関係会社間で資産を譲渡しても損益はすぐには認識されませんし、寄付金もないものとされます|グループ法人税制

関係会社間での取引には要注意

親会社とその100%子会社は実質的に一体であるといえます。

それらの関係会社間の取引を通じて利益調整をする動きを封じ込めようと「完全支配関係」にある企業グループを一つの法人であるかのようにして課税する制度があります。

これを「グループ法人税制」といいます。

そこで、今回は、このグループ法人税制のうち関係会社間で資産が譲渡された場合と寄付金認定された場合の取り扱いについてまとめてみることにします。

グループ法人税制による譲渡損益繰り延べの概要

譲渡損益繰り延べの趣旨

関係会社間の取引は、第三者間取引より恣意性が入りやすく、そのような利益調整を封じ込めるために、国内の100%子会社等との特定の取引では、その時点では譲渡損益を認識せず、グループ外に譲渡されるまで繰り延べられることになります。

対象者

グループ法人税制の対象となる「完全支配関係」とは、一の者(法人・個人)が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する一定の関係又は一の者との間にその一定の関係がある法人相互の関係をいいます。

つまり、この完全支配関係には、親会社と子会社やその子会社(孫会社)と言う関係だけでなく、同じ者(法人・個人)が直接または間接的に100%株式を所有する法人同士の取引も含まれます。

対象資産

譲渡損益繰延の対象となる資産は以下のもののうち、譲渡直前の帳簿価額が1,000万円以上の資産をいいます。

・固定資産(土地、建物、機械装置等)

・棚卸資産(販売目的)である土地

・有価証券(売買目的有価証券とされる有価証券は除く)

・金銭債権

・繰延資産

グループ法人税制での寄付金課税の概要

寄付金課税の趣旨

関係会社間の取引が、第三者間の取引と比較して恣意的な取引な場合には、一旦正常な価格で取引がされたものとした上で、その差額については、両者の間で寄付がされたと考え、寄付をした側では損金に、寄付を受けた側では受贈益として益金に算入がされていました。

しかし、グループ法人間を一つのまとまりとしてみるのであれば、このグループ内での寄付金についてはないものとし、寄付をした側では全額損金不算入、寄付を受けた側では益金不算入とされるのです。

対象者

完全支配関係のうち、法人による完全支配関係に限られます。

つまり、株式の所有者が100%法人である場合のその親会社と子会社、同じ親会社の100%子会社同士などの関係に限られ、個人株主による支配によって完全支配関係になるものは含まれません。

税務調査での指摘

関係会社間取引については、税務調査では非常によく見られます。

それは、恣意的な取引による利益調整が行われている場合、その取引を寄付とみなすことで、寄付を受けた側では受贈益として課税を減らすことなく、寄付をした側では一定金額を超えた寄付金について損金不算入にすることで、追徴課税ができるからです。

ですが、このグループ法人税制の適用を受けるような100%親子会社間取引のような場合には、寄付をした側で寄付金だとして損金不算入とし追徴課税をしても、同時に寄付を受けた側で受贈益について益金不算入とすることで税金の還付が生じてしまいます。

そのため、税務署員の中には、このような場合には、今ひとつやる気が落ちるという人も見受けられます。

ですが、それでも「架空経費計上は許せん。取るものは取る」という人もいますし、寄付を受ける側が欠損金を生じている(利益調整されるのはそのようなケースが多い)には、受贈益について益金不算入となったとしても、還付が生じないため、注視してくるケースもあります。

ですから、やはり、関係会社間取引については、きちんと第三者間価格を斟酌した取引とするようにしましょう。

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