「土地の長期譲渡1,000万円特別控除」といういつまでも残る税理士にとっての地雷原

10年前は地価下落が止まらなかった

コロナ禍をもろともせず、湾岸のタワマンを中心に都心の不動産価格は上昇基調が続いています。

しかし、ほんの10年前まではバブル崩壊以降地価の下落が止まらず、少子化の中、多くの人は今後日本の地価は上がることはないのではと思っていました。

そのため、国としてはなんとか不動産の取得を促進しようと、購入した土地等については将来値上がりをしたとしても譲渡益から一定の控除をする特例を過去に作ったことがあります。

その特例は既に期限切れとなったのですが、その影響は今でも残っており、確定申告を担当する税理士にとっては厄介な”地雷原”として常に注意が必要なのです。

そこで、今回はこの「長期譲渡所得の1,000万円特別控除」についてまとめておこうと思います。

長期譲渡所得の1,000万円特別控除とは

個人が

(1)平成21年中に取得した国内にある土地等を平成27年以降に譲渡した場合

(2)平成22年中に取得した国内にある土地等を平成28年以降に譲渡した場合

には、その土地等に係る譲渡所得の金額から1,000万円を控除することができるという特例です。

(譲渡所得の金額が1,000万円に満たない場合にはその譲渡所得の金額が控除額)

特例の適用を受けるための要件

◯平成21年中に取得した土地等平成27年「以降」に譲渡すること

◯平成22年中に取得した土地等平成28年「以降」に譲渡すること

×親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではないこと

(特別な間柄には、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます)

×相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済および所有権移転外リース取引により取得した土地等ではないこと

×譲渡した土地等について、収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど他の譲渡所得の特例の適用を受けないこと

申告手続き

この特例の適用を受けるためには、確定申告書にこの特例の適用を受ける旨を記載するとともに、一定の書類を添付する必要があります。

(1)譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

(2)土地等の登記事項証明書や土地等を取得したときの売買契約書の写しなどで、譲渡した土地等が平成21年または平成22年に取得されたものであることを明らかにする書類

*土地・建物の登記事項証明書については、「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」に不動産番号を記載することなどにより、その添付を省略することができます。

つまり、この特例を受けるためには確定申告をすることが必須であり、1,000万円の特別控除を差し引くことで譲渡所得が0になるとしても自動的に1,000万円が控除されるわけではなく、確定申告をすることではじめて控除が可能になるので注意が必要です。

平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除(個人)|タックスアンサー

なお、同様の規定は法人にもあり、土地等の譲渡益と1000万円のいずれか小さい金額の損金算入が可能となります。

平成21年及び平成22年に取得した長期所有土地等の1,000万円特別控除(法人)|タックスアンサー

通常の優遇税制は期限が定められており、その期限が過ぎたものは適用ができません。しかし、この長期譲渡所得の1,000万円控除については、「◯◯年以降の譲渡は適用対象」と規定されています。

この特例を期待して地価が下落する中リスクを取って土地を取得した者に対して、今さら「あれはもうお終い」ということは、納税者の予測安定性を確保するためにもできません。ですから、この規定はずっと残ることになるはずです。

そのため、税理士にとっては、土地建物の譲渡所得の申告をする際には、平成21年、22年(2009年、2010年)という年度だけは死ぬまでずっと意識しなくてはいけないチェック項目なのです。

この規定ができたときのことを理解しているオッサン税理士はまだいいですが、この頃まだ受験すらしていなかった若手の税理士によっては、そんな特例があることなど知る由もなく、とても厄介な落とし穴だと言えるでしょうね。

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