

職務執行期間の開始日を明確にするために、社員総会を実施するという規定を定款に追加をします。

さらに、合同会社では、業務執行社員(≒役員)の任期の定めがありませんが、「職務執行開始日がいつか」を明示するためにも、任期の定めをしたほうが良いでしょう。

なお、株式会社と異なり、定款で定めた任期が満了しても、役員変更(重任)の登記は必要ありません。

税務調査で本当に指摘されるのかはわからないが

今回の国税庁が公表したのは、文書回答事例という「こういう処理をしようと思っているが、この考えてあっているのか?」という納税者からの問い合わせに国税庁が回答をしたものです。

「うちは社員総会の定めのある合同会社だけど、社員総会の日を株主総会の日と同様と取り扱ってもいいんだよね?」と聞かれたから「まあ、そういう取り扱いになるんじゃないの」と答えたということです。

何も、税務調査でこういうミスが多いから注意せよというものではないのです。

どこにも「社員総会の定めのない合同会社は事前確定届出給与通りに賞与を支払っても、損金不算入だから注意するように」と言うことは書いてないです。

ですから、税務調査で、果たして合同会社が届け出られた通りの事前確定届出給与を支給しているのをみて、定款を確認し、「社員総会の規定がないから、事前確定届出給与を否認する」かというと、個人的には疑問もあります。

事前確定届出給与は、税務調査ではそこまで重視される項目ではないですから。

とはいえ、何も指摘事項がない中で、形式の不備だけで追徴課税が取れるとなれば、杓子定規に規定を持ち出してくることもあるのが税務調査なので、やはり、無駄なツッコミを受けないためにも、事前確定届出給与を支給する合同会社は定款の見直しをしておいたほうが良いでしょう。

定款の修正なんて大した手間ではないですからね。

「合同会社の社員に対して事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取扱いについて」|東京国税局

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