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特殊支配同族会社への規制逃れには行為計算否認で

ほぼ月刊ワンポイントアドバイス<番外編>
既にご承知の通り、一定の同族会社が支払うオーナーへの役員報酬については、その給与所得控除相当額の損金算入を認めないという規制が行われるのはご存じのことでしょう。
第三者がその株式の10%超を所有することで、この規制をクリアすることは可能です。
しかし、従来第三者が株式を所有していなかった会社が、見え見えの自社株移転を行った場合には、この規制を回避するため以外の「経済合理的な理由」が必要となるのは当然のことです。
このように、個別の法律では合法であっても、租税回避の可能性のあるものに対応するための規定として「同族会社の行為計算否認規定」が用意されているのです。
まあ、わかりやすく言えば、個別規定をすり抜けてしまった租税回避を
最後の砦として守る「税法のゴールキーパー」のようなものと言って良いでしょう。
ちなみに同族会社と書いてありますが現在の解釈では「純経済人として不自然不合理な取引は、租税回避とみなして課税する」ということで同族・非同族を問わず適用がされます。
この規定自体は、結構議論の余地の多い規定と言えます。なぜなら、この規定を拡大解釈すれば「法律には書いてなくてもズルイものはズルイ!」と課税庁が考えれば個別の条文を無視して課税がされてしまうからです。
それだったら、極論をすれば「個別規定なんて何にもいらない。行為計算否認規定に従ってお上が課税すると言ったら課税する」と言ったことになりかねませんよね。
そうなると租税法律主義(税金は刑罰と同じで国民の権利・財産を奪うものだから、法律に書いていないことに関しては課税を受けない)という憲法に書かれたことに抵触してしまうことになるのです。
そのため、法人税に関しては、ほとんどこの規定が発動される場面はなくなりました。
一方では、所得税に関しては、不動産管理会社に多額の管理料を支払っている場合や、とんでもない高額の資金を無利息でオーナーが会社に貸していた場合などにこの規定が適用されたことは話題になりましたね。


実は、私は「同族会社の行為計算否認規定の今日的意義」というテーマで学生時代に論文を書いたことがあります。
そのときには「行為計算否認規定のウルトラマン説」と言うのを唱えました。
つまり、「個別規定という警備隊をすり抜けた租税回避という怪獣を倒すにはもうウルトラマンしかいない。だけど、警備隊でも対応出来るものまでいちいちウルトラマンが出てきたら、街がボロボロになってしまう。」
だから、「この規定が利用されるのは本当に限られた場面だけで、まずは個別規定での対応を優先しなくては、租税法律主義に抵触する」ということですね。
この説は、発表会では非常に好感触だったのですが、「アカデミックではない!」という理由で、「サッカーのゴールキーパー説」へと実際の論文ではトーンダウンされられちゃいましたけどね。[emoji:e-263]
どっちにしろ、この規定は国税庁としては出来れば使いたくない規定でしょう。
というのもこの規定に従って更正文を書くのはかなりしんどいはずだからです。それこそ、こちら側から見ても「突っ込みどころ満載」のものとなり「かなり良い勝負」が出来るはずです。
「経済的に合理的な理由がない」ということを説明すること自体結構大変ですからね。
例えば、「業務提携のため株式を持ち合いした」などと言われてそれを経済合理性がないと言いきるのは相当難しいと思うのですが。
もちろん、株式を分散すること自体、後々の副作用も考える必要はあるでしょう。
株式を分散する場合には、この規定の回避以外にも功罪をきちんと比較検討して見て下さい。
その上でもその方策を採用したのであれば、結果的には十分経済合理性のある取引になるはずですからね。

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