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法人で有する債権債務や金融商品については、決算期に時価評価が必要なものと取得時の評価のままで良いものがあります。
そこで、今回は、債権債務や金融商品についての税務上の決算時の評価方法についてまとめてみようと思います。
ドルやユーロなど外国通貨そのものを所有している場合には、期末に時価評価が必要となります。
売掛金や買掛金、貸付金や借入金などの債権債務のうち、外貨建てのものについては、時価評価が必要(期末時換算法)と時価評価が不要(発生時換算法)のものがあります。
発生時換算法又は期末時換算法のいずれかを選定して円換算することが認められている外貨建資産等のその期末換算の方法は、外国通貨の種類ごとに、かつ、次の区分ごとに選定することができます。
なお、以下の資産について、選定をする届出がされていない場合の評価方法は、次のように定められています。
外国通貨を入手または支出をする期限がその事業年度終了の日の翌日から1年を経過した日の前日までに到来するものを短期外貨建債権債務といいます。
売掛金や買掛金、貸付金や借入金などのうち、決済が決算日から1年以内のものについては、期末に時価評価が必要となります。
また、外貨建預金のうち満期日が決算日から1年以内のものについても、期末に時価評価が必要となります。
上記(1)以外の外貨建債権債務である、決済が決算日から1年超のものについては、期末に時価評価は不要となります。
また、外貨建預金のうち満期日が1年超のものについても、期末に時価評価は不要です。
株式や債券、投資信託などの有価証券については、その所有目的により評価方法が異なります。
売買目的有価証券とは、取引に専ら従事する者が、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券などのことをいいます。
この専任担当者による短期売買目的有価証券については、期末に時価評価が必要です。
上記(1)以外の長期的な資産運用目的や会社支配目的で所有する有価証券については、期末に時価評価は不要です。
なお、これらは、円建の有価証券だけでなく、外貨建の有価証券にも適用がされます。
つまり、外貨建の有価証券であっても、売買目的以外であれば、為替についても取得したままの価額で評価することになります。
先物取引とは、元となる商品について将来の決められた日に決められた価格で売買することを事前に約束する取引です。
値動きの激しい原材料などを安定的に購入したい場合、将来の買取価格を事前に約束することで、その価格変動リスクをヘッジ(回避)することができるわけです。
ですが、将来の買取価格を定めることで、その約束をした金額よりも相場が高くなっていれば、その差額分だけ得をし、約束した金額よりも相場が安くなっていれば、その差額分だけ損をすることにます。
法人がこの先物取引をしている場合、期末に決済をしたものとして損得を評価します。つまり、期末に時価評価をする必要があります。
FX(外国為替証拠金取引)とは、為替差益や金利差を狙って為替取引を証拠金を使ってレバレッジをかけて行う取引のことです。
このFX取引については、期末に時価評価をする必要があります。
暗号資産(仮想通貨)とは、電子的に記録され、移転できる財産的価値のことであり、主な暗号資産には、ビットコインやイーサリアムなどがあります。
これらの暗号資産については、原則として期末に時価評価が必要です。
法人が有する債権債務や金融商品について、時価評価の必要性をまとめると次のようになります。
区分 | 期末時価評価 |
外国通貨 | ◯ |
債権債務・外貨建預金(1年以内) | ◯ |
債権債務・外貨建預金(1年超) | × |
有価証券(専任担当短期売買目的) | ◯ |
有価証券(長期保有・支配目的) | × |
先物取引 | ◯ |
FX | ◯ |
暗号資産 | ◯ |
時価評価が必要というと、含み益が生じている場合、確定もしていない含み益にまで課税がされると嘆くものの、含み損が生じている場合には、損が確定もしていないのに、損金が生じることになるので、必ずしも損だと言うことにはなりませんが、いちいち決算のたびに時価評価をするのは面倒ではありますよね。