「雑所得なら20万円までは非課税」という勘違い
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雑所得なら20万円までは所得税の申告不要だが
個人の所得については、10の所得区分に分けられ、それぞれ一定のルールで計算された所得額が合算されて所得税額が課されます。
この10の所得区分のうち他の9つの所得区分に入らない、いわば「その他の所得」ともいえるものを「雑所得」というのです。
この雑所得については、20万円以下ならば、一定の要件に該当する人は所得税の確定申告不要とされているのですが、どうも中には「雑所得は20万円までなら非課税」と誤解をしている人もいます。
そこで、今回は「雑所得20万円申告不要ルール」の正しい意味を説明したいと思います。
少額な「その他の所得」でも申告が必要なケースも
まずは結論を
・年末調整をしている人の「その他の所得」が少額であれば、所得税の確定申告不要
・所得税の確定申告をする人は「その他の所得」が20万円以下であっても課税対象に
・オーナーが会社からもらう家賃や利子などは20万円以下であっても申告は必要
・所得税は申告不要でも、別途住民税のみの申告は必要になる
雑所得20万円申告不要ルールは年末調整をした給与所得者対象
一般的に給与所得者は、会社で年末調整が行われるだけで、所得税・住民税の申告と税金の精算作業は完了し、3/15までの「確定申告はしなくても良い」ことになっています。
しかし、下記の人は、例え給与所得者であっても「確定申告をしなくてはならない」とされているのです。
1 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
2 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
3 2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
(注) 給与所得の収入金額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。
4 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
5 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
6 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
7 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人
(注) 給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額には、次の所得は入りません。
1 上場株式等の配当や少額配当などで確定申告をしないことを選択したもの
2 特定口座の源泉徴収選択口座内の上場株式等の譲渡による所得で、確定申告をしないことを選択したもの
3 特定公社債の利子で確定申告をしないことを選択したもの
4 源泉分離課税とされる預貯金や一般公社債等の利子
5 源泉分離課税とされる抵当証券などの金融類似商品の収益
6 源泉分離課税とされる一時払養老保険の差益(保険期間等が5年以下のもの及び保険期間等が5年超で5年以内に解約されたもの)
つまり、
年末調整している給与所得者は、原則確定申告不要
しかし、
(1)給与が1箇所でも、雑所得などが20万円超ある人
(2)給与が2箇所以上なら、従たる給与と雑所得などの合計が20万円超ある人
などは確定申告が必要
逆に考えれば、
年末調整をした給与所得者で
(1)給与が1箇所だけなら、雑所得などが20万円以下の人
(2)給与が2箇所以上なら、従たる給与と雑所得などの合計が20万円以下の人
は、少額だから確定申告をあえてしなくてもいいというだけのことです。
確定申告をしなくても良いということであれば、その雑所得などについて新たに所得税等が課されることはないので、「結果的に非課税」と言えますが、決して「誰もが雑所得は20万円まで非課税」というわけではないのです。
確定申告をすれば少額な雑所得であっても申告が必要
オーナー社長であっても、年末調整だけで個人の所得の課税関係が完了する人もいるでしょうが、
(1)給与の年間収入が2000万円超
(2)2箇所以上から給与をもらい、従たる給与が20万円超
(3)会社から賃貸料などをもらっている
などのケースも多く、確定申告をしなくてはならない人もいるでしょう。
確定申告をしなくてはならないのですから、例え雑所得が20万円以下だとしても申告が必要であり、結果的に所得税は課税がされます。
同様に、年末調整をした給与所得者であっても、「医療費控除を受ける」「上場株式の譲渡損を繰り越す」「住宅ローン控除の初年度の申告をする」などあえて確定申告をする場合には、少額な雑所得であっても所得に含めて確定申告をする必要があるのです。
住民税には雑所得20万円申告不要ルールはない
会社で年末調整するということは、会社が国に所得税の申告を代行するだけでなく、自治体に対して住民税の申告も代行するということです。
そのため、多くの給与所得者は住民税の申告もしたことはないでしょう。
実は、「雑所得20万円申告不要ルール」は所得税のみに適用されるルールであり、住民税にはそんなルールはありません。
つまり、年末調整をした給与所得者であり、雑所得などが20万円以下のため、所得税の確定申告が不要とされたとしても、住民税の申告だけは別途しなくてなならないのです。
雑所得にはどんなものがあるのか
では、雑所得にはどんなものがあるのでしょうか?
公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。
この他に外貨預金の為替差益、そして暗号資産の使用による利益も雑所得とされています。
ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係|タックスアンサー
安易に「雑所得は20万円までなら非課税」などと考えず、忘れずに申告を行いたいものですね。
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