遺言は、泥沼の相続問題から抜け出す
「最後の命綱」であるとお話したと思います。
それでも、あまりに生々しい話のため、
なかなか遺言を書こうと思う人はないのでは。
でも、ここで言う人は、絶対に遺言を書いて欲しいものです。
一人目は事業承継の必要のある人。
特に自社株のみしか財産がない方は、
生前からオーナーであるお父さんが、
「誰に事業承継をさせるか」を明示しておく必要があります。
また、相続税負担を圧縮するために、
生前から子どもたちに自社株を贈与する方が
いらっしゃるでしょう。
その場合も、
できれば「事業承継者のみに株式を贈与し、
それ以外の方には現預金等の贈与」をする
というような贈与をしてください。
決して、まだ事業承継者が決まっていないからと
「兄弟に同じ比率で自社株を贈与する」などは
なさらないでください。
最悪の場合、株を持った事業承継者以外の人か
ら株主代表訴訟やライバル会社への株譲渡を
ちらつかされ高額での自社株の買取を
要求されるリスクもあるのです。
相続税対策のために事業が継続できなくなったら、
それこそ本末転倒もはなはだしいとことですよね。[emoji:e-263]
もう一人目の是非遺言を書いておいてほしい人。
それは再婚をなさった方です。
再婚をなさった方は、「先妻のお子さんと後妻さんが相続人」
という場合も多いでしょう。
そのような場合には、
「一次相続」の時点から「かすがい」となる調停役がいないため、
直接ガチンコ対決になる場合があります。
以前、私のお客様であった方でも
生前は非常に仲良くお父さんの介抱をなさっていた親子が、
相続を機会にものすごい血みどろの係争になっている
例もあります。
そのような方は
是非生前から「どのように遺産分割をしてほしいか」を
自らあらわしておくことが必要ということでしょう。
「自分の思いはいわなくてもわかっているはず」は
遺産分割では通じないことをご理解ください。
最後の遺言を書かなくてはならない人。
それは「お子さんのいらっしゃらない夫婦」です。
「うちは、子供がいないから遺産分割でもめようがないよな」
というご夫婦こそ遺言が必要なのです。
配偶者には確かに常に相続権はあります。
しかし他の人間にも相続権はあり、
その第一順位が子供なのです。
もし、子供がいない場合、第二順位は父母などの直系尊属、
第三順位が兄弟姉妹であるため、
配偶者は父母や兄弟姉妹、
あるいは一度も顔を合わせたことのない甥や姪とも
遺産相続で争わなくてはならない場合もあるのです。
ですから、そうならないためにも、
きちんとお互いに遺言を作成しておくことが必要ということです。
あと、遺産相続のもめ事を親御さん自らが原因を作っている
と思われることがあります。
それも、それ程の悪気もなく・・・
それは、親御さんが特定の子供に
「お前には●●を残してあるからな」と
子供が若いうちにやたらといってしまう場合です。
言った本人は覚えていないのかも知れませんが、
それを聞かされた相続人は、先ず間違いなく覚えています。
でも、その後入院費用を含めて多くの資金が必要になった
結果、そのお金を親御さん自身が使ってしまう場合も
あるでしょう。
そうなると、どう調べてもそんなお金はないのに、
いくら私がないと説明しても、
「間違いなくお父さんは私にお金を残してくれていると
言っていた。どこかに隠しているはず。あんたもグルだろ!」と
そのまま裁判になった場合すらあるのですから。[emoji:e-263]
本当に、余計なことは言わないでね。[emoji:e-263]
では、次回は、「こんな遺言は書いてはいけない」
というテーマでお話し致します。