ここまでお読みいただき、遺産相続対策の必要性について理解いただけたことでしょう。
そこで、これからは「あなたが今日から出来る相続対策」について話していきます。
交通事故などで急になくなったとき一番困るのが、「資料の散逸」です。
つまり、どこにどの資料があるかがわからなくなるのです。
特に問題となるのが生命保険。
というのも生命保険自体は遺族が請求しない限り保険金を受け取ることができないからです。
預金から保険料が引き落とされていればまだなんとか把握出来ます。
ですが、既に保険料の払込期間が終わっているような終身保険の場合、全く預金にも動きは出てこないのです。
「保険証券がどこにあるかわからない」ではせっかく保険料を支払っていた生命保険も日の目を見ないこともあるのです。
また、最近はネットで株式などの取引を行う方も多いでしょう。
こちらも、取引を行ったときには紙ベースでの取引記録が送られてくるはずです。
しかし、管理コストを軽減するためネットでの取引報告のみを選択している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その場合には、すぐに株式を発見することはできません。
特に海外で開設した銀行口座などもっとわかりにくいでしょう。
奥様をはじめ家族に内緒で行っているような金融取引はそのまま誰にも相続されない恐れもあるので要注意です。
それだけではありません。
場合によっては、「こっそり行っていた信用取引がそのまま継続され、自分の死後大暴落をして遺族が知らない間に多額の追証を請求される事態になっていた」など笑えないことにもなりかねません。
では、そのようなものを回避するにはどうしたらよいのでしょうか。
それは、極めて簡単なことです。
保険証券、預金通帳のコピー、株式の取引記録などを一つのクリアフォルダで一元管理しておくのです。
さらに、「どこに連絡をすれば良いか」を書いた連絡先リストを加えたものを作っておくことをオススメしています。
ちなみに私は、飛行機に乗るときなど、万一の場合に備えてこのクリアフォルダを一番目につきやすい事務所の机の上に置いてから出発するようにしています。
「これだけ読んで、勧める相続対策がクリアフォルダか!」と思う方もいらっしゃるかも知れません。
ですが、現実にはこの対策で少なくとも資料の散逸はかなりの部分が防げるのです。
私のお客様の中にも「俺が死んだらあとは先生に聞いてくれと」ご家族におっしゃる方がいます。
それよりも是非「どこに資料があるのか」、「どこに連絡してほしいか」をだけでも明らかにしておいて欲しいものです。
決して難しいものでもコストもかかるものではありませんからね。
ではお聞きします。
「両親が亡くなる前にこの人にだけは知らせてほしいという人をご存知ですか?」
「墓を供養してくれている菩提寺には盆暮れにどれだけの掃除料を支払えばよいのかご存知ですか?」
なかなか答えられる人は少ないでしょう。
そんな人は、これらの点を含めご両親に「何かあったときに慌てないために財産や名簿のリストアップをしてほしい」と呼びかけてみてください。
このクリアフォルダと財産・連絡先一覧こそが、ご両親にまずは必要性を理解して頂く、「相続対策の重要な第一歩」となるのですから。