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一定の要件を満たすマイホームを購入した場合、その年末の借入金残高に応じた金額を所得税及び住民税から控除ができる「住宅ローン控除」
その適用を受ける場合、確定申告や年末調整に際し、金融機関が発行する「残高証明書」の提出が求められていました。
しかし、近年その方式に変更が加えられ、わざわざその残高証明書を提出しなくても良い方向に変わろうとしています。
ただ、年末調整でこの住宅ローン控除を受ける場合、その事務処理をする企業にとっては、かえって面倒なことになりそうです。
そこで、今回は、住宅ローン控除を適用する際の事務手続きの変更についてまとめてみようと思います。
一定の要件を満たす住宅を取得し、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受ける最初の年は、会社員などの給与所得者であっても、必ず確定申告を行う必要があります。
住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|タックスアンサー
その際には、以下の資料の提出も求められています。
住宅借入金等特別控除額の計算明細書
住宅ローン控除の適用額を計算するための書類
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 ★
年末の金融機関からの借入金の残高を証明するための書類
家屋の登記事項証明書
所有者の確認や適用対象となる床面積であるかを確認するための書類
住宅の工事請負契約書または売買契約書の写し
住宅の取得価額を証明するための書類
2年目以降、給与所得者は、年末調整時に、勤務先に必要資料を提出することで、住宅ローン控除の適用を受けることが可能です。
事業所得や不動産所得のみの個人事業主については、2年目以降も、確定申告時に必要資料の提出をした上で、この住宅ローン控除の適用を受けることになります。
ただし、いずれの人も、初年度に提出を求められた資料を毎年出さなくてはいけないわけではありません。
家屋の登記事項証明書や住宅の売買契約書などは、金額が変わることがないので、2年目以降の提出は不要です。
なお、住宅ローン控除の適用額の計算については、その適用期間の分の「住宅借入金等特別控除申告書」というものがまとめて税務署から送付されてきます。
そちらの「住宅借入金等特別控除申告書」を確定申告時または年末調整時に提出をしてください。
住宅ローン控除を受けるには、その年の12月31日時点での住宅ローン残高を証明する金融機関が発行した「年末残高等証明書」の提出が必要でした。
この煩雑さを解消するため、令和5年度の税制改正において、新しい方式(調書方式)では、住宅ローンの債権者である金融機関が、納税者の代わりに「年末残高調書」という形で控除に必要な電子データを作成し、税務署へ直接提出することになったのです。
金融機関がこの新しい電子データ交付方式(調書方式)に対応し、国税庁へ情報を提出している場合、以下の手続きを行うことで、原則として金融機関から交付された紙の年末残高等証明書(残高証明書)を税務署への申告書類に添付する必要がなくなります。
納税者(居住者)は、住宅ローンを借り入れている金融機関に対し、「住宅借入金等特別控除の適用申請書」を提出する必要があります。
この申請書には、マイナンバー(個人番号)を記載して提出することが求められます。
2年目以降の申告(年末調整/確定申告)時には、マイナポータルなどを介して必要な情報が提供されます。
特にマイナンバーカードを利用し、e-Taxで確定申告する場合、マイナポータル連携を利用すれば、年末残高等の情報を取得し、申告書へのデータ連携が可能となります。
年末調整時に住宅ローン控除の適用を受ける方は、次の区分により必要資料を勤務先に提出をする必要があります。
電子交付された「住宅借入金等特別控除証明書」のデータをマイナポータルからダウンロードし、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書のデータ(又は書面)とあわせて給与の支払者に提出してください。
なお、給与の支払者が電子データの提出を受付できず、書面でしか受領できない場合は、QRコード付証明書等作成システムを利用して、書面で出力して提出してください。
「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細書」の必要事項を記入し、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書とあわせて給与の支払者に提出してください。
年末調整で住宅借入金等特別控除の適用を受ける方へ|タックスアンサー
これの一体どこが簡素化なんでしょうか?
多くの従業員は、これらの住宅ローン控除について適切な判断ができているわけではありません。
そのため、とりあえず、必要書類を年末調整時に勤務先に提出してもらうことで、会社の経理担当者や税理士がその計算のサポートをしていることが多いでしょう。
それが、電子交付された場合、マイナポータルからダウンロードしたデータを、勤務先に提出するようになるのだと。
そんなシステムの利用を従業員に強要できる大手企業ならば、いずれは合理化されていくのかもしれません。
しかし、年末調整を税理士に外部委託していると、全従業員のアドレスの管理をそれらの先と共有し、税理士が、更新をしていかないといけない。
そもそも、顧問税理士が、全顧客にこのシステムを使ってほしいと強要することは、なかなか難しいです。
その上、不慣れな従業員に対して、その提出のサポートで、経理担当者や税理士が、今以上の時間が取られることが今から目に浮かびます。
その上、厄介な問題もあります。
この年末残高調書を用いた方式は、原則として令和6年1月1日以降に住宅に居住を開始した者を対象としており、令和7年以降に行う申告手続きから適用されるとされています。
ただし、この新しいシステムは、全ての金融機関で一斉に導入されているわけではなく、システム対応が間に合わない金融機関については、従来の残高証明書を交付する経過措置が設けられています。
また、マイナンバーを記載した「適用申請書」を金融機関に提出していない場合でも、税務署等から年末残高証明書の情報が通知されることはありません。
年末残高調書を用いた方式(調書方式)に対応した金融機関の一覧|タックスアンサー
いや、ホント迷惑だわ。
勝手に「税務DX」だと言って、法人税の予定納税の納付書を送付してこなくなったのだって、その尻拭いを現場の経理担当者や税理士がすることでなんとかなっているのに。
それでも、結局、「紙の納付書を送ってくれ」という電話が税務署に山ほどかかってきているそうじゃないですか。
こんなセンスのない電子化で、一体誰が得をするのですかね。