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住宅の全部又は一部を旅行者等に短期的に貸し出す「民泊」が、日本でも急速に増加しています。
一方で、民泊については、無許可で行われることが多く、公衆衛生の確保の問題や地域住民等とのトラブルも増えていました。
これらの課題を踏まえ、一定のルールの下、健全な民泊サービスの普及を図るため、平成29年6月に住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)が成立したのです。
では、この民泊により生じた所得についての課税関係はどうなるのでしょうか?
今回は、民泊の課税関係と節税の余地について検討してみます。
民泊をすることで、利用者から賃料を得るには、その住宅の固定資産税や減価償却費、さらに維持管理のための費用が生じます。
その賃料ー費用=利益が民泊により生じる所得となりますが、これは、所得税法上どのような所得とされるのでしょうか?
他人に不動産を賃貸することで得られる所得は、「不動産所得」とされます。
しかし、民泊については、単に不動産を賃貸するだけではなく、利用者の安全管理や衛生管理等に対する役務提供を伴うものですので、「雑所得」に該当します。
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つまり、民泊による所得は、雑所得として、他の給与所得等と合算の上、最大55.945%の累進課税の適用を受けることになるのです。*
*年末調整で所得計算が完結する給与所得者等は、雑所得等が20万円未満であれば、所得税について申告不要とすることも可能です。
不動産を賃貸し賃料を得ることによる所得は不動産所得とされますが、他の給与所得などと通算の上で累進課税の適用がされるのは、雑所得と同じです。
しかし、次の2点について民泊による所得への課税は、一般的な不動産の賃貸による所得よりも不利になります。
不動産所得で赤字(損失)が生じた場合、その赤字は他の給与等と通算した上で課税所得が計算されます。(ただし、不動産所得の赤字のうち、土地を取得するために要した借入金の利息相当額は、他の所得との通算はできません)
つまり、不動産の賃貸の場合、多少損失が生じたとしても、他に所得があれば、そちらと通算することで税負担が軽減されることで、損失の一部を”吸収”できるということです。
しかし、民泊により生じた所得は雑所得であり、その損失は他の給与所得等と通算することはできません。
要するに、民泊により生じた所得は、儲かったら他の所得と合算されて最大55.945%の累進課税が、損をしたらそのまま切り捨てというなんとも不条理な課税をされるということなのです。
不動産を賃貸したことで生じる不動産所得については、一定の要件を満たせば、その貸付の規模が「事業的な規模」(独立家屋なら5棟、アパート等なら10室以上)であれば65万円、それ以外であれば10万円の「青色申告特別控除」が受けられます。
しかし、民泊により生じる所得は、雑所得であるため、青色申告特別控除の適用はありません。
役務提供をするのであれば、その規模により「事業所得」とする余地はあるでしょう。
事業所得であれば、不動産所得と同様、その損失を他の給与所得等と通算をしたり、青色申告特別控除を受けられる。
しかし、自宅を民泊にするレベルであれば、まず間違いなく雑所得とされます。
ですから、サラリーマンが副業で自宅を民泊し、必要経費をバンバン落として赤字を作れば、給与所得と通算されることで節税ができるなどという甘いことにはならないということです。
また、ニーズさえあれば、一般的な居住用物件として賃貸するよりも民泊に利用したほうがずっと利回りが良い物件もあるようです。ですが、賃貸用不動産を民泊として運用するというのは課税上不利な点もあるということをお忘れなく。
もちろん、民泊の実施規模によっては事業所得とする余地はあるとは思いますが、その損失を他の所得と通算するとなると税務署は厳しく見てくるはずなので、それなりの覚悟と理論武装は必要でしょう。
なにせ、タックスアンサーで「民泊の所得=雑所得」と明示してますから。
しかし、仮想通貨にしろ、民泊にしろ、新しい資産運用に対する税金は、ホント厳しいですね。